プロセサの性能向上に伴い,コンピュータの消費電力や発熱の問題が急浮上している。ITproの姉妹サイト「Enterprise Platoform」では8月,IT関係者がこの問題についてどう捉えているか調査。523人から回答が得られた。全体として消費電力や発熱に対する意識はまだ低いものの,関心は着実に高まっているようだ。調査結果のポイントを紹介しよう。


身近なパソコンでは発熱・騒音に関心大

 まず調査では,ユーザーに身近なパソコンについて,その消費電力や発熱をどう考えているか聞いた。「パソコンを購入する際に,消費電力やファンの騒音,発熱について気にするか」との問いに対して,パソコンを購入した501人は次のように挙げた(複数回答)。発熱を気にするのが361人(72.1%),ファンの騒音を気にするのが346人(69.1%),消費電力が250人(49.9%)だった。発熱とファンの騒音について,気にする人は7割にも上る。

 騒音や発熱を挙げる割合が消費電力よりも多かった理由としては,“肌感覚”としてわかりやすい指標だったからだろう。とにもかくにもプロセサの性能向上に伴う“弊害”に対して,ユーザーの意識が高まっていることが分かる。パソコン・メーカー各社がファンの騒音低減策や排熱対策に取り組んでいるのはさもありなん,といったところだろう。


サーバーでは信頼性と処理性能を重視

 一方,サーバーについては,当然といえば当然だが,身近なパソコンよりも,発熱やファンの騒音,消費電力に対する意識は低い。「サーバーに求める要素は何か」と聞いたところ,最も重要な要素として上がったのは信頼性と処理性能。消費電力,発熱量,騒音は重視されていない“ワースト1,2,3”の要素だった。

 「重視する」から「重視しない」までの5段階を得点化して回答の分布を表現してみると,信頼性のスコアが一番高く3.65,二番目が処理性能で3.34だった。消費電力は一番低く2.16,発熱量の低さが2.27,騒音の低さが2.20だった。騒音はともかく,コストやシステムの安定運用に関わる消費電力や発熱量についてもここまで意識が低いのは,回答者がIT関係者であることを考えると,やや予想外とも言える*1。

*1 回答者の属性を見ると,ソフトや情報システム,ネットワークの企画・開発にかかわる技術職が約半分の54.8%(282人)を占める。


期待の技術は冷却技術とマルチコア

 コンピュータの消費電力や発熱量の増大という問題に直面しているベンダーは,様々な対策を進めている。プロセサの消費電力当たりの処理性能を向上させるデュアルコアは,その端的な例だ。サーバー・メーカーも空冷の仕組みを改良したり,あるいはメインフレームなどで培った水冷機構をUNIXサーバーやIAサーバーに適用し始めている(Enterprise Platformの関連記事その1その2その3)。

 そこで調査では,「コンピュータの消費電力や発熱量の低減を実現する技術で,期待するもの」は何かを聞いた。トップ3を順に挙げると,「空冷,水冷,ヒートパイプなどの冷却技術」が292人で55.8%。「デュアルコアなどのマルチコア技術」が232人で44.4%。「使用していない回路の電源をオフにして消費電力を抑える技術」が196人で37.5%だった。

 米調査会社Gartner Researchは,「なぜIT企画者にとって冷却(Cool)が“ホット”なのか(Why Cool Is Now 'Hot" for IT Planners)」と題したレポートを発行している。レポートは「コンピュータのハードウエア価格や運用管理費は下がる一方で,唯一上昇しているコスト要因がある。それは消費電力だ。消費電力が無視できない課題として大きくなりつつある」と訴える。1,2年後,今回と同様の調査を実施すると,結果の様相はがらりと変わっているかもしれない。

≪調査結果の詳細は9月中旬,Enterprise Platoformにて紹介する予定です≫