11月27日に発覚した、日本マクドナルドの都内4カ所のフランチャイズチェーン(FC)店での「商品調理日時の改ざん」は、世間の大きな注目を集めた。食品業界や飲食業界で不祥事が相次いだ2007年にあって、マクドナルドでの調理日時の改ざんは、それらを象徴する出来事の1つになってしまった。年間に延べ14億人の顧客が利用するマクドナルドだけに、その衝撃のインパクトは大きかったといえる。

 ITproの読者も、その多くはマクドナルドの利用者だと考えられるので、決して無視できる話題ではなかったはずだ。ここで、この数週間のマクドナルドの動きを、もう一度簡単に振り返ってみよう。情報の改ざんそのものは決して許されない行為だが、今回のマクドナルドの事後対応策から学べることは多いはずだ。

 マクドナルドは翌28日以降、顧客からの信頼回復と関係者の結束を急ぐため、全国に約350人いるFCオーナーとの決起集会や、3800カ所にある店舗の店長たちを集めた決起集会の開催、新しい店舗オペレーションへの変更、原田泳幸会長兼社長兼CEO(最高経営責任者)に店員が直接電話をかけられる内部告発のための「CEOホットライン」の開設と、改ざんの発覚から1週間以内に矢継ぎ早に対策を打ち出した。要は、不正が起こりにくいオペレーションそのものの見直しと、マクドナルドを取り巻く関係者とのコミュニケーションの強化である。

 連日報道を続けるマスコミに対しても、詳細な情報を正しく、そして分かりやすく、タイムリーに伝えるため、「原田プレスルーム」と呼ばれる記者ミーティングを開催している。12月24日発売の日経情報ストラテジー2008年2月号において、マクドナルドの現場力を探る特集記事を掲載するため、10月から1カ月以上取材を続けていた私も、合計4回開かれた原田プレスルームに参加している。原田社長が記者からの質問に毎回約2時間かけて答える取り組みは、取材した記者の目から見ても新鮮なもので、これまで国内に例がない独自の対応策だったといえる。マクドナルドの役員の多くも同席し、決まった時間に記者たちの前に顔を出して、担当分野の質問には説明を付け加えていた。

 こうしたなかで、改ざん発覚後にマクドナルドの店舗に目を向けてみると、意外にもビジネスへの影響は限定的だったように思えてきた。不祥事が発覚した直後にも、不正が発覚した4店以外のマクドナルドの店舗には、いつも通りに顧客の列ができていたからだ。

 12月10日に発表された、マクドナルドの2007年11月における「月次セールスレポート」を見ても、数値だけを眺めると、ほとんど影響を感じさせなかった。改ざんが発覚したのが11月末だったため、月次の業績にはほとんど響かなかったとも解釈できるが、既存店売上高は前年同月比で9.7%増、客数も11%増と、厳しい市場環境の中で競合店では軒並み前年割れが続く状態にあって、マクドナルドは22カ月連続で対前年比で既存店売上高を伸ばし、客数も11カ月連続でプラスを達成している。

 12月に入っても、改ざん発覚の翌週に当たる最初の4日間(12月1~4日の実績)は、やはり既存店売上高と客数が前年同月比でプラスと、影響を感じさせなかった。2007年12月末で締まるマクドナルドの通期の業績見込みも、2007年8月の中間決算発表時のままに据え置かれた。

 もちろん、原田社長は記者とのミーティングの中で、「業績に影響がなかったはずはない」と繰り返している。今回の事件がなければ、プラスの幅はもっと大きかったものと推測される。マクドナルドのブランドに大きな傷がついたことも確かだ。