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 景気の回復が伝えられるようになった。これまで絞ってきたシステム投資を増やす,という話を聞くことも多い。取材のなかでも,最近,基幹系システムの再構築を手がける企業が増えてきたという印象を受けている。

 果たして今,塩漬けになっていた基幹系システムを再構築すべきなのだろうか。今回はこのテーマについて考えてみたい。


基幹系再構築は企業にとっての一大事

 記者が今,このテーマでフォーラムを開こうと思うのは,基幹系システムの再構築プロジェクトにある種の不安を感じるからだ。もっとはっきりいうなら,基幹系システムの再構築プロジェクトは,かなりの割合で「動かないコンピュータ」化しているのではないかと感じる。

 会計や生産管理,販売管理といった基幹系システムの再構築は,企業にとっての一大プロジェクトである。その一大事のプロジェクトが,極端な場合には完全に中断される。そこまで極端ではなくても,半年から1年以上プロジェクトが遅れることもよくある。

 大規模プロジェクトほどトラブルになりやすい傾向があるわけでもない。どういった業種の企業が,どういった企業に開発を依頼するかに関係なく,トラブルは多発する。ERPパッケージ(統合業務パッケージ)を使っているか,手作りかという開発手法も関係ないようだ。プログラムは既存のままでOSだけを変更するレガシー・マイグレーションと呼ばれる手法ですら,プロジェクトが順調に進むことは珍しい。

 あえて言うなら,実装する機能をほとんど変更せずに,当初の稼働時期を順守できている企業はほとんどないのではないか,とすら思う。しかも,基幹系システムの行方は企業に大きな影響を及ぼす。

 大企業の場合,基幹システムの再構築プロジェクトは,1年を優に超える期間がかかる。費用も膨大なものになる。ユーザー企業の利用部門からだけで数十人,システム子会社やベンダーを含めれば百人単位でプロジェクトに参加する。10億円単位,なかには100億円単位に達することもある。最悪の場合,これだけの費用が水のアワになる。

 規模だけが問題なのではない。その名の通り,基幹系システムは企業にとって不可欠の存在である。業務プロセスの改革を実現したり,業務効率を大きく向上させた場合には企業競争力が高まるが,残念ながら現実には逆のケースもある。

 本稼働に失敗して,基幹系システムが正常に運用できない事態が起きれば,企業の業務は停止してしまう。業務を続けようとするなら,従来はシステムで処理していた作業を,電話やファクシミリあるいは人海戦術でこなさなければならなくなる。これは修羅場である。

景気回復で顕在化する人手不足

 しかも現在,企業にとってもう一つ別のマイナス要因が発生している。同じ時期に同じようなことを考える企業は多い。景気の回復に合わせるように,積極的にシステム開発に取り組んでいる企業が増えているのだ。その結果,システムを開発する技術者の数が不足し始めている。