米Googleが2007年11月1日に発表した「OpenSocial」は,それぞれのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の提供するサービスにアクセスするためのAPIを,SNSベンダー間で共通化しようとする試みだ(関連記事:Google,ソーシャル・アプリケーション開発用API群「OpenSocial」を正式公開)。APIが共通になれば,SNS向けアプリケーションの開発が容易になると同時に,複数のSNS間でアプリケーションが展開しやすくなる。

実用化に向けて前進

 発表当初は,OpenSocial対応アプリケーションの動作や機能を検証できる環境が,Google傘下のSNSであるorkutや,hi5などに限られていた。しかし,2007年12月にはApache software FoundationのOSS(オープンソース・ソフトウエア)プロジェクトとして,OpenSocialのJavaによるレファレンス実装「shindig」の開発がスタート。OpenSocialアプリケーションの動作や相互運用性の確認に利用できる環境が整ってきた。

 引き続き2008年1月25日にGoogleは,Apache Shindigプロジェクトとして開発された新しいガジェットAPIなどを取り込んだAPI仕様の新版「バージョン0.7」を発表(OpenSocial発表当時のバージョンは0.5)。2月1日には,Webから友人関係を抽出するWebサービスAPI「Social Graph API」を公開した(関連記事:ブログ同士で“SNS”が作れる,Googleが「Social Graph API」サービス公開)。並行してセキュリティについては,サードパーティのWebアプリケーション内でJavaScriptを安全に実行できる技術「Caja」の開発を進めている。

 国内でもすでに,OpenSocialを使ったサンプル・アプリケーションがいくつか開発されている。現時点では機能的に不十分なところはまだ残されているが,実用化に向けて着実に前進しているようだ。

囲い込みからオープンへ

 Webに関してはほかにも,複数のWebサービスで共通のユーザーIDを利用できるようにする技術「OpenID」が登場(関連記事:OpenIDの普及団体設立へ、ニフティ、ミクシィ、ヤフーなどが参加表明)。各サービス内で閉じたネットワークを開放しようとする動きは加速している。

 しかしその一方でOpenSocialは,発表の経緯から米Facebook対策という面が否定できない。FacebookはSNSとしては後発だが,APIを外部に公開してアプリケーションの開発を促す戦略が奏功して,ユーザーが急増している(関連記事:米国で人気沸騰のFacebook,そのビジネスSNSとしての可能性)。

 Facebookについては,米Microsoftが2007年10月24日に2億4000万ドルの出資を発表したことで,ご存知の方も多いだろう(関連記事:MicrosoftがFacebookに2億4000万ドル出資へ,広告配信の提携を強化)。Googleが行った2007年11月1日のOpenSocialの発表は,対応を急いだせいか,技術の詳細や戦略が不十分だという印象を拭えなかったとの指摘がある。

 OpenSocialには発表当初から,米MySpaceやミクシィといったSNSベンダーのほか,米Oracle,米Salesforce.comなど多くのベンダーが支持を表明している。しかし,OpenSocialがFacebook(とマイクロソフト)対策に急きょ作られたものであるとすれば,求心力があまり期待できない可能性もある。各ベンダーの歩調がどれだけそろうのか,例えば各社が,自社のSNSのユーザーのプロフィール情報をどの程度共有できるようにするのかは,現時点では未知数だ(関連記事:あなたのデータは誰のもの?---Webサービスでのロックインは防げるか)。

 ミクシィは2007年11月2日に,OpenSocialへの賛同を表明するニュース・リリースで,「今後『mixi』は「mixiツールバー」などで現在稼働中の自社のWeb APIを、上記の「OpenSocial」仕様に調整して順次公開する予定です」としている。SNS国内最大手である同社の次の一手は,OpenSocialの今後を占ううえで重要になってくるだろう。