開発支援ツール徹底調査を開始してから,3週間あまりが経過した。おかげさまで,3月29日までに約1300人もの方々から回答をいただいた。お忙しい中でのご協力,ありがとうございました。

 これまでご協力いただいた方々への御礼をかねて,現在までの調査結果を簡単ながら報告したい。なお,調査は4月半ばまで実施するので,「中間報告」という位置づけになる。ご紹介するデータは,調査を開始してちょうど3週間目に入った3月27日時点のものである。

 この調査は,(1)「分析/設計」「プログラミング」「単体テスト」「機能テスト」といった,システム開発プロジェクトの各フェーズで使われるツールと,(2)「変更/構成管理」「プロジェクト管理」といったシステム開発プロジェクトのマネジメント作業を効率化するためのツールを対象に,利用実態を把握することを狙いとしている。調査対象のフェーズ,管理作業は合わせて10分野ある。

 その10分野のなかで,「開発支援ツールを使っている」という回答が最も多かったのが,プログラミング・フェーズだった。そこでまず,プログラミング・フェーズにおける結果を見ていこう。

プログラミング・ツールのトップはVisual Studio

 プログラミング・フェーズでのトップは「Microsoft Visual Studio」だ。「プログラミング・フェーズで開発支援ツールを使っている」と答えた回答者のうち39.4%が,主に使っているツールとして,Microsoft Visual Studioを挙げている(図1)。

図1●プログラミング・フェーズで利用されている開発支援ツール(有効回答数312)
図1●プログラミング・フェーズで利用されている開発支援ツール(有効回答数312)

 続いて多かったのがオープンソースの統合開発環境である「Eclipse」で26.0%。上記2ツール以外は10%未満となっていることから,この分野では,Microsoft Visual StudioとEclipseが2強と言えそうだ。

 中間報告をまとめる前,記者は「プログラミング・フェーズでは,Eclipseが1位ではないか」と予想していた。以前,ある大手システム・インテグレータに取材したところ,「当社が担当する大型の開発案件のうち大半がJava」と担当者が話していた。記者はその話を思い出し,「Javaの開発環境として広く浸透しているEclipseが1位なのではないか」と考えた。

 ところがMicrosoft Visual Studioが10ポイント以上,Eclipseを上回った。大型案件に限らず開発案件全体で見ると,Microsoft Visual Studioの方が普及しているのかもしれない。

 なお今回の調査では,利用している開発支援ツールを,「オープンソースまたは無償のツール」「市販のツール」「(ITエンジニアが)所属する会社,1次請け会社などが独自開発したツール」の3種類に分けている。そこでプログラミング・フェーズで利用されているツールを,この3種類に分けて調査結果をまとめ直してみた。

 すると,市販のツールが全体の6割を占めることがわかった(図2)。オープンソースまたは無償のツールは32.1%にとどまった。図1でEclipseが全体の28.0%を占めているので,プログラミング・フェーズにおける「オープンソースまたは無償のツール」のほとんどが,Eclipseであると言える。

図2●プログラミング・フェーズで利用されている開発支援ツールの種類(有効回答数312)
図2●プログラミング・フェーズで利用されている開発支援ツールの種類(有効回答数312)

フェーズで異なる「オープンソース」「市販」「独自開発」の割合

 これまでは,プログラミング・フェーズに絞って調査結果を見てきた。これからは視点を変えて,フェーズ間で結果を比較してみよう。

 「分析/設計」「単体テスト」「機能テスト」の三つのフェーズを対象に,フェーズごとに「オープンソースまたは無償のツール」「市販のツール」「所属する会社,1次請け会社などが独自開発したツール」の割合を示したのが図3-1図3-2図3-3である。

図3-1●分析/設計フェーズで利用されている開発支援ツールの種類(有効回答数=129)
図3-1●分析/設計フェーズで利用されている開発支援ツールの種類(有効回答数=129)

図3-2●単体テスト・フェーズで利用されている開発支援ツールの種類(有効回答数=118)
図3-2●単体テスト・フェーズで利用されている開発支援ツールの種類(有効回答数=118)

図3-3●機能テスト・フェーズで利用されている開発支援ツールの種類(有効回答数=64)
図3-3●機能テスト・フェーズで利用されている開発支援ツールの種類(有効回答数=64)

 三つのフェーズの結果を見比べると,3種類のツールの割合がそれぞれ異なっていて興味深い。まず分析/設計フェーズでは,市販のツールが7割に達することが分かった。これはプログラミング・フェーズにおける市販ツールの割合を上回っている(図3-1参照)。

 図3-2の単体テスト・フェーズを見てみると,「オープンソースまたは無償ツール」が44.9%とトップになっている。ITエンジニアが個々で実施する単体テストの作業の特性から,個々のエンジニアが導入しやすい「オープンソースまたは無償ツール」が広く使われるのだろう。

 機能テスト・フェーズで意外だったのは,「所属する会社,1次請け会社などが独自開発したツール」の占める割合が多かったことだ(図3-3参照)。トップである市販のツール(45.3%)の次に多い36.0%だった。

 記者は,機能が充実した製品が出そろっていることもあり,市販のツールがもう少し多いのではないかと思っていたが,調査を通して「機能テスト・フェーズ以降は,開発対象となるアプリケーションに依存するため,市販のツールは適用しづらい」といった声をいただいた。機能テスト・フェーズでは,開発対象となるアプリケーションに見合ったツールを独自開発している現場が少なくないようだ。

「日本のIT現場」の実態把握にご協力ください!

 これまでの皆様のご協力により,IT現場における開発支援ツールの利用実態がおぼろげながら見えてきた。だが,「利用実態の輪郭」をもっとはっきりさせたい。そして,「日本のIT現場では,このフェーズでこのツールが使われている」という確固とした情報を提供したいと思っている。提供する情報は,プロジェクト立ち上げや品質向上を図るためにツールを選定する場面で,役立てていただけるものと確信している。

 利用実態の輪郭をはっきりさせるためには,さらに多くのITエンジニアの皆様の協力が不可欠だ。まだ調査に参加していない方はぜひ仕事の合間に調査サイトを訪ねていただきたい。すでに調査にご協力いただいた方も,ぜひお知り合いにお声かけしていただき,さらなるご協力をお願いしたい。

 最終的な結果は,調査終了後にITproや,日経SYSTEMSの6月号(5月26日発行予定)で紹介する予定である。ご協力をお願いいたします。