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記者の眼

YouTubeの著作権問題が放送とネットの融合を推進する?

根本 浩之=日経NETWORK 2006/10/11 ITpro

 米Googleによる買収が米国時間10月9日に発表されたばかりのYouTube。最近では「この動画見て」「これ面白いよ」といったリンク先がYouTubeなっていることも珍しくなくなっている。YouTubeと知らずに見ている人も含めて,かなりの読者はすでにアクセスしたことがあるのではないだろうか。

 念のために確認しておくと,YouTubeとは動画を簡単にアップして,インターネット上に公開できるアメリカのWebサイト。簡単なユーザー登録だけで,自分の作ったビデオなどの動画コンテンツを,世界中の人と無料で共有できる。

 YouTubeの操作はとても簡単で,これが人気を集めている一つの要因といえる。サイトには英文の説明しかないが,ほとんど直感的に操作できる。この使いやすさがうけて,今では1日あたり1億以上のビューがあり,新しいビデオも毎日6万5000本もアップされるまでに成長しているという。

 YouTubeは,確かに便利で楽しい。だが,必ずしも歓迎する声ばかりではない。その代表的なものは,テレビ局や音楽業界などから指摘されている著作権問題である。自分で作ったコンテンツを公開しているならば基本的に問題ないが,テレビの放送やライブの映像を録画してYouTubeに勝手にアップして公開している人たちがいるのだ。これらは日本および米国の著作権法に違反した行為である。

 一部には「YouTubeにアップされているコンテンツの9割以上が著作権を侵害している」と指摘する声もある。筆者が実際に見ている範囲では9割というのは大げさに感じるが,テレビや映画の映像の一部をつなぎ合わせて,そこに勝手に吹き替えを入れたり,字幕を入れたりしてパロディ化しているものは確かに多い。たとえ自分で作った動画でも,BGMとして市販の音楽CDの音源を勝手に使ったりすれば,著作権フリーのCDでない限り,やはり著作権法違反となる。そういったものを含めると,確かに公開されているコンテンツのかなりのものが著作権法に引っかかりそうだ。

 もちろん,YouTube自身も著作権の侵害を公認しているわけではない。YouTubeの利用規約には「著作権法違反の投稿を禁止する」と明記してあり,著作者から抗議があると,すぐ違法ファイルを削除している。こうした迅速な対応により,ディジタルミレニアム著作権法(the Digital Millennium Copyright Act:DMCA)と呼ぶ法律に基づいて,プロバイダとして著作権侵害の責任が及ぶことを回避しているわけだ。

著作権侵害の確認は自動化できない

 日本音楽著作権協会(JASRAC)に聞いたところ,YouTube上に著作権法違反の疑いのあるコンテンツを見つけた場合,最初は米国の法律で決められている手順に従って,FAXでYouTubeへ削除要求の文書を送っていた。YouTubeがJASRACを正式な著作権管理者と認めた今では,削除要求のメールを送るだけで,すぐに該当するコンテンツを削除してもらえるという。それでも,実際には著作権を侵害しているコンテンツすべてには対処しきれないようだ。

 JASRACでは,2006年の6月から8月までの3カ月間で3000以上のコンテンツ削除をYouTubeに依頼したが,これでもまだごく一部だという。コンテンツの内容を見て本当に著作権を侵害しているかどうかの確認は,どんな機械を使っても自動化できない。どうしても人が目や耳で確認する作業となる。そのため,処理できる量に限界がある。

 このような著作権に関する一連の流れを見ると,数年前に音楽データを交換して問題となったNapsterとイメージが重なる。だが,YouTubeはNapsterのときとはどうも様子が異なる。というのは,著作権を侵害されるおそれのあるテレビ局でも,米国のMTVやNBC,日本の東京MXテレビといったところでは,自分自身で番組や音楽のビデオクリップをYouTubeにアップしているからだ。さらに,最近ではONDCP(White House Office of National Drug Control Policy:全米麻薬対策室)という米国政府機関までもが,麻薬撲滅のPRビデオをYouTubeへアップして公開している。ONDCPは,これまでもインターネット上のさまざまなサイトにPRビデオを公開していて,YouTubeへのアップもその一環だと言うが,まるで政府が存在にお墨付きを与えたかのような印象を持ってしまう。

 YouTube自身も,ユーザーID一つについてアップできるデータの合計は100Mバイトまで,1回にアップできる映像は約10分まで,画像のサイズもQVGA,音声はモノラルといった制約を付けて,著作権への侵害を減らすように工夫している。こうした条件が整ってきたことが,著作権者に番組や音楽の一部をYouTubeに公開することはデメリットよりメリットのほうが大きいと判断させているのかもしれない。

Napsterほど盛り上がらないYouTubeへのバッシング

 このように,NapsterのときほどYouTubeへのバッシングが盛り上がっていない原因として,筆者は上記のYouTube自身の工夫に加えて,NapsterとYouTubeにアップされるコンテンツの差があるのではないかと考えている。

 Napsterのときに問題とされた音楽データは,もともとCDなどの形で市販されていたものがほとんどである。つまり,お金さえ出せば,基本的にだれでも手に入るコンテンツだった。それを,無料で入手できる形で流通させるのは,確かに著作権者として許せない。利用者にも罪悪感が生じるだろう。

 だが,YouTubeで問題視されているコンテンツの多くは,テレビ放送の映像である。コンテンツを見たり聞いたりするユーザーにとって,テレビの映像と音楽CDの間には明確な違いがある。テレビのコンテンツを放送された時点で見逃した人は,あとで面白いと聞いて興味を持っても,CDと違ってすぐに入手する手段が存在しないのだ。テレビ局がコンテンツを再放送しない限り,ユーザーにとってはYouTubeのような動画配信サイト以外では見られない。こういった状況が,ユーザーにYouTubeを支持させ,サイトとしての存在意義を持たせている側面があるのではないだろうか。

 人間の好奇心や“知ること”に対する知的欲求は,思いのほか強い。その興味をくすぐって商売をしている著作権者が,著作権を盾に見たいものを見せないようにするのでは,なかなかユーザーの支持を得られないだろう。

 YouTubeによる著作権侵害を問題にしたいのなら,テレビ局をはじめとする著作権者は,いったん放送したすべての内容をインターネットですぐに公開するなど,本気で“放送とネットの融合”を進めるぐらいの気構えが求められるように思うのだが…。読者の方のご意見をぜひお伺いしたい。

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