「20年を超える記者活動を振り返って,今までに直面した最も面白くないテーマを一つだけ挙げよ」。こう言われたら,ためらうことなく「内部統制報告制度を巡る昨今の動向」と答えたい。人前で話をする機会があると上がってしまうせいもあり,「下らないテーマ」と放言してしまったりする。

 内部統制報告制度が日本で話題になり始めた頃から,「形式だけを整える愚かしさ」について何度か書いてきており,本人としては一貫性がある発言をしていると勝手に思っているのだが,講演会の場で詳しい説明もなく「不愉快」とか「下らない」と断定されても,聴衆の方々は面食らうかもしれない。周囲にいる若手記者も,内部統制報告制度を巡る世情を筆者がなぜ嫌悪しているのか,今ひとつ分からないようである。

 どこかでまた内部統制報告制度について書かないといけないのか,と思ったものの,なかなか実現しない。同じようなことを二度も三度も書くのは気が進まないからだ。しかし,幸いというべきか,内部統制報告制度に一番詳しい若手記者,島田優子(日経コンピュータ編集部所属)が「Enterprise談話室で対談したい」と申し入れてきた。

 「Enterprise談話室」とは,EnterprisePlatoformというWebサイトの中に作ったコーナーで,筆者と別の記者が特定テーマについて対談をする場所である。先般,2007年を総括し,2008年を展望する対談記事を5本公開した。取り上げたテーマは,2007年問題グリーンITオフショア開発Web版オフィス・ソフトなどであり,内部統制報告制度を無視した格好だったため,“内部統制記者”の異名を持つ島田はかちんと来たらしい。

 面白くない話ではあるものの,内部統制報告制度の導入は,2007年から2008年にかけて関心を集め続ける話題であることは間違いない。早速,島田と対談したので,その結果をこの場を借りて報告する。Yが筆者,Sが島田である。

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Y 一部の記者の間で「若手を晒し者にする場所」と言われている「Enterprise談話室」に立候補してくれるとは有難い。もっとも電子メールに「参戦したい!」と書いてきたのはいただけないが。さて,内部統制報告制度について何を言いたいのかな。

S ここ数年,内部統制と言いいますか,いわゆる“J-SOX”について何度となく取材し,特集記事を繰り返し書いてきました。確かに,心躍る楽しいテーマではないかもしれませんが,色々と取材すると良い面も悪い面もあり,一概に「下らない」と切り捨てるのはいかがなものかと思っています。

Y 法制度への対応を最優先し,内部統制の仕組みを作ることに汲々とする動きは下らないと思うが,かといって一方的に切り捨てているわけではない。2005年に「企業統治監査は個人情報保護に続く悪夢か」という記事を書いたし,本質的問題を指摘した「日本版SOX法対応が企業を潰す」と銘打った寄稿を書いてもらったこともある。それなりの指摘をした上で,批判しているつもりだが。そもそも物事に長所と短所があるのは当たり前じゃないの。