無料あるいは月額数百円で利用できるギガバイトクラスのオンラインストレージサービスが,2008年に入って続々と立ち上がってきている。オンラインストレージサービスとは,データセンター内に設置したサーバーのハードディスク(HDD)を,複数のユーザーで共有するサービスのこと。ユーザーはブラウザーや専用ソフトなどを使って,ネット上のHDDにアクセスできる。

 無料ギガクラスのオンラインストレージサービスとして先陣を切ったのは,マイクロソフトのオンラインストレージ「Windows Live SkyDrive」。「5GB無料」という特徴を打ち出し,2008年2月にサービスが始まった。さらに,5月にはリコーが新サービス「quanp」を開始。無料で利用できる容量は1GBとSkyDriveには劣るものの,専用ソフトを使う操作感の良さが売り物だ。

 有料サービスでは,バックアップ専用のオンラインストレージサービスとして,NECビッグローブが月額263円で5GBを使える「PCバックアップサービス」を7月に開始した。またアップルは,汎用的なオンラインサービス「MobileMe」の一部で,20GBの容量をオンラインストレージとして使えるサービスを年額9800円で7月から提供している。

 SkyDriveが登場するまでは,安価なギガクラスのサービスは少数派だった。NTTコミュニケーションズが月額315円で2GBの容量を使える「Cocoaギガストレージ」を提供しているほかは,ジャストシステムが2001年から提供している「Internet Disk」(月額1365円で容量1GB),NTTビズリンク(当初はNTT-ME)が2000年から提供している「iTrustee」(3カ月1500円で容量1GB)が目に付く程度だった。

 また,無料のオンラインストレージサービスでは,数十メガクラスの容量を用意するサービスがほとんどだった。例えば,ニフティの「@niftyマイキャビ」やヤフーの「Yahoo!ブリーフケース」がその代表である。

主な用途はファイルのバックアップや第三者への公開

 そもそも,オンラインストレージとは何のためのものなのか。主な用途は,1.ファイルのバックアップ,2.大容量のファイルを手軽にやり取り,3.仲間や親戚に写真を公開――の3つが考えられる。

 1は,主に簡易なバックアップとしての用途である。ただし容量が増えたといっても,オンラインストレージで使えるのは5GB程度。HDDの中身を丸ごとバックアップする用途では使えない。例えば,出先で作成したり,客にもらったりした大切なデータをオンラインストレージにコピーしておき,移動中のパソコン故障に備える。こういった用途にはUSBメモリーがよく使われているが,企業の一部では紛失による情報漏えいの危険性を防ぐ目的で,USBメモリーの利用を禁止する動きも出てきている。

 2の大容量ファイルのやり取りでも状況は同じ。USBメモリーが使えない場合,その代わりにオンラインストレージを使おうとする機運が高まっている。

 最近では,バックアップ用途で使えるように,データを暗号化したり,アクセス制限を厳しくしたりするなど,安全性に配慮したオンラインストレージサービスが増えている。こういうサービスなら,簡易なバックアップに限らず,大切なデータを保管できるはずだ。バックアップの場合,コピー先を増やすほどデータの安全性は高まる。オンラインストレージで遠隔地のサーバーにコピーされたデータなら,万一地震が起きても,被害を受けないで済む。

 3の写真の公開機能は,オンラインストレージならではの特徴だ。例えば,生まれたばかりの子供の写真をオンラインストレージにコピーして公開すれば,遠くにいる親や親戚,友達にすぐに見てもらうことができる。写真を郵送する必要はない。まさにネットらしいサービスなのである。