あて先を間違えてメールを送信してしまい,頭が真っ白になった経験はないだろうか。筆者は過去に何度かそうした失態を犯したことがある。送信後はどんなに嘆いても,後の祭り。現状のSMTPの仕様では一度送信したメールは,瞬時に送信相手先のメール・サーバーに送り届けられるからだ。

 こうした苦い経験もあり,誤送信対策関連の機能をいろいろ調べてみた。結論からいうと,いくつかあったが,筆者が求める条件に合う機能は見付からなかった。筆者が欲しいのは,ズバリ「相手が読む前なら,送信した後にそのメールを取り消せる」機能である。SMTPの仕様上,絶対にあり得ないのは理解しつつも,インターネットでは日々驚かせられるサービスや商品が次々と生まれてくるだけに,発想の転換で作られたアイデア品のようなものを期待してしまう。ちなみに,現実世界の手紙は相手に届く前なら手数料を支払うことで取り戻せる。

ニフティサーブやスンドメールでは送信メールを取り消せた

 今のメール環境とは大きく異なるものの,かつては送信済みのメール取り消しサービスはあったし,そうしたソフトも存在していた。「ニフティサーブ」のメール・サービスや,ソースネクストの「スンドメール」などは有名だ。

 ニフティサーブのメール・サービスは,相手が読む前なら,いつでも送信済みメールを取り消すことが可能だった。これが可能だったのは,そのサービスがニフティサーブ内に閉じたものであり,メールが同じデータベースに蓄積されていたから。つまりメールの取り消しが可能な範囲は,メールの送信先がニフティサーブ会員の場合である。当たり前の話ではあるが,パソコン通信を始めたころはメールのやり取りの相手がニフティサーブの会員が多かったので,それでもこの機能には助けられた。

 一方スンドメールは,あらかじめ設定した時間内であれば,取り消せるというもの。スンドメールがインストールされたパソコン内で同ソフトがSMTPサーバーとして振る舞い,メール・ソフトから送られてきたメールを設定した時間まで保存。その時間が来れば,実際に社内のメール・サーバーに送信されるが,その時間が来るまでに気が付けばメールを止めることができる。

ニフティの「消せるメール」は内容が書かれたURLを送る仕組み

 上記二つのサービス/製品は提供が終了し現在は利用できないが,似た機能を持つサービス/製品は今もある。

 ニフティサーブを提供していたニフティがこの7月に,メール・サービス「@niftyメール」で,消せるメールという機能を追加した。この機能を使った場合,送信相手にはURLが書かれたメールが送られる。そのリンクをたどりパスワードを入力して初めて,相手はメールを閲覧できるという仕組みである。

 送信相手を選ばない点では,かつてのニフティサーブの取り消し機能より進化しているかもしれない。ただ利用に当たっては,@niftyメールの会員になる必要があり,しかもメール作成の際に「消せるメールとして送信」にチェックする必要がある。残念ながら,汎用的なメール・ソフトを使い,あまり手間がかからないものを好む筆者にはマッチしない。

 OutlookやNotesなどにも,メールの取り消し機能が搭載されている。ただどちらもニフティサーブのように,同じデータベースを利用している者同士に限定される。つまり,Exchange ServerやDominoの利用が前提であり,グループ内を対象とした機能である。

 今企業向けの製品では,誤送信対策製品が急増している。この1年ほどの間に製品数は10を超えた。筆者が欲しい機能とは異なるが,メールの送信時にメールの内容をダイアログで表示しユーザーに再確認や注意喚起を促す機能や,上司の承認などがないとメールを送信できなくする機能など,今までにない誤送信対策が出てきている。

 送信済みメールを後から取り消すというニーズは根強くあるはず。いずれ,それに近いサービス/商品が出てくると信じている。