先日,自宅の給湯器が故障した。朝,給湯器の電源を入れようとしても,入らなかったのである。修理を呼んで聞いてみると,操作パネルと給湯器の基板を交換すれば直るが,使い始めて10年以上経過しているので,給湯器自体の交換を強く勧められた。このとき感じたのは,ひょっとして,組み込みコンピュータの寿命が,機器全体の寿命を早めているのではないかということだった。

最初に壊れるパーツが寿命を決める

 今回のトラブルを,もう少し詳しく説明しよう。症状は,キッチンや風呂場にある操作パネルから給湯器の電源が入りにくくなるというもの。夜,寝る前に電源を切ってしまうと,翌朝電源が入らないことが頻発した。室外に設置している給湯器本体のコンセントを挿し直すなどしてから,しばらくすると電源が入ったりするので,動作が不安定な状態だといえるだろう。修理に連絡した朝は,1時間ほど試みても電源が入らなかったため,「いよいよか」と思って連絡したのである。

 修理に来た人に聞いたところ,室内にある操作パネルと室外の給湯器の間で通信がうまくできないことが原因で,操作パネルと給湯器の基板を交換すれば直るという。つまり操作パネルを含めた,給湯器に組み込まれたコンピュータに問題があったということらしい。だが,冒頭で書いた通り,10年以上使っているためその他の部分もいつ壊れるかわからないので,給湯器自体の交換を強く勧められたわけだ。

 修理すると5万円程度かかるというので,買い換えを覚悟した。だが,同等品に交換すると30万円程度かかるとのことだったので,急な出費としては金額が大きくちょっと迷ってしまった。そのときに運良く操作パネルが復活?し,電源が入って使えるようになったので,しばらく検討することにした。その後,電源を切らないまま使ったのは,いうまでもない。

 今回のように,ある程度の年数が経過したモノが壊れると,わざわざ修理したりせず買い換えることが多いのではないだろうか。その際に,どこが壊れたかはあまり気にしないだろう。ということは,最初に壊れた部品が,その製品の寿命を決めるのに等しいわけだ。実際,インターネットで検索してみると,私と同じように操作パネルからの操作が不安定になるトラブルは結構あるらしく,それがきっかけで買い換えている人が多いようだった。コンピュータに関係する仕事をしている身としては,組み込みコンピュータが給湯器の寿命を早めているのではないかと思い,ちょっと悲しい気持ちになった。

 ちなみに,操作パネルの動作が不安定になり始めたときにメーカーに問い合わせたときには,安全上の問題はないとのことだった。生産終了後10年が経過した製品は,保守部品がなくなり次第修理ができなくなるという。また,これもインターネットで検索した限りでは,ガス給湯器の寿命は10年という記述が多くみられた。

 さて,私の出した結論は,修理である。修理費用は総額4万6200円で,そのうち部品代は2万9000円であった。これが正解であるかどうかは分からない。私が修理を決めた理由は次の通りだ。

 私の40年あまりの経験上,子供のころを含めても給湯器が壊れたのは今回が初めてだった。それで,すでに25年以上経過して,故障したことのない実家の給湯器と比較してみた。実家と自宅の違いを考えてみると,給湯器の機能には大きな差があり,自宅のものはフルオートタイプで,指定した湯温・湯量で準備する風呂の自動お湯はり,風呂の自動保温機能などを備えている。

 一方,実家は古いだけに風呂の自動お湯はり機能はおろか,湯温をコントロールする機能もない。できるのは電源のオン/オフと給湯能力の高い/低いの指定のみだ。おそらく実家の給湯器にはコンピュータは組み込まれておらず,スイッチによる簡単な操作ができるだけのものだろう。シンプルな分,壊れにくいと考えられる。したがって,お湯を沸かす部分の耐久性は10年程度ではなく,実家の25年といわないまでも20年くらいは使えるのではないかと推測した。

 自宅の給湯器の場合,機能的には不満はなく,お湯を沸かす部分は壊れておらず安全性にも問題がないことがわかったので,修理して長く使った方が経済的にも地球にも優しいと思ったのだ。この判断が正しかったかどうかは分からない。他の人にこの考え方を押しつけるつもりもない。幸い,修理後1カ月経過するが,今のところ問題なく利用できている。これで,組み込みコンピュータの故障が原因で買い換えずに済んだ。

コンピュータ化した製品ほど壊れやすい?

 私の給湯器のケースは,特異な例なのかもしれない。だが,最近の家電製品ではコンピュータ化が進んだ機器ほど,寿命が短いような気がしてくる。その例の一つが,HDD&DVDレコーダーである。

 これも私事で恐縮だが,現在利用している地上デジタル放送対応のHDD&DVDレコーダーは,これまでに3度大きなトラブルに遭っている。HDDに録画した番組の再生中に,再生が止まりハングアップしてしまったことが1度と,生のDVD-RWメディアを認識できず録画した番組をムーブできなくなってしまったことが2度だ。HDDのトラブルと1回目のDVDドライブのトラブルの時には無償修理をしてもらったが,最近になって発生した2度目のDVDドライブの故障では,買い換えるかどうか迷っている。

 HDD&DVDレコーダーの中身は,ほぼコンピュータといってもいいようなもの。映像のエンコード/デコード機能を備え,ファームのアップデートによって機能追加が可能になっている機種も多い。AV機器用にカスタマイズされているかもしれないが,パソコンなどと同じようにHDDやDVDドライブを内蔵する。

 これに対し,最近めっきり利用頻度が低くなったとはいうものの,5年以上利用しているVHS方式のビデオレコーダーは,特にトラブルもなく使える状態だ。この耐久性の差もコンピュータ化が進んだことによるのではないかと思えてくる。

 単に私がハズレの個体を引いただけなのかもしれないが,HDDのトラブルの時はレコーダー全体の交換だったので,2台続けてハズレを引いたとも考えにくい。使い方や利用環境によるのだろうが,年々機能が進化している機器だけに有償修理してまで,使い続ける気もしないのが正直なところだ。

 私自身は,長い間パソコンを使っていることもあって,中身がコンピュータだと思うと,1~2年でHDDやDVDドライブが壊れても,そういう場合もあるとあきらめてしまうところがある。また,給湯器のような場合であっても,組み込まれたコンピュータが10年も使えればよく持った,と思ってしまう。だが,高機能の代償として製品寿命が短くなっているとしたら,それでいいとは言い切れないのではないだろうか。買い換えサイクルが短くなれば,それだけゴミが増えることにつながるのだから。