題名に「続」と付いている通り,本稿はかつて書いたコラムの続編に当たる。「エンジニアの皆さん,もっと経営者に意見しませんか」と題した前編を,筆者は2003年1月に公開した。その後3年以上にわたり同じことを考え続けてきた。それは,本サイトをご覧になっているIT(情報技術)のプロフェッショナル「以外」の方々,とりわけ経営者に,ITをご理解いただくにはどうしたらよいか,ということである。この目的のために先頃,新しい試みを始めたので今回ご紹介したい。

 「経営者にITを理解いただく」と言っても,コンピュータが動く仕組みやプログラミングの作法を分かってもらおうというわけではない。若い頃にプログラミングを経験できれば結構なことだが,そこまで経営者に要求するのは無理だ。経営者に知ってもらいたいのは,ITそのものの実務ではなく,ITに関わるマネジメントの勘所とでも言うべきものである。IT投資の意思決定をする際に,経営者は何に注意すべきか。情報システムを開発するプロジェクトを始める時,どういう体制を組んで臨めばよいのか。出来上がった情報システムを維持していくために必要な投資と要員はどのようなものか。こうしたことに関する知見が経営者に求められる。

 現在,ITに関して情報漏えいやシステム開発の失敗など様々な問題が発生しており,本サイト上で毎日のようにニュースや解説が流れている。残念ながらこれらの問題が解消する,あるいは減少する気配は一向にない。筆者がコンピュータ産業を担当する記者になり,諸問題を報じ始めてから21年が経過した。この間,似たようなことを何度も書いてきたため,問題提起をしたり解決策もどきを提示しようとすると「以前に書いた」と思ってしまう。そのあたりの事情まで本欄の題材にしてしまった

 諸問題を解決するには,ITプロフェッショナルの努力が欠かせないが,それだけでは限界がある。経営者にもう少し気を配っていただかないと困る。経営者ががもう少し気を使うだけで,問題解決に近づく可能性が大きいと思う。経営者にいかにして分かってもらうか。これ自体,一つの難題である。これに対する一つの方法は,経営者やビジネスリーダーを対象にして,情報を発信することだ。

 そう考えて4月から,「経営とIT新潮流2006」という新しいページを作った。このページはITproの中にあるが,NBOnline(日経ビジネスオンライン)とITproが協力して作っている。「経営とIT新潮流2006」という名称通り,経営者やビジネスパーソンに向けて,ITの使いこなしの勘所を伝えることが狙いである。ちなみにNBOnlineは,日経ビジネス誌が4月に開設した新しいサイトであり,日経ビジネス読者以外の方も読める。

 「経営とIT新潮流2006」を作るにあたって,大きく二つの課題があった。第一は,経営者をどうやってこのサイトに引っ張ってくるかである。この点については,日経ビジネスやNBOnlineの力を借りるしかない。第二は,経営者が読める「経営とITのサイト」の中身をどのようなものにしたらよいか,である。昨今のIT動向を考えると,内部統制あるいは日本版SOX法,または情報セキュリティといった題材がよいのだろうか。あるいは経営に打撃を与える「動かないコンピュータ」の話題だろうか。