先週,東京ビッグサイトで国際物流総合展2008が開催された(開催期間:2008年9月9日~12日)。物流に関する展示会であるから当然,荷物を移動したりするための車両や搬送システムやパレット,仕分けするシステムや保管するための棚などが多数披露されていた。RFID(ICタグ)を使った仕分けシステムや搬送システムもいくつも出展されていた。そのなかに,IT関連の展示会ではなかなか出展されないと思われるモノがあった。ヘルメットとハンディ・ターミナルである。

IP電話や映像送信が可能なヘルメット

写真1●ちょっと派手なヘルメット。前部にカメラ,左耳のあたりにバイブレータがついていてイヤホン・マイクが接続されている。左上に見えるのがLED(黄色)。頭頂部に通信モジュールが実装されている。
写真1●ちょっと派手なヘルメット
前部にカメラ,左耳のあたりにバイブレータがついていてイヤホン・マイクが接続されている。左上に見えるのがLED(黄色)。頭頂部に通信モジュールが実装されている。
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 目を引いたヘルメットは一見,ちょっと派手で「これはなに」という印象(写真1)。ところが,これがなかなかの高機能のヘルメットであった。Utility Helmetから「Uメット」と名づけている。カメラやイヤホン・マイクなどを装備し,IEEE802.11b/gの無線LANおよび3G携帯電話による無線通信機能を備えている。谷沢製作所とNECエンジニアリングが共同で開発し,無線LAN関連機器などを出展するフルノシステムズのブースで披露していた。

 無線通信機能を使い,IP電話で通話したり,映像を送ったりできる。たとえば,センターから現場の映像を見ながら,現場の作業者に音声でやりとりしたりするのに利用する。GPS機能も装備しているため,位置情報を使った管理も可能である。

 また,非常時などのアラームの通知を確実にするため,バイブレータやLEDを装備している。たとえば,線路の保線工事での避難遅れによる事故は後を絶たない。大声で避難指示をしても周りの騒音で聞こえない場合があり,そのためバイブレータや光を使ったアラームが威力を発揮する。

写真2●ヘルメットをかぶり,腰に無線LANアクセス・ポイント,背中に太陽電池パネル
写真2●ヘルメットをかぶり,腰に無線LANアクセス・ポイント,背中に太陽電池パネル
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 物流展のデモンストレーションでは,Uメットをかぶり,腰にフルノシステムズの無線LANアクセス・ポイント,背中には太陽電池といういでたちの男性が登場した(写真2)。Uメットが腰のアクセス・ポイントを経由して,ブース内に構築してあるフルノシステムズのネットワークに接続してデモを披露していた。太陽電池はアクセス・ポイントに電力を供給する。

 Uメットにこれらの機能を実装するのは,単にデバイスを小さくするだけではすまない。危険な場所で頭を守るためのヘルメットである。厚生労働省所管の労働安全衛生法に基づき定められた安全基準に見合う強度などを持たせなければならない。普通のヘルメットの外観のまま,デバイスを組み込み,強度を持たせるのが容易ではなかったという。

 Uメットは来春発売予定である。電源として単三電池を使う。出展されたヘルメットの両側にそれぞれ単三電池4本が入るケースが組み込まれている。つまり,単三電池8本で動作している。製品化時にはこれを4本にし,3時間使用できるようになるという。重さは通常のヘルメットの倍くらいで1kg近くなるという。価格は20万~30万円と,7000円前後の一般的なヘルメットと比べるまでもなく高い。しかし,IP電話を使ったコミュニケーションや映像送信,そしてGPSやアラームといった高機能は,用途によってはニーズがありそうだ。あるからこそ,このような高価なヘルメットを開発しているはずだ。実際,「製鉄工場の高炉などでのニーズがある」(谷沢製作所)という。

位置を正確に測れるハンディ・ターミナル

 次に目を引いたのがハンディ・ターミナル「GMS-2Pro」。ブースに掲示してあったパネルの「次世代のハンディ・ターミナル」という文字よりも,ハンディというにはちょっとごつい外観が目を引いた(写真3)。ハンディ・ターミナルといえば,倉庫などで在庫をチェックしたりするのに使うケースが多い。このGMS-2Proはそれとはまったく違う。

写真3●GPS/GLONASSによる測位機能を持つハンディ・ターミナル。内蔵カメラで写真をとり位置情報に関連付けて収集できる(写真左)。コンパスを内蔵(写真右)。
写真3●GPS/GLONASSによる測位機能を持つハンディ・ターミナル
内蔵カメラで写真をとり位置情報に関連付けて収集できる(写真左)。コンパスを内蔵(写真右)。
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 GMS-2Proは,GPS/GLONASSといった衛星を使った測位機能を基本としたハンディ・ターミナル。マンホールなどの対象物を地図上の位置情報とともに調査するのに使う。ハンディ・ターミナルというよりも,GPS/GLONASS受信機といったほうがわかりやすいかもしれない。

 1280×960ピクセルのカメラを内蔵しており,建物や電柱などを撮影し,精度1m以内のGPS/GLONASSによる地図上の位置とともに記録する。たとえば,マンホールの画像を地図にマッピングしながら収集するのに使うという。コンパスを内蔵しており,災害現場で土砂がどの向きに流れ出しているかも記録できる。

 ここまでは,すでに製品化されている「GMS-2」と同じである。Proと名づけた理由は,近寄れない場所の位置を測定できるようにしたことである。距離計を装備しており,コンパスの方位情報とあわせることで,対象物の位置を把握できる仕掛けである。

 3.5インチ(240×320ピクセル)の液晶ディスプレイを装備し,OSはWindows CE。SDKも用意する。GMS-2Proは参考出展であるが,価格は40万~50万円を予定している。

 正直なところ,UメットもGMS-2Proも,価格もニーズもピンとこない。しかし,特定用途の機器は興味深い。