ITpro EXPO 2008の一つの企画としてITpro EXPO AWARD 2008を開催した。大賞となったサイボウズの「ガルーン2 次期バージョン」をはじめ合計17の製品やサービスを選出している。その選考基準には,新規性や優れているかだけでなく,来場者に対するアピール度も含まれる。なぜ,来場者へのアピール度が含まれるのか,AWARDを受賞したベンダーがどんなアピールを行ったかを紹介しよう。

来場者へのアピール度も選考基準の一つ

ITpro EXPO AWARDの表彰式
図1●ITpro EXPO AWARDの表彰式の様子
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 ITpro EXPO AWARDをご存じない方のために簡単に説明すると,「ITpro EXPO に出展されるすべての製品/サービスを対象として,日経BP社が発行するIT/ネットワーク誌,Web メディア10媒体の編集部が取材・審査し,優れた製品/サービスを表彰するもの」である。

 各編集部から選考メンバーを出してもらい,ITpro EXPOの初日(2008年1月30日)に1日かけて受賞製品・サービスを選んでいった。その際の選考基準は,AWARDの表彰式で審査委員長の林哲史・日経BP社ITpro発行人が述べた通り。その日に掲載したニュース記事からその部分を要約すると,「新規性があるか,優れているか,という点だけでなく,展示会ならではのプレゼンテーションをして来場者にアピールしていたかどうかも加味してアワードを選定した」のである。

 ここで,ITpro EXPOでどれだけアピールできたのかも評価している点に注目してほしい。なぜ,来場者へのアピール度も評価項目に入れているかといえば,来場者に対し,Webサイトやパンフレットからは得られない,会場に来た人にしか得られないものを体感してほしいからだ。それによって,展示されている製品・サービスに対する理解も深まることを期待しているのである。

 では,実際にどんなアピールをしていたのか,AWARDを受賞した製品・サービスの中から,私の印象に残った二つのアプローチを紹介しよう。

キャラクターで目立つ

 来場者に対するアプローチとして分かりやすいのが,いかに目立つかである。その一例が,エンタープライズ部門でAWARDを受賞したブロケード コミュニケーションズ システムズのデータセンター用スイッチ製品「Brocade DCX バックボーン」(紹介記事はこちら)であった。

ブロケード コミュニケーションズ システムズのブースに登場した「DCXマン」
図2●ブロケード コミュニケーションズ システムズのブースに登場した「DCXマン」
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 同社のアピールポイントは大きく二つ。一つは展示会の1週間前に製品を発表し,会場に実機を持ち込んで動態展示したことである。直前に発表したことは,新規性という点で,来場者に対するアピールになる。展示内容も,実際に動作している製品でデモンストレーションすれば注目度は上がる。

 ただし,それだけでは差別化要因にはなりにくい。同社がユニークだったのは,その製品をアピールするために「DCXマン」なるキャラクターをブースに登場させたこと。スイッチ製品というと展示が地味になりがちなイメージだが,DCXマン自らパンフレットなどを配ることで,少なくとも来場者の注意を引いたことは間違いない。しかも,同社は展示会前からWeb上でDCXマンのサイトを立ち上げ,準備していたという。DCXマンをITpro EXPOのためだけに用意したわけではないのだろうが,主催者の立場からはイベントを盛り上げる一助になるわけで,とてもありがたく感じる。

プレゼンを分かりやすく工夫する

 キャラクターは“目立つ”という点では,一つの選択だが,ITやネットワークの製品・サービスの場合,いかに理解してもらうかが重要だ。そうなると,その製品について,どれだけわかりやすいプレゼンテーションができるかも大切だ。

サイボウズの「ガルーン2 次期バージョン」のデモ
図3●サイボウズの「ガルーン2 次期バージョン」のデモ
スクリーンの上に同時アクセス・ユーザー数を示し,スクリーンの左のディスプレイでサーバーの負荷状態などを確認できるようにした。
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 その中で,私自身工夫していると感じられたのが,大賞を受賞したサイボウズの「ガルーン2 次期バージョン」(紹介記事はこちら)である。

 ガルーン2 次期バージョンの最大の強化点は,スケーラビリティ。同時アクセス・ユーザー数を最大3000人程度から,約1万人に引き上げたというものだ。大規模ユーザーにとっては,とても重要なテーマではあるが単純に紹介してしまうと,1~2枚のプレゼン資料で済んでしまいそうである。しかしながら,これを実機でデモンストレーションしようとすると,大変面倒なことは容易に想像できる。

 それを同社は,擬似的ではあるが,徐々に同時アクセス・ユーザー数を増やしながら,そのときの負荷状況を表示し,許容範囲内にあることを示したのである。デモンストレーションするために用意したブレード・サーバーは,Webサーバー13台とデータベース・サーバー7台の合計20台。加えて,擬似的に1万人を超えるアクセス・ユーザーを実現するテスト環境を,展示会に持ち込んだ。

 両社のアピールがすべてではないが,こういった工夫は来場者を引きつける要因になるのは確かだろう。ITpro EXPOは秋にも開催するが,その際に今回よりも工夫された展示があることを期待したい。