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記者の眼

著作権の保護期間にはなぜ制限があるのか

神近 博三=ITpro 2006/11/14 ITpro
写真1●「著作権保護期間の延長問題を考える国民会議」設立の記者会見
写真1●「著作権保護期間の延長問題を考える国民会議」設立の記者会見
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写真2 劇作家の別役実氏
写真2 劇作家の別役実氏
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 すでに先週のことになるが,東京国際フォーラムで11月8日,「著作権保護期間の延長問題を考える国民会議」設立の記者会見が開かれた(写真1)。

 発起人は著作権の消滅した作品をネット上で無償公開している電子図書館「青空文庫」呼びかけ人である富田倫生氏,評論家の山形浩生氏など計64人。弁護士の福井健策氏とITproで連載記事の執筆をお願いしていたIT・音楽ジャーナリストの津田大介氏が世話人を務めている。

 設立の目的は,著作権保護期間の延長問題について,広く議論を呼びかけることである。

 現在の著作権法では,著作権の保護期間を「作品の公表から著作権者の死後50年まで」としている。これに対して,欧米諸国の多くは1990年代にかけて保護期間を相次ぎ延長しており,「作品の公表から著作権者の死後70年まで」としている。これを受けて,日本でも欧米並みに保護期間を延長しようという動きがあり,早ければ2008年にも保護期間延長の著作権法改正案が国会に提出されると見られている。

 同会議では,「多様な立場の人々が,この大問題についてもっと意見を交わすことが大切」という立場から,シンポジウムの開催などを企画している(詳細はWebサイト参照)。米国ではスタンフォード大学のローレンス・レッシグ教授が原告側として参加した「エルドレッド裁判」など,様々な場で著作権保護期間の延長について議論が交わされてきた。ところが日本では,「欧米が著作権者の死後70年に延長したから,日本もそれに合わせましょう」というだけで,延長に向けた動きが進みつつあるという。この「なしくずし」的な保護期間延長の流れを食い止めることが,当面の目標になる。

 改めて議論を盛り上げようというだけあって,メンバーの大半は「保護期間の延長に反対の立場」である。例えば,劇作家の別役実氏(写真2)は以前,宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を戯曲化しようとして,「権利者のガードがなかなか固くて苦労した」経験がある。戯曲化できたのは,結局,著作権が切れた後になってしまった。このことから「著作権は私的なものでなく公共の財産とするべきものだ。その時期は早いほど良い」と考えるようになったという。

 ただし,活動の目的は反対運動ではなく,あくまで議論を盛り上げることにある。発起人には,「(保護期間延長には)この中では,どちらかと言えばアンチ延長ではない立場」(デジタルハリウッド大学教授の福冨忠和氏)という人たちも参加している。

「文化の発展に寄与する」かを実証的なデータで検証

 著作権法の第一条には,「著作権者等の権利の保護を図り,もって文化の発展に寄与することを目的とする」とある。この第一条を読む限り,法律の目的は「文化の発展に寄与すること」であり,財産権をはじめとする著作権者の権利を保護することは,その手段に過ぎないと理解できる。

 同会議では今後,この「文化の発展に寄与する」という目的にとって適切な保護期間とはどれぐらいなのか,実証的なデータに基づく議論を呼びかけていく。例えば,過去にも何回か保護期間が延長されたことがあるが,「延長の前後で作品の量が増えたか減ったかなどのデータを調べる」(慶応義塾大学経済学部助教授の田中辰雄氏)などの方法が考えられる。さらに,最近では青空文庫をはじめ,著作権の切れた作品をインターネットで閲覧可能にする動きも盛んになっている。議論は,従来の著作権法が想定していなかったこうした動きも踏まえる必要があるだろう。

 問題は,同会議が呼びかける議論に,保護期間の延長賛成派が正面から参加するかどうかである。

 保護期間延長の賛成派には,映画配給会社など営利を目的とする組織がある。これら営利組織にとって,著作権は製造業の工場と同じように収益を生み出す「資産」である。著作権法の目的が「文化の発展に寄与すること」であるため,保護期間延長の理由として「著作権者を保護することは,創作者の意欲をより高める」というタテマエを主張せざる得ない。だが,ホンネの部分では,収益基盤である「資産」が消滅することを何としても防ぎたいはずだ。下手に議論が盛り上がって,延長が先送りになることは避けたいだろう。

 興味深いのは,(営利組織ではない)創作者の中にも,著作権保護期間の延長を求める声があることだ。例えば,日本文藝家協会などが参加する「著作権問題を考える創作者団体協議会」は,2006年9月に保護期間の延長を求める声明を発表している。彼ら創作者たちは,「死後70年」への保護期間延長が創造意欲を高める,と本気で考えているのだろうか?

 的外れとのご批判を受けるかもしれないが,記者は,保護期間の延長を希望している創作者の中には,ひょっとしたら著作権を現金や不動産と同じような「財産」と考えている方もいるのではないだろうか,と想像している。土地や現金などの財産は,相続税の徴収分を除いて,子々孫々受け継がれていく。なのに,著作権を構成する「財産権」は一定期間が経つと消滅してしまう。彼らは内心,それを不満に思っており,自らが作り上げた著作物の財産権が永遠に保護されることを望んでいるのではないか,と。

 実際,先のエルドレッド裁判では,米国の某音楽プロデューサー/アレンジャーが,保護期間延長に賛成する立場から,「なぜ著作権保護期間は永遠ではないのか」というコメントを出しているという。この疑問に対する答えは,「一定期間を経過した著作物については,その権利を消滅させることにより,社会全体の共有財産として自由に利用できるようにすべきであると考えられたためです」(「著作権法入門(文化庁編,社団法人著作権情報センター刊)」より引用)となる。

 だが,考えてみれば,土地の財産権は消滅しないが,土地をどのように利用するかは「公共の福祉に寄与」するように建築基準法の容積率や建蔽率で制限されている。保護期間延長の賛成派は,いっそのこと「欧米並みの保護期間」という相対的な根拠ではなく,「著作権は永遠に保護する。ただし,文化の発展に寄与するように権利を制限する」と主張してみたらどうだろうか。こうした考えがどのように間違っているのか,あるいは少しでも理があるのかどうか,賛成・反対の立場を問わず意見を聞いてみたい気がしている。

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