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日経情報ストラテジー

お互いが関心を持ち合える「チームビルディング」に取り組んでいますか?

2008/09/01
川又 英紀=日経情報ストラテジー

 チームビルディングとは、チーム内の人間関係を強化して、組織としてのエネルギーを高める手法のことだ。基本的な取り組みとして、事前にビジョン共有の場を設けたり、ビジョンの実現手段を検討したりして、チームメンバーの意識を統一することは、多くのマネジャーが既に実践しているだろう。

 だがそれだけでは何かが抜け落ちているのではないか。ビジョンの共有はチーム作りの鉄則ではあるが、これではうまくいかないことがあると、多くの人が実感しているのではないだろうか。そもそも、チームのメンバー同士がお互いに関心を持ち合っていない状態で、リーダーだけがビジョンの共有を声高に叫んでみても、メンバーには徹底できないものだ。「このメンバーで同じ目標を達成してみたい」と全員が思えるチーム状態になっていなければ、ビジョンが掲げられても共有はしにくいだろう。

 そこで、人の感情に注目したチームビルディングが必要になってくる。意外にも、これまではこの点が見過ごされがちだった。単に飲み会をやれば、メンバー間の距離が縮まるというものではない。2008年10月号の「日経情報ストラテジー」でチームビルディングを特集取材するに当たっては、お互いに関心を持ち合える「場」を意図的に用意して、メンバーの異なる才能や価値観を認め合うことで信頼関係を築き、そのうえでチームの目的や目標といったビジョンを共有する事例を取り上げた。

 チームビルディングは、IT(情報技術)業界に身近なテーマでもある。多くのIT企業は、人を集めさえすれば、自然にチームができ上がると考えているように思える。チームビルディングの視点に立てば、チームは意識して「組み立てる」ものだ。人と人とが信頼関係を築き、お互いの才能を認め合うようになるには、それなりの時間と場が必要だからである。

ブートキャンプ体験でお互いの素顔を知る

 チームビルディングでお互いが関心を持ち合える「場」はどのようにして作るべきか。大切なのは、メンバーが力を合わせて1つのことに取り組みつつ、自分の「素の部分」を見せ合える場を意図的に用意することだ。最も手っ取り早いのは、メンバーを非日常的な環境に放り込むことである。

 ここで、非常にユニークなチームビルディングの試みを紹介しよう。半導体製造装置大手の東京エレクトロンは、財務や経理、法務、人事など各間接部門から1人ずつ、合計8人の社員を1つのチームとして米国シアトルに送り込み、1週間寝泊りをともにするチームビルディング研修を、2007年12月と2008年2月に合計2回実施した。

 チームの目標は、東京エレクトロンが近い将来に実施することになってもおかしくない企業買収に向けて、実践的な勉強をしておくことだ。シアトルでは米国における企業買収の専門家に連日講義を受け、最後には地元の投資家の前で仮想の投資案件説明会を開くのだが、この研修はそれだけではない。

 なんとチーム全員で、朝晩ブートキャンプ(軍隊式のフィジカルトレーニング)にも取り組むのだ。男女問わず、メンバー全員で肉体改造にも取り組み、共通メニューのトレーニングを通じてチームの意識を高めるのである。

 訓練中の兵士が寝泊りするような二段ベッドが置かれた質素な部屋で、1週間を過ごす。生活が管理され、シャワーを浴びる時間の長さまで決められている。1週間もいれば、嫌でもチームの仲間に素の自分を見せざるを得ない状況が用意されているのだ。

 ブートキャンプは生易しいものではない。日中の企業買収についての講義も本格的だ。朝から晩まで分刻みのスケジュールが待っている。参加者の1人である東京エレクトロンの高木洋・経営戦略室室長代理は「得がたい体験をチームで共有でき、一体感が強まった。誰も音を上げずに最後まで参加できたし、研修の終盤には疲れていても自主トレーニングをやり始めるほど、メンバーの意識が変わっていた」と話す。

 その甲斐もあって、2008年3月に日本に戻ってからは、チームのメンバーが社内で自発的に集まって、企業買収の勉強会を開くようになったという。このメンバーで1つのテーマをやり遂げようという意欲がわいてきたわけだ。

 東京エレクトロンにブートキャンプを含めた研修サービスを提供したのは、シアトルにある米ウェブレインという企業で、日本のIT企業を主なターゲットに同様のサービスを提供した実績がある。米国の三井コムテックが、その窓口になっている。

職場でもお互いの本音を知る場作りに努力すべき

 東京エレクトロンの場作りは極端な例だと思う人もいるかもしれない。普段の職場でも、ちょっとした工夫でできる場作りがある。例えば、チームビルディングに詳しい日本総合研究所の加藤彰・総合研究部門主任研究員は、「IT業界のプロジェクトマネジメントで時々利用される振り返り手法『KPT』は、チームビルディングにも有効だ」とアドバイスする。

 KPTとは、「K(キープ=これからも続けるべき自分たちチームの良いところ)」「P(プロブレム=改善すべきチームの問題点)」「T(トライ=これからチームでやってみたいこと)」の3点について、プロジェクトの中間点や最後にみんなで書き出しながら、プロジェクトを振り返る手法だ。こうした場を意図的に設けることが、メンバーの本音を引き出し、お互いに関心を持ち合う最初のきっかけ作りになるという。単に駄目出しをするのではなく、チームのいいところも悪いところも話し合う。メンバーが定期的に集まる普段の会議体でも十分に使える簡単な手法であり、お勧めだ。

 個々の力を十分に引き出すチームビルディングを心がけるならば、チームメンバーが本音を素直に出してお互いを深く知り合えるような場を用意することに、経営者やマネジャーはもっと関心を向ける必要があるだろう。

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