ITSS(ITスキル標準)のレベル別に見た人材の分布では,ミドルレベル(レベル3,4)の人材が最も多く57.1%を占める。エントリレベル(レベル2以下)の人材は38.3%。ハイレベル(レベル5以上)の人材は,前回より1ポイント多い4.6%--。日経BP,ザ・ネットなどで組織するITスキル研究フォーラムが,Webサイト上で実施中の「第6回ITエンジニアスキル調査」の中間集計(対象者数1320人)は,こんなやや意外な結果になった(図1)。

図1●ITSSのスキルレベル別に見た人材の分布

 1年前に実施した前回調査では,それぞれ46.5%,49.9%,3.7%だったので,大幅に上振れしたことになるのだ。事実とすれば喜ばしいことだが,わずか1年でスキルレベルが大きく高まるとは考えにくい。

 こうなった原因の第一は,中間集計のサンプル数がまだ少ないこと。昨年度の数字は1万人超のデータを集計したものであり,ブレが大きくなった可能性がある。もう一つ,2006年秋に実施されたITSSの改訂(ITSS2.0 2006版)が影響していることも考えられる。今回の調査は,ITSS2.0 2006版に準拠して内容を変えているからだ。いずれにせよ,この点は最終集計報告までにきちんと分析し,結果をお知らせしたい。

 一方,年齢層別にスキルレベルを見た結果が図2である。業務経験があまりないと見られる25歳以下のレベルは1.5。ここをスタートラインにして,経験を積むにつれ着実にレベルは上がり,31歳を過ぎるとレベル3以上になる。レベル判定の基準としてITSSでは業務経験や実績から成る「達成度指標」が重視されることからすると,順当な結果と言っていい。

図2●年齢層別のスキルレベル平均

 ただしこの数字は各年齢層に属する人材のスキルレベルを単純平均したもの。同一の年齢層であっても当然,レベルの高い人も低い人もいる。図には示していないが,25歳以下の89.0%,および26歳から30歳の58.9%はエントリレベルである。31歳を超えるとエントリレベルの割合はぐっと減るが,41歳から50歳の層でもエントリレベルの割合は20%を超える。読者の皆さんが同じ年齢層のエンジニアの中でどのレベルなのか,ぜひ調査への協力を兼ねてチェックして欲しい

 職種別のレベル平均も紹介しよう(図3)。ITSSで定義されている11職種の中でスキルレベルが最も高かったのがコンサルタントで,レベルは3.9に達した。11の職種の中で唯一,ハイレベルの割合(22.4%)がエントリレベルのそれ(18.4%)を上回ったのがこの職種である。これにマーケティング(レベル3.8),セールス,アーキテクト,エデュケーション(いずれも3.5),プロジェクトマネジメント(3.4)と続く。差はわずかであり,最終集計で逆転する可能性も高い。

図3●職種別のスキルレベル平均

 逆に,スキルレベルの平均が最も低くなっているのがITサービスマネジメント。レベル平均は2.5と,アーキテクトやプロマネに比べ1レベルの差がある。今回の中間集計では職種ごとの平均年齢は調べていないが,おそらくITサービスマネジメントには経験や実績が少ない若手の人材が配されていると見るのが妥当だろう。

 もう一つ,年収別のスキルレベルを,図4に示した。900万円~1000万円未満のところで少し落ち込みがあるが,全体としてみると,おおむねスキルレベルと年収に正の相関関係があることが分かる。「スキルが高い=経験・実績を積んでいる=年齢が高い」といった,一般的な傾向からすると当然の結果といえるが,では若くてレベルが高い人と年齢が上でレベルが低い人を比べるとどうなるのか。この点はさらに調査データを積み増した最終結果の分析時に報告したい。

図4●年収別のスキルレベル平均

 最後に,ITエンジニアの男女比率も示そう。中間集計段階の1320人に占める女性の割合は12.5%だった。職種別ではエデュケーションが43.6%,セールスが18.6%,アプリケーションスペシャリストが17.6%という順で,女性比率が高くなっている。なお本調査は7月末まで実施する予定である。自分のスキルレベルが回答完了後,即座に分かるうえ,今回は働きがい調査や文章力診断なども用意した。まだの方にはぜひ協力をお願いしたい。