ソフトバンクの孫正義代表取締役社長(中央)、ボーダフォン日本法人のウィリアム・ティー・モロー執行役社長(左),ヤフーの井上雅博代表取締役社長(右)

 去る3月17日,ソフトバンクによるボーダフォン日本法人の買収が明らかになった。買収額は1兆7500億円と,一般人には想像できない金額である。では,この買収劇によって,我々ユーザーにどんなメリットが生まれるのか考えてみた。

 最初に思いつくのは,ソフトバンクが起点となる携帯料金の“価格破壊”だろう。買収発表時の会見で,孫社長は「現時点で新たな価格戦略をコメントすべきではない」としていたが(参照記事),その期待は大きい。

 同社は,ボーダフォンのブランドを独自ブランドに変えていく方針で,それには1年くらいかかるとしているが,今年11月ころから価格競争が激化するはずだ。というのは,携帯電話の「番号ポータビリティ」が11月1日から始まる見通しだからである(参照記事)。

 番号ポータビリティとは,ユーザーが携帯電話事業者を乗り換えても,従来と同じ電話番号を引き継げるようにする制度のこと(参照記事)。番号ポータビリティだけでも価格破壊を起こすだけの起爆剤となりうるのに,そこへソフトバンクが絡んでくれば価格破壊は必至と言えよう。

 さらに,ソフトバンク・グループの一員であるYahoo!やYahoo! BBとの連携も見逃せない。Yahoo!のコンテンツが,ソフトバンクの携帯電話向けに提供されるのは明白。加えてYahoo! BBとの連携が始まれば,携帯電話機が自宅では無線IP電話の子機として使えるようになったりもするだろう。最近はあまり街角で見かけなくなったが,ADSLモデム(あるいはONU)の箱に,携帯電話機までが同梱されて配られるようになるかもしれない。

 ソフトバンクはこうして有線と無線を融合させたあと,さらにもう一弾のシカケを用意する可能性だってある。有線と無線のどちらも,自社サービスに加入しているユーザー向けに,Yahoo!のコンテンツを提供するのだ。例えば,My Yahooo!は現在パソコン向けのサービスだが,これを携帯向けにも提供する,といったことが考えられる。そうなればユーザーは,移動中は携帯で,自宅や会社ではPCで,自分向けにカスタマイズしたコンテンツを参照できるようになる。

 ここまで来ると,単なる携帯電話業界の話だけにとどまらない。ボーダフォンの買収は,ソフトバンク・グループがGoogleやMSNと戦うための切り札にもなり得るのである。