『日経パソコン』は、2008年8月25日号の特集で「2008年版 パソコン満足度ランキング」という調査を実施した。この調査は、3年以内(2006年以降)に自費でパソコンを購入したWindowsユーザーを対象に、購入したパソコンの「性能/機能」「操作性」「デザイン」「コストパフォーマンス」「サポート」の各項目、および「総合」の満足度を評価してもらうもの。その回答から、一般的な売り上げランキングでは分からない隠れた人気メーカーや、今どきのユーザーがパソコンに何を求めているかを導き出すのだ。

 この企画は2007年に始めた。2回目に当たる今年は、日経パソコンの読者や日経BP社が発行するメールマガジンの読者など、約42万人に調査への参加を呼びかけ、2389人の回答を得た。それをノート部門、デスクトップ部門のそれぞれで集計。アフターサポートに関する項目だけ、ノートとデスクトップを合わせて集計した。

 その結果、「総合」の満足度で高い数値を示したのは、ノート部門が松下電器産業、デスクトップ部門がエプソンダイレクトだった。どちらのメーカーも「性能/機能」「操作性」「サポート」の満足度が高く、性能と機能だけでユーザーの満足度を高めるのは難しいことが改めて証明された。昨年もそうだったが、操作や設定について疑問があるときに電話やWebサイト、メールなどで十分なサポートをしてくれるかどうか、故障が発生したときに迅速かつ正確に修理対応してくれるかどうかが、その製品やメーカーへの高い信頼につながっている。

ノートとデスクトップで違う満足のポイント

 今回の調査で興味深かったのは、ノートとデスクトップに対してユーザーの求めているものが、明らかに違うと分かったことだ。

 ノートの場合、「性能/機能」「操作性」「サポート」の上記3項目に加えて、「デザイン」に対する満足度が大きく関係した。デザインと一口に言っても、「道具としての機能美」を求める人もいれば、「おしゃれなデザイン」を求める人もいる。どんなデザインが支持されるかは、各製品のターゲット層やユーザーの用途(仕事中心かプライベート中心か)による。

 例えば、松下電器産業のLet'snoteやレノボ・ジャパンのThinkPadは地味なデザインだが、質実剛健なイメージやシンプルさが「ビジネス用途に向いている」と評価するユーザーが多かった。一方で、ソニーは美しいボディーカラーやスタイリッシュなデザイン、豊富なアクセサリーが「インテリアにマッチする」「おしゃれ」と高く評価された。

 いずれにせよ、デスクトップよりも手軽に持ち運べ、リビングなどの共有スペースで使ったり、外に持ち出したりすることが多いノートは、デザインの満足度が製品の満足度につながっている。

 対して、デスクトップでは、購入金額と性能のバランス、つまり「コストパフォーマンス」が非常に大きな要素だった。操作性やデザイン、サポートの満足度が多少低くても、コストパフォーマンスの高さで「総合」の上位に食い込んだメーカーがある。総合で2位だったマウスコンピューターが好例だ。マウスコンピューターは操作性やデザイン、サポートの評価は低かったが、「パソコンにデザインは不要」「価格を考えると初めからサポートには期待していない」「安くてスペックもそれなりに高いので満足」といった意見が多かった。

 デスクトップの場合、総合1位がエプソンダイレクト、同2位がマウスコンピューター、同3位がデルと、購入時に仕様を選べるBTO方式を採用しているメーカーが上位を占めたのも特徴的だった。パソコンのスキルを積んだユーザーが増えている昨今、自らの用途や目的を把握し、購入金額と性能のバランスを十分に検討した上でパソコンを選んでいることがうかがえる。

 パソコン市場は成熟した市場である。製品の性能は、メールの送受信やWeb閲覧といった日常的な利用シーンにおいて、十分なレベルに達している。一方、ユーザーのスキルレベルは全体的に上がっている。自らの用途に必要な性能、機能を見極められるユーザーが増えてきている。

 性能を向上していればいい時代は終わり、ユーザーのニーズはますます多様化していくだろう。今後、パソコンに何が求められるのか。パソコンはどの方向に進化していくのか。パソコン満足度ランキングを一助とし、これからもそれを探っていきたい。