今夏の暑さは異常。しかし、今後もこの暑さが続く、いやもっと暑くなるというのが専門家の意見である。暑いと身体にこたえるだけでなく、パソコンなどの電子機器にも悪影響を与える。場合によっては使えなくなる。トラブルが頻発する日が来るかもしれない。
「エアコンの温度設定は28度」「使用しない機器は電源を切る」「コンセントを抜いて待機電力を抑える」などなど、省エネにより環境負荷を少なくする努力は欠かせない。しかし、環境破壊はジワジワと進んでおり、従来の快適さや便利さをあきらめられない。なかなか思い切った対策の実行に踏み切れないのが実情である。
そうしている間にも、地球温暖化は進む。「最高気温が40度の夏」が当たり前の時代がすぐそこまで迫っている。しかし、パソコンなどの電子機器にとっては、当たり前ではない。
40度を超えた状態で・・・
筆者自身、8月中旬に猛暑の影響を痛感することがあった。昼間に自宅でパソコンに向かって作業をしていたらファイル・サーバーが応答しなくなった。ファイル・サーバーとは古いWindows 2000マシンで、2階の小部屋に置いてある。早速、そのパソコンを調べると、不思議なことにシャットダウン処理に入った状態で止まっていた。
そのとき、「暑さのせい?」と思った。温度計を見たら42度。これまで何年もパソコンを使ってきたが、勝手にシャットダウンというのは初めて。断言できないが、高温以外の原因は考えられない。高温が原因とすると、パソコンが停止状態だったのは運がよかったのかもしれない。CPUが暴走してとんでもないことを実行する恐れもあるからだ。
直接操作するパソコンはエアコンを効かせた部屋で使うことが多い。室温が40度以上にはならないだろう。しかし、サーバーは必ずしもそういう環境とは限らない。日当たりがよく風通しが悪ければ、40度以上になる。
家庭にサーバーのようなマシンを置くこと自体、環境負荷を高める行為と非難する声は当然あるだろう。それはそれで検討すべき課題である。しかし、その代替方法が見つからない以上、スッパリとあきらめられない。また、マイクロソフトの家庭向けサーバー製品「Windows Home Server」が注目されるなど、家庭でのサーバー・マシンのニーズは少なくない。
企業も無関係ではない。「マシン・ルームがあり、24時間365日空調を稼働」とできればいいが、中小企業やSOHOなどでは,そうではない場合がある。オフィスの片隅にサーバー・マシンを置いてあり、休日などは空調が止まっていれば室温は上がる。
個々の部品の許容動作温度は高いが・・・
もともとコンピュータは熱に弱いモノであった。メインフレームなどは、20度前後に室温を保ったマシンルームに設置する必要があった。それがオフコン、パソコンなどと身近になるとともに、環境条件は緩やかになってきた。それに従い、パソコンの動作温度をほとんど気にすることはなくなった。暑い日があっても「動くように設計されているはず」「フル稼働するファンが壊れないか」と思うくらいであった。
パソコンが正常に動作する温度は、一般的に5~35度程度。パソコンを構成する各部品の動作温度に保つための条件である。CPUの動作温度はかなりバラツキがあるが上限は70度前後、マザーボードは0~50度、ハードディスクは0~55度などとなっている。パソコンの内部は、CPUなどが熱を発するために温度が高くなる。これをCPUにフィン(放熱器)をつけたり、ファンで内部の熱を放出したりして放熱している。パソコン自体を設置するところが35度を超えると、部品の動作温度を超える可能性があり、パソコンが正常に動作しなくなる可能性があるということだ。
35度を超えないようにするには、エアコンが不可欠という状況である。日のあたるところ、風通しの悪いところなどは40度くらいに簡単に達してしまう。もちろん、こういった電子機器の動作温度は若干余裕を持って設定してあり、これを超えたからといって即座に使えなくなるわけではない。しかし、動作しなくなっても、メーカーの仕様どおりである。
パソコンばかりではない。ネットワーク機器も同様である。ブロードバンド・ルーターなどは、0~40度が一般的である。ネットワーク機器は電源を入れたまま、24時間365日利用できるようにしている場合が多い。そして、パソコンよりも設置環境が悪いはず。猛暑でネットワークが使えなくなるという事態も起こる。
それから、携帯電話の推奨周囲温度は5~35度である。DVDレコーダーなどは5~40度。暑い日、外出から帰ってくると、予約していた番組が録画できていなかった、などということも起こり得る。
頼みの綱であるエアコンも、猛暑には弱い。冷房運転が正常に動作するのは外気温43度程度まで。それ以上、気温が高くなると「保護装置が働き停止することがある」という。
これからの電子機器、電気製品は、低消費電力だけでなく、猛暑対応が必要になりそうだ。熱帯地域向けの耐高温(高湿度)パソコンが国内で販売される日も遠くない?