「日経コンピュータ」の7月1日号で、「"Officeレガシー"は宝に変わる」という特集を執筆した。読者の中には昨年7月、日経コンピュータで特集した「Excelレガシー再生計画」を覚えている方もおられるかもしれない。現場で開発した“Excelシステム”が張本人の異動や退職などで、メンテナンスできなくなっているというものだ。その記事を執筆した記者はこの春に異動したが、当時は読者や取材先から予想以上に大きな反響があった。

 レガシーを英和辞書で引いてみると、「(祖先や先人からの)遺産、遺物」。まさに記者も「Excelレガシー再生計画」記事を遺産として先人から引き継いだ格好になった。ロジックを理解して現状に即した記事を書かなければ・・・

 2週間ほど悩み続けた結果、Excelレガシーを「お荷物」ではなく「宝」としてとらえられないかと考えるようになった。現場がそれほどに使い込んでいるExcelシステム。長年のノウハウや日々のリアルタイムデータが詰まっているのではないか。この仮説に基づいて「宝に変わる」という結論にたどり着いた。これで記事のレガシー問題の1つは解消できた。

 しかし、もう1つ継承した問題はクリアできなかった。特集記事ではExcelをクライアント側で使い続けるのを前提にした。主にWebベースでシステムを作り直す手法である。これに対して「本当にExcelのままでいいのか」という点だ。そこで本誌には盛り込めなかった「Excel以外の選択肢」について紹介したい。

その1:「OpenOffice.org」に乗り換え

 フリーのオフィススイート「OpenOffice.org」は「Microsoft Office」とマクロの互換性がない。

 これがネックとされるが、アシストの支援統括部 公開ソフト推進部の簑輪哲彦テクニカル・プランナーは「OpenOffice.orgへの移行を機に、Excelレガシーを棚卸ししては。必要なものはExcelではなくWebシステムなどで作り直すべき」と逆手にとる。また「Office 2003以前のユーザーにとって、インタフェースやファイルフォーマットが大きく変わったOffice 2007に移行するよりもむしろ慣れやすいのではないか」とも付け加える。

その2:データをネット共有

 Excelレガシーを引き起こす要因の1つにファイルの「バージョン問題」がある。ファイルサーバーや電子メールで勝手に流通していくからだ。これを解消する1つの手法に、表計算のデータを集中管理し、ネットワーク経由で利用する方法がある。

 例えば、インフォテリア・オンラインは「OnSheet」という表計算のアプリケーション・サービスを提供している。藤縄智春社長は「オンラインで利用するとクライアントのバージョンアップを意識しなくてよくなる。メールの添付やメモリーなどで受け渡し、データが分散することもない」と説明する。OnSheetはマクロの機能がないが、基幹システムと連携する仕組みを構築することが可能である。