13万超のサービスを選べる

 「リアーデンのサービスは、SaaSとマッシュアップが広がってきた今でなければ実現できないサービス」とフォード・ディレクタは言い切る。

 リアーデンのサイトでは、3万7000店のレストランを含む13万7000社のサプライヤからサービスを調達。サービス事業者とはすべて、インターネット経由のWebサービスAPIを用いてマッシュアップしている。

 これにより、刻々と変わる空席や価格の情報を社員に提供できるようにする。具体的には、3万店以上のレストランを予約できる「Zagat Survey」などのサイトとつなぎ、効率的にサービスを提供している。

 リアーデンには「アマゾンやグーグルにもそん色のない使いやすいインタフェースを実現している」(フォード・ディレクタ)というWeb2.0的な特徴もある。「社内だからと言って使いにくいシステムはもう使ってくれない」とフォード・ディレクタは強調する。

 リアーデンのサイトでは、Ajaxなどの最新技術を採用している。ホテルやレストランなら、マッシュアップしたGoogleマップで場所を確認しながら予約できる(写真2)。

写真2●レストランはGoogleマップを使って選べる
写真2●レストランはGoogleマップを使って選べる[画像のクリックで拡大表示]

 リアーデンの料金は、企業が調達するサービスの総額を基にした年額制である。このため企業規模に関係なく導入しやすいという。来年以降に欧州や日本での展開を予定している。

「オンライン・パーソナル・アシスタント」が目標

 リアーデンは企業向けのサービスとして出発したが、いずれは個人向けサービスに参入する。個人のあらゆるサービス調達を支援する「オンライン・パーソナル・アシスタント」を目指す。それが最終目標だ。

 個人向けには無料でサービスを提供し、サービス事業者から手数料を得る。現在は企業からの収入が大きいが、いずれは手数料が上回るようにする計画である。

 個人向けには広告ビジネスを積極的に展開する。リアーデンはスケジュール管理やアドレス帳といったPIM(個人情報管理)機能を持つ。そこには、ユーザーがいつ、どこに行って、どのレストランで食事を取るかといった情報が蓄積される。航空機の座席の好みといった情報も登録してある。企業向けに実際にサービスしている機能だ。

 例えば、ある日、成田空港の50番ゲートにユーザーが降り立つとする。その2階下には、スターバックスがある。リアーデンは、スターバックスに対して、このユーザーの携帯電話に100円のクーポン券を配る広告を持ちかける。つまり、ユーザーのコンテキスト(時間や場所)に合わせた広告の展開が可能になる。Googleなども、まだ実現できていない新しい形の広告サービスだ。

 リアーデンには、ユーザーがコンタクトを受けたいデバイスとして、オフィスの電話や、携帯電話、携帯情報端末など、日時に合わせて好みのものを登録する機能がある。もちろん「会議中はコンタクト禁止」といった設定もできる。「将来的には、モバイル向けのサイトも立ち上げたい」(フォード・ディレクタ)という。

 ロングテールの広告展開も有望だ。大阪駅のターミナル・ビルの有名美容院で、得意客のキャンセルが出たとする。予約は今日の午後4時から。いまから、その予約を埋めるのは絶望的だ。そこでリアーデンに広告を打つ。今日の午後、大阪駅近くにいるオシャレ好きの女性に対して、「今日の4時から、カリスマ美容師によるカットが半額!」。こんな具合だ。

 個人のスケジュールや好みを学習し、コンテキストに合わせた最適なサービスを提供するという試みは、これまで何度も実行され、失敗してきた。IT業界に10年以上いる方なら、業界に旋風を起こして消えていった「ゼネラル・マジック」というベンダーを懐かしく思い起こすかもしれない。SaaSとマッシュアップという新技術の登場によって、そのサービスがようやく現実味を帯びてきた。