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記者の眼

「勝手に絶望する若者たち」は自分のことを笑えるか

谷島 宣之=「経営とIT」サイト編集長 2007/11/20 ITpro

 座右の銘を尋ねられたことはないが,もし質問されたら,“Laugh your life”と答えたい。単純な言葉だが,要するに,厳しい事態に直面した時,悩んだり,落ち込んだり,愚痴ったりする前に,自分のことを笑ってみる,という意味だと思っている。

 ITproに関係ある話になるかどうか分からないが,ここ数年,気になっていたものの,書きあぐねていたことについて書く。

 時が経つのは早いもので記者になって22年が経過し,自分ではそうした意識はあまりないが,経験年数を見る限り,立派なベテランになってしまった。年のことなど気にせず,好き勝手に原稿だけ書いておればよいのなら,これほど楽しい仕事はないが,そういうわけにもいかず,ベテランの責任とは何か,といったなかなか難しいことを時折考える。

 やはり,仕事で成果を出す,後輩の面倒を見る,の二つだろう。記者の成果とは何かとなると大変厄介な話になるので今回は触れない。もう一つの後輩との付き合いも難しい。正直に言うと,ベテランの責任として「後輩の面倒を見る」を持ち出したのは,頭で考えたことであって,心からそうしたいと思っているわけではない。自分自身が諸先輩から世話になっており,同じように後輩に接しなければ,と考えたのである。どうも文字にすると酷い話だが,なぜ心からそうしたいと思わないかと言えば,後輩と接するのは嫌いではないものの,話していると疲れる時があるからである。

 後輩の仕事の飲み込みが遅いので疲れるのか。そうではない。記事を書くのは難しい仕事であり,すぐに書けるというものではない。22年やってきても,いまだに記事を書くたびに唸っているわけで,後輩がすらすら書いてしまったら,ベテランの立つ瀬が無い。

 記事を書く難しさの一例を挙げると「記事は逆三角形に書く」という鉄則がある。逆三角形とは「結論から先に書く」「重要なことから先に書く」ことを意味するが,実際にこう書くのは簡単ではない。後輩の原稿を査読する際には,馬鹿の一つ覚えで「この原稿は逆三角形になっていない」と言い続けることになる。

 逆三角形とは,新聞社で使われてきた言い回しである。新聞の場合,記事の本文を紙面に流し込み,文章があふれた場合,後ろから切ってしまう。起承転結を考え,結論を最後に持っていったりすると,その部分が掲載されない危険がある。したがって,最初に大事なことを書いてしまわないといけない。ただし,本原稿はコラムなので,あえて正三角形に書いている。

 逆三角形に文章を書くとは,コンピュータの世界で言えば,構造化プログラミングのやり方に似ている。構造化プログラミングでは,プログラム全体がいくつかのプログラムの集合体である,という構造が最初に宣言される。そして,全体を構成するそれぞれのプログラムもまた構造を持つ。全体の宣言文を読み,各プログラムの宣言文を読めば,すべてのソースコードを読まなくても,そのプログラムの目的が把握できる。

 結論を先に書く,構造を先に規定する,といったことは,記事執筆やプログラミングを問わず,普遍的な鉄則の一つなのだろう。MBA(経営学修士)を取得した後輩記者に「ロジカルシンキングとは何か」と尋ねた時,彼は「編集現場で教わった,逆三角形の話とまったく同じです」と言っていた。逆三角形という言い方はしていないまでも,文章や資料の作り方として,結論から先に書くことが推奨されているわけだ。

原稿が書けなかった話

 物事の因果関係をいったん整理した上で,逆三角形に書いていくためには,かなりの練習が必要になる。22年前の自分を思い出してみると,デスク(原稿を査読するベテラン)から何度怒られても,なかなか逆三角形に書けなかった。ある時,デスクの一人から「お前,本当に下手だねえ」と嘆息されたことがあったが,しみじみとした言い方だっただけに応えた。別なデスクは筆者が提出した原稿の束をばらばらにして,結論めいた部分が書かれた原稿用紙を抜き出し,それを束の上に載せ,「この順番で読めるように書き直せ」と言って付き返してきた。

 当時はワープロ専用機もパソコン用ワープロ・ソフトも使わず,原稿用紙に手書きしており,そのためこういう“指導法”が成立した。ついでに書いておくと,かつての編集職場は大変荒っぽい雰囲気で,原稿用紙を記者に投げつけるデスクや,目の前で引き裂きゴミ箱に紙吹雪のようにして落とすデスクがいた。現在はテキストファイルを電子メールで送受信し合うので,こうした光景にはお目にかかれない。

 毎回怒られるのは困るから,何とかしなければならない。色々工夫して編み出したやり方は,大きな紙に下書きすることであった。20年以上前,日経コンピュータ編集部は,誌面に掲載する図表を作成するために横50センチ縦37センチの用紙を使っており,それを原稿の下書きに転用した。この大きな紙に記事の題名を大書し,本文を殴り書きする。逆三角形,逆三角形とつぶやきつつ書くのだが,どうしても所々で正三角形になってしまう。そこで「原稿のこの部分は前に出す」と矢印を書き入れる。原稿用紙に一度書いてから順番を入れ替える手もあったが,筆者の場合,一枚の紙に書くやり方が適していた。一枚に書くと,記事の全体像が見え,構造を整理しやすくなる。大きな紙の上で頭の整理を終えてから,本来の原稿用紙に原稿を書いていた。

 ワープロやパソコンが普及するにつれ,図表作成に大判用紙を使う記者はいなくなった。そこで日経コンピュータ編集部に沢山積んであった用紙を隠匿し,20年近く使い続けることができた。ただ,困ったことに,用紙の残りが少なくなっている。この紙が無くなった時は記者引退だ,と思ったりするが,今の調子で使っていくと,後1年程度しか持たない。

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