写真●ずらりとそろった「実践的アプローチに基づく要求仕様の発注者ビュー検討会」のメンバー
写真●ずらりとそろった「実践的アプローチに基づく要求仕様の発注者ビュー検討会」のメンバー
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 NTTデータ,富士通,日本電気,日立製作所,構造計画研究所,東芝ソリューションの6社が,2006年4月に設立した「実践的アプローチに基づく要求仕様の発注者ビュー検討会」が,2007年9月18日に最初の成果となる「発注者ビューガイドライン(画面編)」(以下画面編)を公開した。

 同検討会は,発注者(ユーザー企業)側から見て分かりやすい設計書(外部設計フェーズの成果物)を書くための工夫や留意点をまとめたガイドラインを作成・公開するのが目的。9月には,新たに日本ユニシス,沖電気工業,TISの3社が加わった。

 第1弾の画面編は,画面に関する外部設計書(画面一覧,画面遷移,画面レイアウト,共通ルール,入出力項目,アクション明細,成果物間の関連)の書き方のコツやサンプル,注意点のチェックリスト,発注者と開発者の間で行うレビューの考え方やコツなどを,かなり詳細に記述している(PDFで293ページにも及ぶ)。2008年3月には,「システム振舞い編」と「データモデル編」も公開する予定である。

 NTTデータ,富士通,日本電気,日立製作所といった,普段は競合する大手ベンダーのメンバーが手を結んで共同作業を行うのは,非常にめずらしい。同検討会のメンバーに,発足の経緯や目的,苦労話などを聞いた(発言はいずれかの会社のメンバー,写真)。

Q まず,検討会が発足した経緯を教えてください。

A 我々SIベンダーは,「要件定義や設計がきちんとできないままに製造フェーズに入り問題になったり手戻りが発生することがある」という共通の課題を抱えています。まずNTTデータと富士通の社長同士が,こうした共通の課題を解決するために,実際の事例に基づいて上流工程における各社の工夫をまとめよう,ということで合意しました。その後,各社に声をかけて,検討会が発足することになりました。

Q 作業は順調だった?

A 実は,当初は1年半で,画面編,システム振舞い編,データモデル編のすべてを公開する予定でしたが,1年半たって画面編しかできませんでした。そこで,活動を2年に延ばし,2008年3月に残る2つを公開することにしました。

Q なぜスケジュールが遅れたんですか。

A 一番最初は,何を作るべきなのか具体的に決まっていませんでした。このため,「検討会でそもそも何を作るのか」というスコープを決めるのに時間がかかりました。また,実際のプロジェクトの生の設計書を各社で持ち寄ることになっていたんですが,お客様が知的財産権を持っている場合があり,その許諾に時間がかかることもありました。

Q 画面編,システム振舞い編,データモデル編のそれぞれの担当会社は?

A 画面編のワーキンググループが,NTTデータを中心に,富士通,日本電気,日立製作所,構造計画研究所,東芝ソリューションの6社。システム振舞い編のワーキンググループが東芝ソリューションを中心に,日本ユニシス,NEC,富士通の4社。データモデル編のワーキンググループが構造計画研究所を中心に,NTTデータ,TIS,沖電気工業,日立製作所の5社です。画面編に関しては,2006年の12月まで議論して,そこから書き始め,7月末に完成しました。システム振舞い編とデータモデル編は,2008年1月までにワーキンググループの作業を終え,3月までに3つの整合性を取る予定です。

Q 各社のメンバーは,どういう立場の人ですか。

A 主には,社内で標準的な開発方法論を担当している人ですが,現場を支援しているエンジニアなど,現場に近い人が参加している会社もあります。もちろん,各社とも,現場のSEにはヒアリングしています。

Q 会合の頻度はどれくらい?

A 2週間に1回,夕方に集まって,2時間以上議論しました。それ以外に,各社の社内で検討したり検討会に持ち寄る材料を集める時間もあるので,ピーク時は,作業的に結構ヘビーでしたね(笑)。