写真1●Windowsロゴ・プログラムの取得状況について説明するグラフ。左がCertified for Windows Vistaロゴ,左下がWorks with Windows Vistaロゴ。Works with Windows Vistaロゴはモノクロで極めて地味な外観
写真1●Windowsロゴ・プログラムの取得状況について説明するグラフ。左がCertified for Windows Vistaロゴ,左下がWorks with Windows Vistaロゴ。Works with Windows Vistaロゴはモノクロで極めて地味な外観
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 2007年5月15日に米Microsoftが米ロサンゼルスで開催したWindows向けハードウエア開発者会議「Windows Hardware Engineering Conference(WinHEC 2007)」の基調講演で,Bill Gates会長をはじめWindows Product Management担当副社長のMike Nash氏などが再三,言及したのが,「Windows Vistaロゴ・プログラム」(写真1)である。テクニカル・セッションでも,Windows Vistaロゴ・プログラムに関するセッションが多く設けられた。今後,マイクロソフトがホーム・ネットワーク市場をターゲットとするにあたって,Certified for Windows Vistaロゴ・プログラムの普及が鍵になるからである。

 Windows Vistaロゴ・プログラムとは,Windows Vistaに対応しているソフトウエア/ハードウエアに対して,第三者検証機関が認定を与えるプロセスのこと。ロゴには,基本性能と互換性を保証するbasicロゴと,Vistaの機能を利用した高いセキュリティやパフォーマンスを保証するpremiumロゴの二つのレベルがある。当然,premiumロゴのほうがハードルは高い。例えば,周辺機器やソフトウエアに対してはbasicレベルが「Works with Windows Vista」ロゴに,premiumレベルが「Certified for Windows Vista」ロゴになる。MicrosoftはWindows XPでも「Designed for Windowsロゴ・プログラム」を実施していたが,Windows Vistaロゴ・プログラムは基本的にそれよりも厳しくなっている。

 WinHECの基調講演で行ったホーム・ネットワーキング設定のデモでは,ビデオカメラやルーターといった家庭内のデジタル製品を,キーボード操作などを行うことなく簡単に接続して利用できることを実演した。このデモでは「Windows Rally」と呼ぶPlug and Playの拡張版とも言うべきVistaの機能を利用しているのだが,こうした機能を誰でも扱えるようにするには,サードパーティ製品に対し,Microsoftが規定する仕様に忠実な実装が求められる。それを保証するのがCertified for Windows Vistaロゴというわけである。

 Microsoftによると,Windows Vistaロゴ・プログラムは,ユーザーやベンダーにもそれぞれメリットがあるという。ユーザーにとっては,Certified for Windows Vistaロゴを受けたソフト/ハードを利用すればVistaの機能をフルに活用できるほか,デバイス・ドライバなどの品質が安定するのでシステムの安定性や信頼性,互換性が増す。ベンダーのメリットは,Certified for Windows Vistaロゴを製品に付けることによって品質をアピールし,販売上の優位性を持つことができるというもの。ベンダーには,Microsoftが用意するマーケティングや販売上の特典もある。

 ただし,Certified for Windows Vistaロゴ・プログラムに限らないが,こうしたプログラムを軌道に乗せるためには,知名度や対応製品の種類が臨界点を超えることが必要になる。知名度が低く選択可能な製品が少なければ,ユーザーにとって魅力が乏しいものになる。ユーザーに対する優位性が得られないのであれば,わざわざロゴを取得しようとするベンダーは少なくなってしまう。

 ロゴを取得するための仕様を厳しくするほどMicrosoftにとってメリットがあるが,ベンダーのメリットが小さくなる。ベンダーが自社製品に求めるものは,ロゴ・プログラムが求める信頼性や安定性,互換性だけではない。他者に対する競争優位性を確保するためには,自社製品の革新性やある程度の低価格が不可欠である。ロゴ・プログラムの仕様に沿った実装は,革新的な技術の導入を阻む可能性があるし,ロゴを取得するのに必要なプロセスはコストを押し上げる。頻繁にバージョンアップする製品であれば,コストへの影響はなおさらである。既存製品ではロゴを取得せずに,新製品への移行を促すベンダーもいる。Microsoftとベンダーの間でどのように折り合いを付けていくかが,ロゴ・プログラム普及の鍵になる。

 また,ユーザーの間でCertified for Windows Vistaプログラムの知名度は,現時点ではまだ高いとはいえない。加えて,Vistaの目玉機能の一つとされる「Windows ReadyBoost」に対応するフラッシュ・ドライブに対しては,ロゴ・プログラムの開始は2007年6月以降になるなど,ロゴが購入の目安にならない製品もある。

 マイクロソフト日本法人は,Certified for Windows Vistaプログラムの知名度を高める取り組みとして,4月2日~6月30日にかけて「ロゴでGET! キャンペーン」を実施している。Certified for Windows Vistaロゴ・プログラムの協賛企業のホームページに置かれたロゴを集めると抽選で,商品券や賞品を提供するというものである。このキャンペーンでロゴの知名度が爆発的に上がるわけではないが,こうした取り組みを地道に進めていく必要があるだろう。