最初に断っておくと、この記事はWeb2.0がよく分からない人、もしくは、よく分からない人に説明したい人向けの内容になっている。Webビジネスの将来像やWeb2.0の基盤技術といった内容には触れないので、ご容赦願いたい。

 筆者は、隠れWeb2.0推進派である。「隠れ」というのは、記者でありながらWeb2.0の記事を書かず、私生活でWeb2.0の便利さを細々と広めているからだ。ただ最初からWeb2.0推進派だったわけではなく、最近まではむしろWeb2.0を懐疑的に見ていた。転向のきっかけになったのがタイトルにある有名アニメ「機動戦士ガンダム」だ。その理由は後から説明するとして、筆者は今や、周囲を巻き込んでWeb2.0推進派を増やしつつある。

Web2.0を難しく見せている人も

 勉強嫌いの筆者は、利用者参加型の次世代インターネットを表す概念「Web2.0」を極力避けてきた。だが、Web2.0がIT業界をにぎわし、Web2.0をキーワードにした製品を出てくるに至り、仕方なく勉強してみたのだが、正直よく分からない。さらに勉強すると、ベンダー各社の「Web2.0的サービス」が便利なマーケティング用語に見えてきて、結局、Web2.0と関係ない記事を書いていた。

 概念は理解できるし、新しい技術が盛り込まれているのも分かる。Webビジネスにかかわる企業やユーザーにとって大きな変革だろう。ところが、一般企業や一般ユーザーに与える影響がピンと来ない。従来のインターネット(Web1.0)は、企業のビジネスや業務、個人の生活に多大な影響を与えたが、Web2.0ではそのインパクトを感じないのである。「流行り言葉で終わるのでは」と懐疑的な気持ちになっていた。

 ところがWeb2.0を、無償のオンライン百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」の機能と対比しながら説明されたことで一転、Web2.0推進派に変わった。Web2.0の考え方を採り入れたウィキペディアがとても便利で、かつ楽しめるサービスになっていることが理解できたからだ。

 ウィキペディアは、利用者が「記事」と呼ばれる事典の内容を自由に追加・修整できる。これはWeb2.0の概念を具現化しているのだが、おかげで、学術的な記事から趣味の記事まで、あらゆる項目が最新の状態で網羅され、かゆい所に手が届くサービスになっている。ウィキペディア日本語版だけで20万1178本(4月13日20時30分時点)もの記事がある。

 筆者はウィキペディアを仕事でも使うが、主たる目的は仕事が煮詰まった時に「ガンダム」「ケロロ軍曹」といった用語を検索する現実逃避だ。いわゆる「Web1.0」の辞書と違って、新しい説明や新しいリンク先が毎回加わっていて全く飽きない。締切前に4時間も現実に戻って来れなくなるかもしれないというリスクが伴うものの、筆者の仕事と生活に欠かせないWeb2.0サービスと言っていい。ウィキペディアへの寄付も欠かさない。

説明ではなく体験してもらう

 Web1.0は一般ユーザーが一定規模を超えた瞬間から、社会に与える影響が加速的に増大した。それまでマニアのものだったWebサイトや電子メールは、ビジネスを効率化し、生活を豊かにするツールとなった。Web2.0がどんな変革を生んでくれるのか、筆者には想像もつかないが、前向きな変革を信じて一般ユーザーを開拓する日々を送っている。

 とりあえず、周りのガンダム好きはウィキペディアファンにしておいた。ついでに、Web2.0を説明すると評判がいい。ほかにも歴史好き、社会問題好きなど、趣味が合う人にウィキペディアを勧めて、Web2.0の便利さを理解してもらうべく活動している。

 職業柄「Web2.0について説明してください」と頼まれる機会もある。その際も、まずはウィキペディアを使って説明し、Googleやブログに話を広げる。ウィキペディア利用者は意外と多く、Web2.0の良さを簡単に理解してもらえる。以前はなかったサービスという点や、手続きなしで簡単に試せる点も、一般ユーザーに理解されやすい理由だと思う。

 こうして、筆者の周りではウィキペディアに記事を投稿したり、寄付をしたりするWeb2.0推進派の輪が着実に広がっている。ガンダムである必要はない。歴史やスポーツ、車、バイク、女子アナなど各人が興味のあることをウィキペディアで検索してほしい。Web2.0の便利さ、楽しさが多少は理解してもらえると思う。ついでに、読者の方々の周りにいるガンダム好きに、ウィキペディアとWeb2.0を紹介してもらえれば幸いだ。

 ウィキペディアでWeb2.0に興味を持ったら、Web2.0提唱者の一人であるティム・オライリー氏が定義しているWeb2.0企業のコアコンピタンス(核となる競争力)と、ウィキペディアを比較するといいだろう。Web2.0の定義はほかにもあるし、ウィキペディアがすべての定義を満たしているわけではないが、理解の一助になるはずだ。


(1)パッケージソフトではなく、費用対効果の高いネットサービスを提供する
(2)独自性があり、利用者が増えるほど充実するデータソースを管理する
(3)サービスの利用者が共同開発者にもなる
(4)共有された知性を利用する
(5)一つひとつは小さいニッチ市場を数多く取り込む「ロングテール」を生かす
(6)様々なデバイスで利用できる
(7)簡易なユーザーインターフェース、開発モデル、ビジネスモデル


 最後に敬意を表して、2006年4月6日時点のウィキペディア日本語版に掲載されている「Web2.0」の項目の一部を引用させてもらう。全文については、ウィキペディアの当該ページを見てほしい。

「Web 2.0」という用語は、World Wide Webの様々な点での進化を総称したものであり、アーキテクチャやアプリケーションを含んでいる。しかし、その意味について明確な合意が形成されているとは言い難い。

現在、以下のような言い方をされている。

ウェブサイトは、孤立した情報の貯蔵庫からコンテンツと機能の発信源へと変化し、ウェブアプリケーションを一般ユーザー向けに提供するプラットフォームとなりつつある。
Webコンテンツ自体を作成し配布しようとする社会現象は、開かれたコミュニケーション、権威の分散、共有と再利用の自由、会話の市場性などから性格づけられる。
Webの経済価値は1990年代末のITバブル期とほぼ同程度の潜在的価値を示しつつある。
最近開発された多くのコンセプトと技術は Web 2.0 をもたらす要素とみなされる。それには、ブログ、ウィキ、ポッドキャスティング、Webフィードのような多対多のパブリッシングが含まれる。また、ソーシャル・ソフトウェア、Web API、Web標準規格、Webサービス、Ajaxなども Web 2.0 を構成する要素である。これらを個別の現象と見ずに、進行しつつある Web アーキテクチャの成熟過程の一部として見た時に Web 2.0 と総称するのである。

現状の Web を Web 1.0 と称して対比させることもよく見受けられる。Web 1.0 として代表的に言われるのは、ホームページという概念、勝手にでしゃばってくるマーケティング関連サービス、サイトコンテンツの障壁、ブログの非互換による相互運用性の阻害などである。