この11月,携帯電話に新しい料金体系が導入される。まずKDDI(au)は11月12日,「フルサポートコース」と「シンプルコース」という2つの料金コースを持つ「au買い方セレクト」を導入。NTTドコモも11月26日から「ベーシックコース」「バリューコース」の2つの選択コースを設ける。

 auの場合は,11月12日以降の新規契約または機種変更がすべて対象となる。NTTドコモも「905iシリーズ」以降に発売される全携帯電話機が対象だ。料金コースの新設といえども,既存のものとすべて入れ替えられるこれらの料金コースは,ほとんどのユーザーに影響するものである。

 これらはいったい,どういう特徴を持つものなのだろうか。

 一言で言うと,両社の2つの選択コースは,(1)新規契約または機種変更の際の端末購入費用が安くなるよう携帯電話事業者が「補助金」を出すコース,(2)補助金がない代わりに月々の基本料金などが割安になっているコース──に分かれている。(1)がNTTドコモのベーシックコース,auのフルサポートコース。(2)がNTTドコモのバリューコース,auのシンプルコースである(表1)。

表1●NTTドコモとKDDIが新たに始める料金コースの概要
NTTドコモ ベーシックコース ・従来と同様に端末の購入費用が安くなるコース
・基本料金は従来通り
・端末購入時に販売価格から1万5750円を割引
・2年間の継続利用が条件
・2年以内に解約や機種変更をする場合は期間に応じた解除料が必要
バリューコース ・端末の購入費用が高めの代わりに,基本料金が安くなるコース
・基本料金は従来プランから一律で月額1680円値下げ
・通話料や無料通話分は従来プランと同様。「ひとりでも割50」も利用可
・端末購入時に一括払いか分割払いを選択可能
KDDI au買い方セレクト
フルサポートコース
・従来と同様に端末の購入費用が安くなるコース
・基本料金は従来通り
・端末購入時に販売価格から2万1000円を割引
・2年間の継続利用が条件
・2年以内に解約や機種変更をする場合は期間に応じた解除料が必要
au買い方セレクト
シンプルコース
・端末の購入費用が高めの代わりに,基本料金と通話料金が安くなるコース
・従来プランとは異なる2種類のプランを新たに設定
・無料通話分はない。「誰でも割」も利用不可

 両社とも,従来コースと“ほぼ”同じなのが(1)で,これに(2)を追加したという格好になっていると言える。ここで“ほぼ”と表現したのは,ベーシックコース,フルサポートコースともに今まではなかった2年間の継続契約という条件が新たに加わったからである。両社とも,2年以内に解約や機種変更をする場合は,期間に応じた解除料が必要となる。一方,こうした“2年縛り”のない(2)の補助金なしコースは,両社で性格がかなり異なっている。

 まずNTTドコモのバリューコースがベーシックコース(ほぼ従来コース)と違う点は,基本料金が一律で月額1680円安くなっているという点である。S,M,Lといったプランの種類や,通話料金,無料通話分はベーシックコースと同じ。基本料金が半額になる割引サービス「ひとりでも割50」も利用できる。とにかく,標準で月々1680円安いという点がベーシックコースとの大きな違いと認識すれば良い。

 一方のauは,シンプルコースに「シンプルプランS」「同L」という2種類のプランを設けた。基本料金,通話料金は一見かなり割安。例えばシンプルプランSの場合は,基本料金が月1050円で通話料金が15.75円/30秒である。ただし,両プランとも無料通話分はなく,基本料金が半額になる「誰でも割」も適用できない。フルサポートコースと比べて実際に安いのか高いのかは,一言では言い表せなくなっている。一例を挙げると,誰でも割を適用したフルサポートコースの「プランS」と,シンプルプランSを比べた場合,毎月の通話時間が45分~317分の場合はプランSの方が安いが,それ以外はシンプルプランSの方が安いという,かなりややこしいことになる。

有利なのは,ドコモの場合は補助金なし,auの場合は補助金あり

 携帯電話の利用形態や利用頻度はユーザーによってまちまちで,一概には言えないのだが,乱暴を承知でこれらのコースを評価すると,多くのユーザーにとって有利なのは,NTTドコモの場合は補助金なしのバリューコース,auの場合は補助金ありのフルサポートコースとなるだろう。

 NTTドコモの場合,ベーシックコースの端末購入補助金は1万5750円。バリューコースとベーシックコースの基本料金の差が月1680円あるので,10カ月間使えばバリューコースの方が得になる。ひとりでも割50を使えばベーシックコースの基本料金が半額になるが,バリューコースでもひとりでも割50が使えるので,2年間の継続契約という条件は加わるものの,月間の基本料金が840円安くなるバリューコースの方が有利という点は変わらない。2年間使う間に,1万5750円という補助金以上の料金差が生まれるからである。

 なお,NTTドコモの中村維夫社長は新料金コースの発表会で,新規ユーザーの約5割はバリューコースを選ぶようになると見込んでいると発言している。

 これに対してauの場合は,上記のように,端末購入補助金の存在を抜きにしても,シンプルコースとフルサポートコースのどっちが有利か一概に言えない。2年間の継続契約という条件が付くものの,それさえ承知してしまえば,2万1000円という補助金が付くフルサポートコースの方が得になるユーザーが多いだろう。もしシンプルコースとフルサポートコースの内容を精査して,月々の負担額がフルサポートコースの方が安いと判断したら,間違いなくフルサポートコースである。2年以内に解約して解除料を支払うとしても,解除料が2万1000円の補助金を超えることはないからだ。