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記者の眼

著作権保護期間について「延長賛成派」の意見を聞いた

神近 博三=ITpro 2006/12/14 ITpro
パネルディスカッションに参加している劇作家・演出家の平田オリザ氏(左),漫画家の松本零士氏(中央),小説家の三田誠広氏(右)
パネルディスカッションに参加している劇作家・演出家の平田オリザ氏(左),漫画家の松本零士氏(中央),小説家の三田誠広氏(右)
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 「著作権保護期間の延長問題を考える国民会議」のシンポジウムが12月11日,東京・青山のウィメンズプラザで開催された。以前の記者の眼でも紹介したことがあるが,同会議は著作権保護期間の延長問題について,広く議論を呼びかけることを目的に発足した団体である。

 欧米諸国の多くは,1990年代にかけて著作権を構成する財産権の保護期間を,「作品の公表から著作権者の死後70年間」へと延長している。これを受けて日本でも,著作権の保護期間を現行の著作権法が規定する「作品の公表から著作権者の死後50年」から,欧米並みの「死後70年」に延長しようという動きがある。

 シンポジウムでは延長賛成派,反対派の双方が参加し,お互いの主張をぶつけ合った。その様子は近々,同会議のホームページにおいて,ストリーミングの動画形式で公開される予定である。賛成派,反対派の主張を直接聞いてみたい方は,ぜひ,そちらにもアクセスしてもらいたい。

賛成派の三田誠広氏と松本零士氏が参加

 個人的に興味があったのは,著作権保護期間の延長賛成派として,小説家の三田誠広氏と漫画家の松本零士氏が参加していたことだ。「著作権保護期間の延長問題を考える国民会議」の発起人の大半は,保護期間延長の反対派である。そうした団体のシンポジウムに参加して,彼らがどういった主張を展開するのかを聞いてみたかったのだ。

 著作権の利用者側の立場にあることの多い記者にとって,延長反対派の意見は理解しやすい。「著作権の保護が創作者の意欲を鼓舞する」ことはあるだろうが,なぜ死後50年では不十分で,死後70年に延長しなければならないのか。延長期間の過剰な延長は,著作物が“古典”として文化の発展に寄与することを妨げるのではないだろうか。

 それに,インターネットが登場したことで,著作物の頒布コストは劇的に低下しつつある。このため,以前なら商業目的でしか流通できなかった作品が,非商業ベースで入手できるようになっている。著作権の保護期間を過ぎた作品をネット上で無償公開する電子図書館「青空文庫」も,そうした取り組みの一つだ。著作権保護期間が20年延長されると,単純に考えて,今後20年は青空文庫に作品が新規登録されなくなる。万一,過去の作品にさかのぼって保護期間が20年延長されると,「青空文庫に登録されているおよそ6000の作品のうち,半分は公開できなくなる」(シンポジウムのパネルディスカッションにおける青空文庫呼びかけ人の富田倫生氏の発言)という。

 最近では,YouTubeやP2Pソフトといった著作物の頒布コストを下げる新しいサービスやテクノロジも登場している。現時点ではこれらのサービス/テクノロジは著作権侵害を引き起こすとして,著作権者側から敵視されることが多い。実際,2006年12月13日にはP2Pソフト「Winny」の開発者が,京都地方裁判所において著作権法違反幇助(ほうじょ)の罪で罰金150万円の有罪判決を受けている。だが,著作権が切れた作品,あるいは保護期間中の作品でも,商業ベースに乗らないと判断されたかなりの作品が入手困難になっている。著作権を保護しながらこれらのサービス/テクノロジをうまく利用する仕組みができれば,「この法律は・・・(中略)…著作権者等の権利の保護を図り,もって文化の発展に寄与することを目的とする」(著作権法第一条)という著作権法の本来の主旨にも適うはずだ。

 著作権から利益を得ている映画配給会社やレコード会社などの営利企業が,保護期間の延長を求める理由は理解できる。営利企業にとっての著作権は一種の“資産”であり,保護期間は長ければ長いほどいい。しかし,三田氏や松本氏のような個人レベルで,保護期間の延長を求める理由は何なのだろうか?

