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トヨタ流が「なぜなぜ5回」なら、リコー流は「TTY」

2006/03/22
川又 英紀=日経情報ストラテジー (筆者執筆記事一覧

 「なぜなぜ5回」という言葉をご存知だろうか。

 これまで耳にしたことのない読者もいるかもしれないが,企業の業務改善に取り組む人や、工場で働く人たちなら、1度は聞いたことがある言葉だろう。「なぜなぜ5回」という言葉自体は聞いたことがなくても、その意味を聞けば、知っているという人も多いに違いない。

 なぜなぜ5回は、トヨタ自動車の改善活動を語るうえで欠かせないキーワードの1つだ。発生した問題に対して、その原因をとことん追究し、真の原因である「真因」を探り当てる。その過程において、「なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?」と5回繰り返して問題の核心を突いていく。

 ただし、5回という回数に意味があるわけではなく、1つの問題に対して、1~2回考えただけでそれが絶対的な答えだと決めつけずに、何度も何度も繰り返し自問自答しながら徹底的に考え抜く大切さを、この言葉は象徴している。

 トヨタでは問題解決において、「なぜ」を5回繰り返すほど執念を持って取り組む姿勢が浸透している。その結果、従業員一人ひとりに「自分で考える力」が備わっていく。それが現場力を強化する源泉になっているのだ。

「何が」問題なのか分かるから、「なぜ」と言える

 なぜなぜ5回の大切さに異論を唱える人は少ないだろう。すぐに実行したいと考えている現場リーダーも多いはずだ。

 ただし、なぜなぜ5回の実行には大切な前提条件がある。それは「そもそも問題が何なのか」を、現場にいる人たちが正しく理解できていることだ。問題が何かをとらえきれていない状態では、「なぜ?」とは言えないからである。

 なぜなぜ5回という言葉が有名になり、言葉だけが独り歩きし始めている現在、多くの企業がいきなり「なぜ?」からスタートしようとしている。

 しかし、その前に考えてほしいことがある。それは「自分の身の回りでどんな問題が起きているのかを、誰もが正しく認識しているか」ということだ。言い換えると、問題解決の順番は、「なぜ」の前にまず、「何が」が来るということである。

 その順番の大切さを強く訴え、社員に警鐘を鳴らすCIO(最高情報責任者)がいる。リコーの遠藤紘一・取締役専務執行役員である。遠藤取締役はこう主張する。

 「問題が誰の目にも明らかな状態なら、トヨタさんのように、なぜなぜ5回から始められるだろう。しかし、何が起きているのかを正しく理解できていない状態では、いきなり、なぜ(Why?)とは言えないはずだ。何が(What)から始めなければならない」

 リコーでは、この順番を社員に徹底させるため、「TTY」という標語まで作ったという。TTYとは、「whaT Then whY(何がの後になぜが来る)」という意味だ。

 日経情報ストラテジーではここ数年、トヨタの改善に学ぶ「トヨタ流企業改革」をテーマにした記事を多数掲載してきたが、TTYはトヨタ流とは違う「リコー流」と呼んでもいい独自の取り組みといえるだろう。

 逆に、こんな見方もできる。どうしてトヨタは「なぜ?」から始められるのだろうか。

 それは「見える化」が徹底できているからである。最近、見える化という言葉が多くのメディアで取り上げられており、ほとんどの読者が耳にしていることだろう。トヨタには昔から、現状や作業の進ちょく、問題点などを、きちんと見える状態にしておく「見える化」があるからこそ、「なぜ?」から始められるのだ。

 こう考えると、「なぜなぜ5回」と「見える化」という2つのトヨタ用語がつながっていることに気づく。リコーの遠藤取締役も、言葉こそ違え、最初に「何が」を把握する大切さを訴えることで、見える化の重要性を説いていると考えられる。

 リコーやトヨタ以外にも,自社流の改善手法を取り入れているところは少なくない。2006年3月24日発売の日経情報ストラテジーの特集でも事例を紹介したが,イトーヨーカ堂やキヤノン電子,ホンダ,コクヨ,クボタ,ブラザー工業,日野自動車などが,独自の改善手法あるいはトヨタの改善手法を自社流に進化させた手法を導入している。

 読者の方々の会社でも,全社的に改善手法を取り入れているようならば,その功罪についてぜひご感想をお聞かせ願いたい。また,この記事や,日経情報ストラテジーの特集を読んで,現場主導の改善手法に対するご意見を聞かせていただければ幸いだ。

■変更履歴
タイトルおよび本文中の「TTW」を「TTY」に,本文中の「whaT Then Why」を「whaT Then whY」に訂正しました[2006/03/23 20:45]

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