いよいよ今月,ワイヤレス・ブロードバンドの事業者が決定する。11月22日に開催された公開カンファレンスでは,ソフトバンクの孫正義社長がウィルコムとKDDI陣営との対決姿勢を露(あら)わにするなど議論は白熱している(関連記事)。12月4日現在は,総務省と電波監理審議会が比較審査を行っている段階。当初のスケジュール通りに進めば,12月中に2.5GHz帯事業免許の割当先が決まる。

 今回の記事は,事業者間の争いからちょっと離れ,サービス開始後に登場しそうな端末をテーマにしてみたい。どの事業者が免許を獲得するにせよ,各社の事業計画では2009年に高速な無線通信サービスは始まる。ちょっと気が早いかもしれないが,どんな端末が登場して何ができるのかが気になってくる。

 残念ながら,次世代PHS端末はまだ登場していない。しかしモバイルWiMAX端末は,米国や韓国,台湾などの地域がすでに事業化に向けて動いていることもあり,想像以上に多様な端末がすでに存在している。そこで,展示会などで記者が撮りためたモバイルWiMAX端末の写真を4分類して一挙公開する。

 なお,以下の写真は,2007年10月に開催されたWiMAXフォーラム主催の「WiMAX Forum Taipei Showcase」(開催地:台湾),情報通信・エレクトロニクスの総合展示会「CEATEC JAPAN」(開催地:日本),韓国メーカーのWiMAXへの取り組みを紹介する「WiBro World Forum/WiBro Developers Forum」(開催地:日本)という三つの展示会で撮影したものである。

カード端末は準備完了,内蔵パソコンも

 まず,高速データ通信と聞いて,最も容易に想像できる使い方がパソコンを使ったデータ通信だ。分かりやすい用途だけに,すでにこの用途向けには多数の端末が登場している。PCカード端末やその後継規格であるExpressCard端末,USB接続タイプの端末,そしてパソコンに内蔵するモジュールもある。

 例えば二つの展示会では,富士通,米モトローラ,台湾アクトン,台湾クアンタ・マイクロシステムズ,台湾ザイセル,台湾ジェムテック,台湾ディー・メディア,韓国サムスン電子,韓国ポスデータなど多数のメーカーが出展していた。

 パソコンに内蔵する動きも進んでいる。モバイルWiMAXの旗振り役となってきた米インテルは,2008年中頃に出荷予定のノート・パソコン向けプラットフォーム「Montevina」(開発コード名)でモバイルWiMAX通信機能を取り込んでいる。東芝や松下電器産業,中国レノボ,台湾ASUSTeKなどが,Montevinaの採用に合意。2008年には,モバイルWiMAX通信機能を内蔵したノート・パソコンが登場しそうだ。

写真1●富士通のPCカード端末
写真1●富士通のPCカード端末
同社は半導体も内製している。実機によるデモンストレーションも行われていたが,1.5Mビット/秒の動画ストリーミングが時々途切れていた。ただ,不安定だったのには「会場内で多数のモバイルWiMAX機器が使われて,互いの電波が干渉している」(富士通の説明員)という理由があったようだ。「実際のサービス環境ではスムーズにストリーミングを見られる」(同)。価格は「出荷できる数量によるが,おそらく100~200米ドル程度」と予想していた
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写真2●台湾ザイセルのPCカード端末
写真2●台湾ザイセルのPCカード端末
こちらも実機を使ったデモンストレーションを行っていた。体感速度はやや不安定なADSLといったところ。おそらく,上記の富士通の端末と同様の理由で,本来の実力を出し切れていなかったものと思われる。なお,これはモバイルWiMAX端末として最も早く登場したものの一つ。日本の事業者による実証実験の場でも,この端末を目にすることがあった
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写真3●台湾ジェムテックのExpressCard端末
写真3●台湾ジェムテックのExpressCard端末
MIMO(multiple input multiple output)に対応している。同社は無線LAN製品でトップクラスのOEM/ODM(相手先ブランドによる設計・製造)ベンダー。実際に市場に出る際には“有名ブランド品”として出てくる可能性が高い
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写真4●ワイヤレスブロードバンド企画がCEATECで展示した米インテルのモバイルWiMAXモジュール
写真4●ワイヤレスブロードバンド企画がCEATECで展示した米インテルのモバイルWiMAXモジュール
インテルが開発中のWiMAXモジュール「Echo Peak」(開発コード名)を,ノート・パソコンへ容易に内蔵できることをアピールした。上段右から2つ目の白いシールドが貼ってあるモジュールが「Echo Peak」
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写真5●米GCTセミコンダクタのモバイルWiMAXモジュール
写真5●米GCTセミコンダクタのモバイルWiMAXモジュール
ノート・パソコンやUMPC(ultra-mobile PC)に内蔵できる。インテル以外にも,モバイルWiMAXモジュールを手掛けるメーカーは複数ある
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写真6●韓国サムスン電子のモバイルWiMAX通信機能を内蔵したUMPC
写真6●韓国サムスン電子のモバイルWiMAX通信機能を内蔵したUMPC
前はキーボードと画面を三つに折りたためる「SPH-P9200」,後ろは画面横に小さなQWERTYキーボードを備える「Q1 Ultra」。SPH-9200はWindows XPを,Q1 UltraはWindows Vistaを搭載している。2008年に2.5GHz帯に対応した製品を出荷する予定だ
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