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記者の眼

開き直ったMicrosoft

中田 敦=ITpro 2007/11/22 ITpro

 「10年後には社内で運用されるサーバーは無くなり,すべてがコンピュータ・クラウドに移行する」---。米Microsoftのスティーブ・バルマーCEO(最高経営責任者)は先日,システム・インテグレータを中心とする同社のパートナー企業に対してこう宣言した。もしそうなら,パートナー企業が現在手がけているWindowsサーバー関連ビジネスは,10年後にはどうなるのだろうか?

 やはり無くなるだろう。筆者はそう思っている。

 冒頭のバルマー氏の発言は,同社が毎年開催する「Microsoft Partner Conference」(今年は11月8日)の基調講演で飛び出した(関連記事:「10年以内に社内で運用されるサーバーは無くなる」,MSバルマーCEOが「破壊」を宣言)。このPartner Conference,午前中には同社が来年出荷する「Windows Server 2008」「SQL Server 2008」「Visual Studio 2008」の概要や販売方針の説明会が,夕方には同社の製品をたくさん販売したシステム・インテグレータを表彰する「パートナー・オブ・ザ・イヤー」の授賞式が開催されたのだが,その間に行われたバルマー氏による基調講演で,パートナー企業の現在のビジネスを真っ向から否定する話が飛び出したわけだ。日々,日本のパートナー企業と顔を合わせるマイクロソフト日本法人の幹部にはできない,本社CEOならではの「開き直った」発言である。

 「あなたのビジネスは将来的に無くなります」と宣告されたパートナー企業は,いい気分はしなかっただろう。Microsoftはここ数年「ソフトウエア+サービス」というビジョンを掲げているが,本命はサービスであり,ソフトウエアは「サービスに全面移行できるまでの繋ぎ」であることは明らかだ。バルマー氏は「もちろん今後数年は,サーバー製品をどんどん販売して頂きたい」と力説するが,これでは白けた気持ちにならない方がおかしい。

 とはいえ,発言内容自体を「まさか」と思ったパートナー企業も少ないはずだ。クラウド・コンピューティングやSaaS(Software as a Service)といったビジョンはこれまで散々語られてきたし,既にMicrosoftも「Dynamic Live」や「Office Live」といった企業向けのSaaS事業を開始している。バルマー氏の発言は,現状を追認する「決別宣言」のようなものであり,パートナー企業としては「ついに」「いよいよ」とは思っても,それほどの驚きでは無かったはずだ。

 バルマー氏は無くなるビジネスの代表例として,「Active DirectoryやExchange Serverの構築・運用サービス」を挙げる。企業へのWindowsサーバー販売自体も無くなるし,「ほとんどのトランザクションやアプリケーション,システム管理機能がコンピュータ・クラウドに移行する」(バルマー氏)とも語る。

「Windowsサーバー関連ビジネス」はやっぱり無くなる

 では実際に,これらのビジネスは本当に無くなってしまうのだろうか。いまだに多くの企業にメインフレームが残っているように,全てのコンピューティングがコンピュータ・クラウドに移行することは無いだろう。しかし筆者は,ほとんどのWindowsサーバーがコンピュータ・クラウドに移行し,企業向けのサーバー販売やWindowsシステム構築ビジネスが無くなるのではないかと思っている。なぜそう考えるのか。それは筆者自身が,今は無くなってしまった「Windowsサーバー関連ビジネス」に関わっていたからだ。

 無くなってしまったWindowsサーバー関連ビジネスとは,筆者がかつて所属していた「日経Windowsプロ」というWindowsサーバー専門誌のことである。同誌はWindows NTブーム最中の1997年に「日経Windows NT」として創刊し,その後「日経Windows 2000」「日経Windowsプロ」と誌名を変え,2005年12月に,長年追い続けてきたLonghornを見ることなく休刊した。

 筆者は1997年の創刊には立ち会っていないが,創刊直後の日経Windows NTは,非常に勢いのある雑誌だったらしい。日経BP社の主力である直販誌(書店では販売せずに読者に直接届ける雑誌)は,読者開拓に莫大なコストを要するため創刊初年度は通常赤字になるのだが,日経Windows NTは創刊初年度から黒字を記録したほどだ。しかし,創刊時には4万人を超えていた読者数は年々減少し,筆者が編集部に所属した2002年10月から2005年12月までの間は,読者数は常に2万人台だった。

 なぜ日経Windowsプロは休刊したのだろうか。「必要な情報が雑誌ではなくWebで入手できるようになったから」「関連ビジネスの寡占化が進んで広告主が減少したから」など,様々な理由があるだろう。しかし筆者の手元にある「歴代の人気記事ランキング(日経BP社の直販誌では毎号サンプリングによる読者調査を行っており,記事毎に『読まれた率』や『読者の参考になった率』が測定されている)」を眺めていると,別の理由が浮かび上がってくる。

 簡単に言うと,日経Windows NT/2000/プロの人気記事とは,「トラブル対策記事」ばかりなのだ。歴代トップの人気記事は「Windows NTの正しいサービス・パックの適用法」だし,特集タイトルには「落とし穴」や「○○の常識」「○○の鉄則」といった言葉が目に付く。人気の高い長寿連載は「トラブル解決Q&A」であり,同連載は何度も書籍化されている。

 つまり筆者は,こう考えるのだ。過去に日経Windows NTが売れたのは,当時のWindows NTがトラブルだらけで「雑誌でも読んで情報を入手しなければ,マトモに使えない代物」だったからであり,Windows 2000 ServerやWindows Server 2003になって安定性や信頼性が向上し,トラブルも減り,マイクロソフトのサポート体制も充実した結果,日経Windowsプロもその役割を終えた---と。そう考えると,Windows Serverに関わる人にとって,休刊はむしろ喜ばしいことだったとも言えるだろう。

無くなったあとに

 Windows Serverは進歩し,ユーザーが必死にトラブル情報を収集しなくても使えるようになった。同じように,将来的には自社で運用しなくても使えるようになる。そうなれば,Windows Serverに関する構築・運用サービスもその役割を終えると考えるのは自然だ。

 では,無くなる予定のビジネスに従事している人は,今後どうすればいいだろうか。日経Windowsプロの編集部員のケースで言うと,Windows Serverに関する情報提供という業務は「ITpro」に移籍した筆者に集約され,他の編集部員は別の業務に進むことになった。つまり,Windowsサーバー関連ビジネスを現在手がける人も,全く別分野のビジネスに移らざるを得ない可能性があるだろう。

 なおITproに移籍した筆者は,インターネット・ビジネス動向やセキュリティなど,Windows以外の記事も執筆するようになった。また,Windows周りのトラブルを追い回す機会も減ったので,これは精神衛生上,悪い話ではなかった。

 パートナー企業には,Windows Serverの代わりにLinuxを販売するという選択肢もアリかもしれない。日経Windowsプロは休刊したが,創刊時と同じようにOSやアプリケーションのインストール方法を解説し続けている「日経Linux」は,いまだに健在である。こう書くと,筆者がLinuxのことをどう思っているかバレそうだが,Linuxの方が「(将来的に不要になる)既存ビジネス」が生き残る可能性は高い。

 これからもITプロフェッショナルの仕事は無くならないが,その中身は変わっていくはずだ。「ビジネスの消滅」は悩ましい問題だが,避けることはできない。バルマー氏の発言は,ある意味,パートナー企業に対する誠実さの現れではないかと思っている。

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