先週,WinHEC 2006という米Microsoftのカンファレンスに参加させていただいた。カンファレンス内容については,WinHEC 2006速報サイトにいろいろな記事を掲載しているので,そちらを参照してもらうとして,ここではその印象を少し書きたいと思う。

 実は,ここ7年ほど海外出張の機会に恵まれず,Microsoft関連のカンファレンスに参加するのは8年ぶりだった。それ以前,つまりWindows9x/NT時代は,少なくとも年に1度はそうしたカンファレンスに参加していた。

 その時代と変わらないのは,基調講演にBill Gates会長(写真)が登場すること。“User Centric Computing”と称して,さまざまなメディアを介して情報をユーザーのところへ集めて処理するコンセプトの披露は,彼がよく口にしていた“Information At Your Fingertip”と根本的に変わらない。

 ただ,ユーザーが手にするハードウエアはかなり大きく変わっていた。特に家電機器もコンピューティング・デバイスとして扱おうとするのは当時にはなかったコンセプトだ。今回のWinHEC 2006だと,Windows Vistaが備えるSideShowという機能を使って,携帯電話機,TVリモコン,コードレス電話機などの液晶ディスプレイをセカンド・ディスプレイにするデモがいい例だ。“Information At Your Fingertip”の主体もユーザーなのは確かだが,その操作対象は必ずパソコンだった。この点は大きく変貌したところだ。

 そして,もう一つ大きな違いを感じたのが,次期サーバーOSであるLonghornのコンセプトだ。昔もサーバーOSとしてWindows NT Serverがあったが,それはあくまでもパソコンで動くものという印象が強く,PCサーバーなどという造語まで生まれた。

そもそも「パーソナル」な「コンピュータ」であるPCという単語に,他に対してサービスを提供することを意味する「サーバー」という用語が付くこと自体,本来ならおかしな話である

 ところが,Longhornが想定するコンピュータは,もはやパソコンとは言えない。64ビット・プロセッサ搭載機だと,Windows95などは動かないだろう。そして,部門サーバーではなく,昔なら汎用機が担っていた企業システムの中核に据えるべきサーバーになる。Windows2000登場前のMicrosoftからは聞かれなかった「エンタープライズ」というキーワードが,Gates会長の基調講演でLonghornを紹介する際に何度も発せられていたのが印象的だった。