東西NTTのひかり電話は,“従来の電話(加入電話)の安い代替サービス”という点を強調して販売されてきた。私自身,自宅で従来使っていたコードレス電話機を,ひかり電話対応ルーターのアナログ電話ポートに接続して使っていた。しかし,考えてみれば,ひかり電話はIP電話である。SIP(Session Initiation Protocol)という標準プロトコルを使っており,ソフトフォンなどのIP電話端末を利用できるはずである。
企業向けのIP電話システムでは,いろいろな機能を実装するため,独自にSIPを拡張している。しかし,家庭では電話を発着信できればとりあえず事足りる。SIP対応のIP電話端末であれば,つながる可能性が高い。パソコン上の電子電話帳から簡単に電話をかけられるだけでも便利である。実際にソフトフォンをひかり電話に接続,使ったりして,家庭やSOHOでのひかり電話の可能性を考えてみた。
いろいろな試みがなされている
インターネット上には,ソフトフォンやフリーのIP-PBXである「Asterisk」などをひかり電話に接続するための情報が数多く流れている。ひかり電話にAsteriskを接続し,そこにさまざまなIP端末をつないで活用する,あるいは楽しむユーザーも多い。しかし,AsteriskのためにLinuxから導入するというのは,ちょっと敷居が高い。もっと手軽にIP電話端末を利用する方法はないだろうか。
そこで,まずソフトフォンをひかり電話につないでみた。このとき,テクニカルライターの清水 隆夫氏のブログ「RT-200KIとX-Lite」が参考になった。
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写真1●RT-200KIの設定画面 IP端末1の設定。ここで,ユーザ名やパスワードなどを設定する。 [画像のクリックで拡大表示] |
ひかり電話でソフトフォンを利用する場合,ルーターは「RT-200KI」または「RT-200NE」が必要である(どちらになるかは地域によって決まる)。外線2本が使える「ダブルチャンネル」や複数の電話番号が使える「マイナンバー」を契約すれば,このルーターがレンタルされる。RT-200KIはSIPプロキシ機能を備え,アナログ電話機を2台,IP端末を5台,合計5台まで接続できる(写真1)。
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写真2●CounterPath Solutionsの「X-Lite」 | |
しかし,我が家にあるのは,「WBC V110」(Web Caster V110)というルーター。ダブルチャネルなどが開始される以前に契約し,これらの付加サービスを利用していなかったからだ。早速,NTT東日本に電話して,RT-200KIに取り替えてもらった。
ソフトフォンには,米CounterPath Solutionsが提供するフリーウエア「X-Lite」を使った(写真2)。設定は,X-Lite上で右クリックすると表示されるメニューから「SIP Account Settings」を選ぶ。アカウントを追加(Add)すると,設定画面が表示される。前述の清水氏のブログを参考に,写真3の赤枠のなかを設定する。
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写真3●X-Liteの設定 赤枠のなかの項目にデータを入力する。 |
ここでの設定は,RT-200KIに合わせる必要がある。「User name」=「内線番号」「Password=パスワード」「Authorization user name」=「ユーザ名」「Domain=RT-200KIのLAN側IPアドレス」を入力する。
「接続は簡単」のはずだったが・・・
これでつながると思い,X-Liteの画面を見つめていたが,RT-200KIに登録できないというエラー・・・。設定を確認したが,問題はなさそうである。もしかしたらと思い,パソコンをRT-200KIに直接接続したら,問題なく登録でき,電話もかけられた。実は,パソコンは,RT-200KIをLANポートに接続した無線LANルーターにつないでいた。ここに問題があるようだ。
この問題はぜひ解決したい。このままではノート・パソコンを無線LAN経由で接続できないし,無線IP電話機も利用できなくなるからだ。
そこで,プロトコル・アナライザを使い,やりとりするパケットを調べてみた。使用したのはフリーウエアの「Packetyzer」や「ethereal」。パケットを見た瞬間,わかった。原因はたわいないことであったが,恥をしのんで記しておく。
SIPプロキシであるRT-200KIとパソコンとの間には,無線LANルーターのNAT(Network Address Translation)機能が介在していたのだ。NATは,セキュリティ向上のため,プライベートIPアドレスをインターネット側に出さないで通信する技術である。NATを越える仕組みがないと,SIPにとってNATは障害物となる。その知識はあったが,うっかりしていた。
無線LANルーターのNAT機能だけを停止しようとしたが,機器の仕様上それができない。そこで,無線LANルーターをアクセス・ポイントとしてだけ使用するように設定してNAT機能を停止,この問題を解決した。