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記者の眼

NTTが推進するNGN,“コップの中の祭り”では?

武部 健一=ITpro 2007/06/07 ITpro

 昨年来,国内の通信業界では「NGN」(Next Generation Network)の話題で持ち切りだ。

 NTTグループは昨年12月からNGNの商用化に向けたフィールド・トライアルを開始。それに合わせて東京と大阪に,「NOTE」と名付けたNGNのショールームを開設した。旧電電ファミリーの一角であるNECも,この5月末にNGNのショールームをオープンしている。1年近く前の記事で恐縮だが,日経コンピュータ2006年7月10日号のインタビューで,NECの矢野薫社長は「IPネットワーク上に,固定/携帯電話,放送,企業ネットワークなどあらゆるサービスを載せるNGNは,数十年に一度の技術的な変革」と述べている。筆者にはインターネットの登場よりも大きな変革だとはとても思えないのだが,とにかくNECのNGNに対する意気込みは大変なものだ。

 これだけ盛り上がっているNGNであるが,不思議なのは一歩でも通信業界の外に出ると,極端に言えば「誰もNGNを話題にしていない」という印象を受ける点だ。ひょっとしてNGNは,通信業界だけの「コップの中の祭り」ではないのか。

 例えば先日,筆者はある超大手のインターネット・サービス企業の方と話をした際,「NGNに興味ありますか?」と尋ねた。だが,相手の反応は非常に鈍いものだった。どうやらNGNがNext Generation Networkの略だと,すぐには分かってもらえなかったようだ。

 客観的なデータも示しておこう。MM総研が昨年12月に発表した調査結果によれば,企業ユーザーにおけるNGNの認知度はわずか11%だった。NGNを推進する通信業界にとってはかなり厳しい数字だろう。

 NGNは「交換機による既存電話網を,IP技術で置き換える次世代ネットワーク」という意味においてはまったく有用で,通信事業者にとっては不可欠なものだ。IP化することで,コスト削減を見込めるし,「FMC」(Fixed Mobile Convergence)と呼ばれる固定電話と携帯電話の連携を期待できる。

 しかし,最近の議論のように,「NGNの上にさまざまな上位レイヤーのサービスやアプリケーションが登場する」と言われると首を傾げざるを得ない。冒頭で紹介したNGNのショールームを含め,現時点でNGNのアプリケーションとして提示されているものの多くは,現行のインターネットと,IP-VPNや広域イーサネットといった企業向けの閉域網サービスで実現できるものだ。

 NTTの和田紀夫社長は日経コミュニケーション誌2007年1月1日号のインタビューの中で,「NGNで提供する予定のサービスでは,どのようなものに期待しているか」との問いに対し,「高品質IP電話の音質…(中略)…帯域が2倍なので音声品質が非常に高い。…(中略)…映像でも大容量の映像が画面上にすぐ出てくると同時に,それに関連するリンク情報も表示されて,クリック一つでリンク先に飛んでいくこともできるようになる。今のインターネットはベストエフォートだから情報量が多過ぎると止まったり,音声や画像が飛んだりする現象が起こり得る」と説明している。

 だが,高品質IP電話は「Skype」などが既に実現しているし,大容量の映像についても「Stage6」のようなサービスがインターネットには出現している。「インターネットはベストエフォート」はその通りだが,実際に動作が止まり,インターネット以外の回線が必要だと考えるケースは少ないのではないだろうか。NTTレゾナントと三菱総合研究所が昨年11月に発表した「生活インフラサービスの満足度調査」によると,現行FTTHサービスの満足度は極めて高い。総合的には85.6%のユーザーが,速度だけを見ても55.6%のユーザーが満足しているとの結果が出ている。

 NGNの最大のウリは,インターネットでは決して実現できない動的なQoS(Quality of Service)機能で,同機能を使えば高画質のビデオ会議(テレビ電話)を実現できると説明されている。しかし,ビデオ会議においてQoSがどこまで必要かは少々疑わしい。現在主流の動画コーデック「H.264」はかなり優れたもので,「一般的なビデオ会議では384kビット/秒で十分にきれい。768kビット/秒を超えると,人間の目にはそれほど違いが分からなくなる」(あるメーカーのビデオ会議システムの専門家)。動画がHD(High Definition)画質になればビットレートは上がり(1080pの解像度で3M~4Mビット/秒程度の帯域になる),QoSを生かせるようになるだろうが,企業はまだしもHDのビデオ会議(テレビ電話)を必要とする個人ユーザーはまだ限られるだろう。

 QoSを使った高品質映像のストリーミング配信サービスも,NGNの重要アプリケーションと見なされている。だが,ダウンロードではなく,ストリーミングにこだわるユーザーがどの程度いるのだろうか。インターネットの父と呼ばれる米Googleのヴィントン・サーフ副社長は「ストリーミングは時代遅れのモデルに映る。リアルタイム性は一般に言われるほど求められていない…(中略)…現在のテレビ放送で生放送が占める割合はわずか15%に過ぎない。残りの85%は録画番組だ。録画番組であれば,ダウンロードして再生する形態が可能なはず。子どもたちが音楽データを『iPod』にダウンロードして再生しているようにだ」(日経コミュニケーション2006年10月15日号)と述べている。

 率直に言って,QoSや高度なセキュリティといったインターネットにはない機能を生かしたNGN上の上位レイヤー・サービスで,広範な支持を得られるものはあまり登場しないであろうと筆者は予測する。HD画質のビデオ会議(テレビ電話)以外,多くのサービスはインターネットで十分のはずだ。HD画質のビデオ会議ですら,やってみたらインターネットでも大丈夫だった,という可能性もあり得る。NGNはIP化された電話網としてその役割を淡々と果たすとともに,企業や医療機関向けWAN網,一部ミッション・クリティカルなコンシューマ向けサービスで地道に使われてゆく存在にとどまるだろう。

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