既に報道でご存知の方も多いと思うが,米Apple ComputerはIntel Mac向けMac OS Xの次期版「Mac OS X 10.5(開発コード名Leopard)」に,Windows XPをインストールし,起動する仕組みを組み込む予定だ。Leopardの発売に先駆け,そのためのモジュールのみをベータ版の「Boot Camp」として,4月5日からダウンロード提供し始めた。これを利用すると,現在のIntel MacにWindows XPをインストールし,Mac OS Xと起動し分けることができる。

 実は筆者は,PCの使用歴は25年以上と長いものの,Macintoshを使ったことはこれまでなかった。正確に言うと,このような仕事柄,触ったことはあった。だが,「使った」と自分で思えるほど使い込んだことはなかった。使ったことがないことについては,「普段利用しているソフトのMac版がないから」などと理由を付けることはできるが,何のことはない,ただの食わず嫌いだったのだ。

 食わず嫌いの理由の一つが,これまでのCPUがIntel製ではなかったことである。アセンブリ言語でのプログラミングをしていた筆者としては,アーキテクチャが異なるマシンを利用することに抵抗があった。今では高級言語を利用することがほとんどで,アセンブリ言語を使うことは滅多にないが,それでもたまに,こんな感じのアセンブリ・プログラミングを楽しむことがある。

 単に利用するだけなら,コンピュータのアーキテクチャが異なることなど関係ないように思えるかもしれない。しかし,「PCを使うこと」と「プログラミングすること」が同義語だった頃からのユーザーとしては,アーキテクチャの違いは非常に高い精神的ハードルだった。

 とはいうものの,“下”がUNIX(Free BSD)になったMac OS Xは,ちょっと使ってみたい気はしていた。筆者のデスクトップは,Windows XPのVisual Style機能を利用してMac OS X風にカスタマイズし,雰囲気だけを味わっている。

 そこへ昨今のニュースが飛び込んできた。まずIntel製CPU(x86アーキテクチャ)採用のMacintosh発売だ。これで少し心が動いた。次にMac OS X向けのIntel C++ Compilerの発売である。これでだいぶ傾いた。そして今回のBoot Campである。これで完全に流れてしまいそうだ。

 ただ,1点だけ引っかかる部分がある。それはBoot Campの実装方法だ。

 IntelがVT(Virtualization Technology)を,サーバー向けだけでなくデスクトップやモバイル向けCPUにも実装しようとしている折,仮にBoot Campを仮想マシン・モニタ(仮想マシン・ソフト)として実装し,仮想マシン上でWindows XPを動かせば,同時に2つのOS(で動作するアプリケーション)を利用でき,利便性が高まる。特にデュアル・コア・プロセッサの場合,各コアをMac OS XとWindows XPのそれぞれに割り当てれば,一般的なPCとほとんど同じ処理スピードで同時に2つのOSを利用できるかもしれない。

 だが実際には,デュアル・ブートでOSを切り替えることから,Boot Campは仮想マシン・モニタではなさそうだ。Linuxを使っていたときに経験があるが,デュアル・ブートはどうしても再起動に時間がかかる分,操作性が悪くなる。OSをまたいで,アプリケーション間でデータをコピー&ペーストすることもできない(実装によるが,仮想マシンならば可能である)。

 Leopardの発売予定となっている2006年末から2007年には,CPUもCoreマイクロアーキテクチャを採用したConroe/Merom(いずれも開発コード名)に切り替わっている。現在,Boot Campはベータ版だが,Leopardに実装される機能,あるいはそのバージョンアップ版では,仮想マシン・モニタとして実装されることを少し期待したい。