死後50年では著作者の親族はまだまだ健在

 シンポジウムでは立教大学法学部の上野達弘助教授の基調講演に続いて,延長賛成派の三田氏と延長反対派である弁護士の福井健策氏が講演した。三田氏の主張を要約すれば,「保護期間が死後50年では,作家が若死にすると,著作権が切れる時点で奥さんやご子息がご健在な場合が多い。だから死後70年に延長すべきだ」ということになる(講演内容は同会議Webサイトで公開される予定)。「(若死にした太宰治の著作権が切れそうになったころ)未亡人や娘の作家・津島佑子さんはどちらもご健在だった。津島さんは今後40年は生きるでしょうから,30年以上も著作権が切れた状態で生きていくことになる」(三田氏)。

 シンポジウム後半では,パネルディスカッションが開かれた。参加者は延長賛成派の三田氏と松本零士氏,反対派からは青空文庫呼びかけ人の富田氏,評論家の山形浩生氏,劇作家・演出家の平田オリザ氏,それに経済学者として「保護期間延長のメリット・デメリットを実証的に検証しよう」と提言している田中辰雄慶応大学経済学部助教授である。司会は「中間派」として,中村伊知哉慶応大学教授/国際IT財団専務理事が担当した。

 このパネルディスカッションでも,松本氏から「(年若くして倒れた)先人たちの遺族から『私の主人の著作権はあと数年で切れます』と訴えられたら,どんな気持ちがすると思いますか」という発言があった。平均的な寿命を考えると,大半の作家・漫画家の遺族にとっては死後50年の保護期間で十分に思える。しかし「著作権は個人の権利であり,個人の権利を平均値で語ることはできない。慎重な議論というが,議論しているうちに著作権が切れる遺族が出てきてしまう」(三田氏)というのが,延長賛成派の主張である。

 一方,延長反対派は,保護期間延長が「文化の発展」に対して,いかに害があるかを主張する。先に紹介した富田氏の発言もその1つ。ただ,賛成派の主張の根拠が「遺族の心情」である以上,反対派がいかに実証的なデータを用いて主張しようとも,いまいち議論が噛み合わない印象があった。平田オリザ氏から,三田氏や松本氏の発言に対して「著作権保護期間が(死後)50年で切れることは事前に分かっており,保護期間内に財産を形成すればよいこと。遺族の心情は私も理解するが,それはやはり根拠が薄い」という反論があったぐらいで,平田氏に対する延長賛成派からの再反論は無かった。

 三田氏や松本氏の主張に賛成するわけではないが,それでも,こうしたシンポジウムに参加して意見を表明したこと自体は尊敬に値するだろう。延長賛成派にとっては,反対派からの意見を受け流しながら,なしくずし的に著作権法が改正されることがベストシナリオだからだ。松本氏は,延長賛成という立場のまま,同会議発起人にも新たに名を連ねている。

 パネルディスカッションの最後には,会場の福冨忠和ディジタルハリウッド大学教授(発起人の1人)から「保護期間延長に反対の人は,皆さん子供をお持ちじゃないから未来に対するイメージが(子供をお持ちの方と)違う。少なくとも,このパネルディスカッションに参加している皆さん(山形氏,平田氏,富田氏)はそうですよね」という主旨の発言があった。個人的には,この日の延長賛成派の発言の中で,最も説得力のあるものだった。

■変更履歴
「(若死にした太宰治の)未亡人や娘の作家・津島佑子さんはまだまだご健在」としていましたが,三田氏の発言は,太宰治の著作権保護期間が切れそうになった時点での話であり,著作権が切れた時点では未亡人は死去されていました。お詫びして,「(若死にした太宰治の著作権が切れそうになったころ)未亡人や娘の作家・津島佑子さんはどちらもご健在だった。」に訂正します。 [2006/12/19 11:57]
■変更履歴
本文の最後から6番目の段落で「弁護士の福井健索氏」としていましたが、正しくは「弁護士の福井健策氏」です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2013/8/1 10:40]

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