■正式発表前に販売するサイトがなぜ登場したのか?

 状況を二転三転させながら,国内販売にこぎつけたEee PCだが,実は正式発表の1月10日の前から予約注文を受け付けていた通販Webサイトがある。大手の「Amazon.co.jp」だ。

 当時の販売ページ(写真2)を見ると,2007年12月27日に注文を開始していたことになっていた。実際,2008年1月9日の午前まで注文できた。ただし,価格は実際のものより約8000円高い5万7944円だった。

写真2●2007年12月からフライングでEee PCを販売していたページ。実際購入できた人もいる
写真2●2007年12月からフライングでEee PCを販売していたページ。実際購入できた人もいる [画像のクリックで拡大表示]

 本件についてASUSTeKは当時,「販売代理店に問い合わせても,原因は究明できなかった。掲載ページの価格や一部のスペックが異なることから,正規のルートではないのではないか」とコメントしていた。ところが,掲示板などの情報によると,このフライング販売で注文した人は,実際購入できたという。正式発表後に価格が4万9800円に訂正され,1月25日に出荷されたというのだ。

 ASUSTeKの関係者によると,「ASUSTeKと直接取り引きしていない二次,三次の販売代理店が,国内市場の反応を見るため,意図的に流した可能性が高い」と言う。このフライング販売の予約数はかなりの数に上り,国内販売の関係者は「初期出荷分だけで賄えないほどの量だと聞いた」と話す。

 事実は分からないが,この話が評判になり,各販売店では初期出荷分を取り合ったといわれる。なお,公式には1万台といわれている初期出荷台数だが,実際はその半分程度だったという話もある。また,出荷直前の1月23日には,国内の初年度販売目標を60万台としていたが,ASUSTeKは既に「部材の調達や世界各国への割り当て分などの関係で,目標には未達の見込み」とコメントしている。この部材の調達というのは,前述した「信頼性が高いものに変更した」ことに起因するものだと思われ,海外モデルの品薄状態と事情が異なる要因だ。

■ウワサのテレビ付きEee PCは国内発売されるのか?

 まだ欲しいユーザーになかなか手が届かないEee PCだが,既に次期製品の話が挙がっている。2008年のゴールデン・ウィークのころにSSDを8Gバイトに倍増させたモデルが,夏前までにOSにLinuxを採用したモデルが投入される見込みだ。

 前述したように,4GバイトのSSDでは,正規版のWindowsを使うには容量が小さいためだ。スケジュールもほぼ確定しているようで,「Linux版は,既に無線LANの認証試験に入っている」(社啓宇氏)ので期待したい。

 特に,Linux版については,Winodwsのライセンス料がない分,販売価格は安くなると予想される。ただし,Windows版とは違い,SDHCカードやマウスが付属しない可能性が高く,数千円程度の価格差ならお得度は薄れるだろう。国内販売の関係者は,「できれば3万9800円としたいが,海外モデルとの価格差などを考えると4万円台前半になる見込み」だという。

Eee PCファミリーが登場する

 最後に,Eee PCの最新情報をお知らせしよう。海外のWebサイトや台湾の新聞で報じられた「Eee Desktop PC」(Eee DT)や「Eee Television」(Eee TV)「Eee Moniter」といったEee PCの派生製品についてだ。

 報じられた内容をよると,Eee DTはデスクトップ型PCで価格は199ドル程度,Eee TVは42型の液晶テレビにEee PCの機能を載せたもの,Eee Moniterは液晶一体型PCとなっている。

 ASUSTeKの国内関係者によると「この報道内容は,台湾本社の広報が公式に認めていない。ただ,経営メンバーが取材で答えたものであり,開発は進んでいるようだ。国内では,出荷の予定はなく,現状検討対象にも入っていない」という。ただし「Eee DTについては,国内市場投入を検討される可能性はある」(同関係者)そうだ。

 Eee PCのドタバタ劇を見ると,この3製品が国内で登場するかどうかは全く分からない。しかし,今は新製品のことより,Eee PCがきちんと流通するように調整する方が先だろう。現状,ASUSTeKからは次期ロットについて,2月中旬以降に出荷すると聞いているが,その数は国内販売の関係者によるとわずか1000台未満の見込みだ。予約の受注残は,この数倍から10倍以上ともいわれている。ASUSTeKは,早急に手を打たなければ,Eee PCが知名度を上げるどころか,ASUSTeKの名を下げることになりかねないだろう。