「Flashでの1万人生放送は他に例がない」
「生中継は,録画した動画の配信よりも先にあったアイデアだった」と,ドワンゴ 執行役員研究開発本部長 千野裕司氏は言う。動画にコメントをつけるというニコニコ動画の機能は,2ちゃんねるの,テレビ番組などにあわせユーザーが掲示板にコメントを書き込んでいく実況板が発想源になっている。そのため,ニコニコ動画が構想されたころから生中継が想定されており,ニコニコ動画のプレーヤーには当初から中継配信を受信する機能が内蔵されていた。
しかし,YouTubeなどの動画にコメントを表示できるニコニコ動画は爆発的な人気をはくし,自社での動画配信サービスSMILEVIDEOも開始することとなり,ニコニコ動画はその対応に追われる。当初からの念願だった生放送の実験に取り組むことができたのは2007年の初頭だった。
最初は配信サーバーとしてAdobe Flash Media Server(FMS)を使うことを前提に動き出した。「しかし,こちらが想定した利用形態では,当時FMSの価格があまりに高価だった」と,ドワンゴ 研究開発本部の糸柳和法氏は振り返る。ニコニコ動画が想定していた規模で利用する場合,ライセンス料は当時数千万円だったという。「現在では安くなったが,FMSは当時高価だった。障害時にフェイル・オーバーするなど,ミッション・クリティカルなシステムを実現するための機能を備えていたからだが,我々の用途ではそこまでの信頼性は必要なかった」(千野氏)。
FMSに代わる配信サーバーとして候補にあがったのは2つ。オープンソースのRed5と,米Wowza Media SystemsのWowza Media Serverだった。1万人規模の配信を目指していたドワンゴにとって,Red5はスケーラビリティを向上させることが難しいと感じられた。一方Wowzaは有償だが400万円程度ですむ。最終的にWowzaを選択した。
クライアント側の動画プレーヤーは,現行のものを改造した。「複雑化していて改造は難しかったが,なんとかつながるようにした」(ドワンゴ 研究開発本部 糸柳和法氏)。配信サーバー側は,オリジン・サーバーからエッジ・サーバーへデータを配信し,ユーザーへの配信はエッジ・サーバーが行う。こうすることで,ユーザーが増えてもエッジ・サーバーを増設すればスケーラビリティを確保できるようにした。
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生放送画像配信サーバーの構成 |