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記者の眼

IT業界の“イジメ”の実態を紹介

松浦 龍夫=日経SYSTEMS 2007/02/27 日経SYSTEMS

 前回の記者の眼「IT業界の“イジメ”に切り込む」で実施したアンケートでは,411人もの方から回答を頂きました。どの回答も「不当な要求や対応の実態」の一端を表す貴重なご意見でした。ありがとうございました。

 今回はそのアンケートの結果と不当な要求や対応の実態がどのようなものかを紹介します。

大半のケースが下請けイジメ

 アンケートではまず始めに,優位な立場を利用した不当な要求・対応を経験したことがあるかどうかを尋ねました。結果は,59.1%という過半数の方が「不当な要求・対応を受けた」と回答されました。

 続いて,「不当な要求・対応」がどのような構図(立場の違い)で発生したのかを尋ねました。一番多かったのは元請け会社の社員(またはユーザー企業の社員)と下請け会社の社員という構図でした(全体の41%)。その中で声として一番多かったのが,「ユーザー企業からトラブルの責任を一方的に押し付けられる」というものでした。ここからは実際の声をいくつか紹介します。

ケース1:
 ユーザーの仕様検討不足をベンダーの我々だけの責任だと決めつけ,追加工数を出さず現状の工数や期間で吸収するように強要。ユーザーからは一切責任を取る態度は見えない。これは一度や二度ではなく,発生の都度定常的に行われている。

ケース2:
 あからさまな仕様変更時でも,「要件は変えていない。実装はあんたらベンダーが考える事」と取り合ってくれない。 結果,お金や納期が圧迫され,我々開発チームは心身共にボロボロになる。

ケース3:
 ユーザーの情報システム部が機能しておらず,契約時に取り決めたユーザー側の責任作業にミスがあっても,こちら(ベンダー)の責任だと非難され,それを理由に検収をしてもらえなかった。相手の社長はさらにひどい。機能説明会で自社の社員が居眠りをしているのを見つけると,「お前らが分かりやすく説明していないから,うちの社員が居眠りする。こんなのでは検収しない」と恫喝された。

 これらはユーザーの責任感の欠如と,ベンダーをパートナーではなく,単なる“下請け”としか考えていないことが原因だと言えます。この構図は,元請け会社のベンダーと下請け会社でも見られます。続いては,苦しむ下請け会社の声をお伝えします。

ケース4:
 プロジェクトのトラブル対応のため,24時間体制で作業していた。一人,また一人とほぼ毎日のようにこちら(下請け会社)の社員が倒れていく状況。元請け会社のプロジェクトマネージャ(PM)が下請け会社の責任者に,倒れたメンバー分の補充を要求している現場を目撃しました。当時のPMが言った言葉で忘れられないのが,「とにかく数を用意しろよ!」でした。人扱いしていませんでした。

ケース5:
 たとえば金曜日にシステム障害が発生すると,元請け会社の社員は「週明け月曜日までにお願いします」と要求する。土日に出勤してやれということです。また,元請け会社の社員が土日にテストをする場合がある。その際も,「何かあったときにすぐに対処できるように現場で待機していてください」とスケジュール外の作業をさも当たり前に強要する。

お金にまつわる強要も多い

 ひどい扱いだけでなく,力関係を背景に,費用を支払ってもらえない,単価引き下げを強要されるという体験談も多くありました。

ケース6:
 元請け会社と我々(下請け会社)の間では,プロジェクトについて契約済みだったが,元請け会社がユーザーと未契約のまま6カ月もプロジェクトを実行した。しかし,元請け会社とユーザーが折り合えず,プロジェクトが頓挫。そのため,下請けの我々にも元請け会社からお金が支払われなかった。支払いを求めると,今後の付き合いをちらつかせながら今回の契約破棄を迫られた。最後は会社対会社の話になり,押し切られた。

ケース7:
 突然元請け会社のPMが,超過時間分の単価を引き下げると言ってきた。明らかにプロジェクトの予算が足りなくなってきたことが理由だったが,「単価引き下げは,あなたの生産性が低いからだ」と一方的に決めつけられた。

ケース8:
 同僚が「脅迫めいた一方的な値下げ要求」もしくは「ここで開発したプログラムは他社にも売れるからタダにしろ」という無茶な要求をしていました。ベンダーが些細なミスを犯した際に,開発会社の親会社に密告して担当者を左遷させるなど,同僚ながら恐ろしいと感じました。

 無償労働の要求や単価引き下げは,ベンダーからすると到底飲めるものではありません。元請け会社がこのような行動に走る理由は様々です。私が過去に取材した大手ベンダーのPMは,東京本社から地方支店に異動した際に,下請け会社に無償労働を要求したそうです。なんとしても本社に返り咲くために利益を上げなければいけない,という理由でした。単価引き下げを要求した別の元請け会社社員は,「社内の基準単価が低くなったから。相手の経営うんぬんではなく,基準単価を守ることに必死だった」と話します。システム作りは,人と人のコミュニケーションやITエンジニアのモチベーションが大きく影響することを知らないようです。

 一方で,下請け企業側の問題を指摘する声もありました。まずユーザーからの声を紹介します。

 システム障害が発生している状況で,「徹夜だろうがなんだろうがとにかく直せ」と運用委託先の担当者に仕事を続けさせた。管理者の交代は助言したが,相手先の上層部からも見放されたようで,最後までその担当管理者が面倒を見る,という場面を幾度も経験している。これは相手先組織の脆弱さに尽きる。本来は個人の頑張りで対応させてはいけないはずだが,下請け企業では組織がそれに付いてきていない。

 続いて,下請け企業社員自らの声を紹介します。

 ユーザーが一方的な要求をするのは,ユーザーから見て,その金額を支払っても我々を使いたいと思えるほどのサービスを提供できていないから。原価削減努力をするより,下請けに支払う金額を下げる方が簡単という意識を持たせてしまっている。

 最後に単価の引き下げを撤回させたという下請け企業社員の方の経験談もありました。示唆に富んでいる事例として紹介します。

 (契約破棄を匂わせながら元請け会社から値下げ要求を受けた際に)パートナーの立場として無理な値下げを迫れば,下請けの事業が成立しなくなる。そうなれば,プロジェクト半ばでの下請け撤退や,人員減(担当者の退職など)を招き,継続した開発やサポートができなくなる。結果として自身の首を絞めることにならないか,とねばり強く説得した。元請け会社も最後には納得し,値下げ要求は撤回された。

 これらが今回のアンケートから明らかになった不当な要求や対応の実態です。日経SYSTEMSではアンケートにご回答いただいた読者の方への取材を始めています。記者のライフワークとして,取材を通じて不当な要求や対応をはね返す良策がないか,ITエンジニアが幸せに仕事をこなせる方法がないかを丁寧に探してきます。結果はこの記者の眼や,日経SYSTEMS本誌で紹介していくつもりです。

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