Ruby on Railsで開発されたコンサドーレ札幌オフィシャル・ブログ
[画像のクリックで拡大表示]

Ruby on RailsとdRubyを使用したはてなスクリーンショット
[画像のクリックで拡大表示]

Ruby on Railsを利用したドリコムのDrecom Career Search。同社はB2CサービスでRailsを標準に採用している
[画像のクリックで拡大表示]

Ajaxを活用したRSSリーダーのFEEDBRINGER
[画像のクリックで拡大表示]

島根県公式サイト。ふりがな(ルビ)を表示させた画面
[画像のクリックで拡大表示]

カルチャー情報サイトA New City Guide
[画像のクリックで拡大表示]

 その熱気に包まれながら,なんだかこれとよく似た雰囲気を感じたことがあるような気がした。なんだったろう。そうだ。Linuxがブレイクする直前のあの熱気だ---6月に行われた日本Rubyカンファレンス(関連記事)で記者が受けた印象だ。

 記者が最初にビジネス用途のソフトウエアとしてLinuxを意識したのは米Netscape CommuncationsがLinuxをサポートする方針を明らかにした時だったと記憶している。正直言って最初は「個人の名前を冠したソフトウエアなんて,どうせホビー用だろう」と思っていた。しかし,それではと調べれば調べるほど,Linux上のソフトウエアや,採用事例はまさに山のように出てくる。

 売るわけでもないのに,商用ソフトウエアにひけをとらない完成度のソフトウエアを作る。「無償のソフトウエアですが,私が保証しますから使わせてください」と自らのリスクで採用する。技術者としての自己実現のために,いいものを作りたい,使いたいという開発者の思いがそのエネルギーの源だったと記者は考えている。溜まりに溜まったマグマが一気に爆発したような勢いに記者は圧倒された。

「驚くほど早く,安くできた」

 まつもとゆきひろ氏が開発した日本生まれのオブジェクト指向言語「Ruby」。Rubyにより構築された業務システムが,続々と稼動を始めている。

 「えっ,もうできたの,と驚くぐらい開発が速かった。費用も同業者に『一桁安い』と驚かれるほど安かった」---WEBOSS 取締役 大熊一精は,Ruby on Railsを使って構築したコンサドーレ札幌オフィシャル・ブログの開発効率を手放しで賞賛する。

 コンサドーレ札幌の公式ブログ・サイトは,北海道フットボールクラブとWEBOSSが共同で企画,運営。選手やスタッフ,サポーターのブログを通じた交流が行われている。「サポーターもブログを開設できる公式ブログはJリーグ初」(大熊氏)。社長が頻繁にブログを更新してサポーターと意見を交換したり,選手寮のブログから寮の食事メニューをベースにした弁当が作られて試合で販売されたりといった盛り上がりを見せている。広告媒体としても地元の情報を中心に活用されている。

 開発したのはインテグレータであるリチェルコ。開発は2005年夏に行われた。リチェルコにとってもRubyによる業務向けサイト構築は初めてだった。Ruby on Railsのバージョンも1.0がリリースされる前で,日本語の書籍はなく,日本語のドキュメントも少なかった。

 にもかかわらず,RubyとRuby on Railsの生産性の高さから,開発は順調に進んだ。開発を担当したのはリチェルコの技術者である山中茂樹氏1人だったが,冒頭に述べたように運営元が驚くようなペースで進み,約2カ月間で完成した。システムは複数のサーバーにより負荷分散,相互にデータを複製している。これまでにシステム的なトラブルもないという。

 2006年6月には,コンサドーレ札幌で開発したシステムは他社のサイトにも展開された。スポーツファンによるブログ・サイトスポーツナビ+である。ヤフーのグループ会社であるワイズスポーツが,WEBOSSの協力で開発した。

B2Cサービスの全社標準に

 Rubyを採用したシステムは燎原(りょうげん)の火のように広がっている。はてなは「はてなスクリーンショット」をRuby on Railsで構築(詳細記事)。

 ミッタシステムは,託児施設入退室管理・請求書発行システム,携帯メール連絡網システム,顧客・業務管理システム,さぬきうどん製麺所メールマガジン配信システム,アンティーク雑貨ショッピングサイトなど数多くのシステムをすでにRailsで構築している。

 RubyとRuby on Railsを社内標準とする企業もある。ドリコムでは求人情報検索サービス「Drecom Career Search」をRailsで構築したが,今後B2Cサービスは全てRailsで構築する方針を決定。Railsで構築したアプリケーションのコンテスト「Drecom Award on Rails」も実施しており現在一般からの投票を受け付けている。

 地方自治体による採用もある。島根県のホームページなどだ。ネットワーク応用通信研究所が開発した,RubyベースのCMS(コンテンツ管理システム)を使用している。文字の拡大や読み上げなど目が不自由な人のための機能を備えており,今後オープンソース・ソフトウエアとして公開される予定だ(関連記事)。

 そのほかにもRubyを採用したシステムは枚挙に暇がない。