Linuxを搭載したパソコンをデスクトップ用途で日常的に使うようになってから,周辺機器の新製品に対する興味が以前よりも薄れたように感じる。

 「こんな機能を持った新製品が欲しかったんだ」---。そう感じる一方で,発表される新製品はLinuxには対応していないものばかり。こうした状況を知った当時はかなり悲しかったが,慣れるにつれてあきらめの境地に達した。しかし,最近のパソコン用周辺機器を,各種プリンタや記録型DVD/CD装置,無線LAN,テレビ・キャプチャ・カードなど10ジャンルにわたって詳しく調べてみると,“不自由”な状況から着実に脱しつつあることが分かった。

 Linuxで各種周辺機器を使うには,Linux用のデバイス・ドライバが必要になる場合が多い。Windowsと同様,USBで接続する機器(例えば,キーボードやマウス,USBメモリーなど)はOS側が標準でドライバを備えており,つなげばそのまま使えることがほとんどだ。しかし,プリンタやスキャナ,テレビ・キャプチャ・カードなどの大半は,Linux用のドライバが別途ないと満足に利用できない。Linux用のドライバが付属しない製品がほとんどなので,ユーザーがLinux用のドライバを何らかの手段で用意する必要がある。

メーカーが内部仕様を公開してドライバの開発を促進

 「どうしても使いたい」---。 例えば,一部のテレビ・キャプチャ・カードについては,熱意を持った有志たちが,Windows用のドライバやそのインタフェースを流れるデータを解析し,ネットで情報交換をしながら,ドライバを手探りで開発し,提供している。こうした形態での開発・提供は,Linuxやオープンソース・ソフトの分野で以前から活発に実施されてきた。

 最近では,米WIS Technologies社のように,自社のデコーダ・チップに関する内部情報を公開することで,有志による開発を後押しする動きも増えてきている。そのため,前述のテレビ・キャプチャ・カードのように,比較的迅速にドライバが開発され,使えるようになってきた。

製品発売と同時にドライバを提供するメーカーも増加

 製品の発売と同時に,その製品のLinux用ドライバを提供するメーカーも増えてきた。

 周辺機器の新製品は従来,たとえドライバが提供されるにしても,発売直後にはLinuxではきちんと使えないことがほとんどだった。例えば,インクジェット・プリンタの場合,以前からLinux対応ドライバを提供するメーカーは複数存在した。しかし,用意されるのは一部の売れ筋製品用のドライバだけで,その提供時期も発売時期から数カ月から半年以上遅れることが多かった。そのため,年賀状シーズンに向けて秋に発売されたインクジェット・プリンタの新製品を,Linuxできちんと使えるようになるのが翌年の春ごろになることもめずらしくはなかった。

 最近は,積極的にLinuxに対応するメーカーが増えている。日本ヒューレット・パッカードのインクジェット・プリンタのほとんどは,米Hewlett-Packard社のWebサイトからドライバを入手できる。国内製品向けに提供されているものではないが,日本語環境でも問題なく動作する。うれしいのは,ほとんどの製品において,製品の発売と同時にLinux用ドライバが用意されていることだ。

 セイコーエプソンは,昨年の年末商戦向けに発売したインクジェット・プリンタのドライバを,今月から提供開始する(現在は評価版を公開中)。関連会社のエプソンアヴァシスのWebページから入手できる。驚くべきは,そのドライバが今後に登場する新製品にも対応できていることだ。

 プリンタは,製品ごとに表現できる色の範囲が異なる。そのため,ドライバは通常,各製品ごとに用意される。ところが最近は,プリンタ側で製品に合った色へ変換できるようになった。ドライバが色変換の仕組みを持たないため,今後に登場する製品でも使えるというわけだ。もちろん遠い将来までそのまま使えることが保証されるわけではないが,Linuxユーザーとしてはうれしい話だ。

それでも購入前の事前調査は忘れずに

 日本HPやエプソンのように,Linuxに積極的に対応するメーカーが増えてきたものの,まだWindowsと同等に使える状態には程遠い。インクジェット・プリンタの場合,メーカー製ドライバにもかかわらず,すべての機能が使えるわけではないことがほとんどだ。具体的には,DVDやCD-Rのレーベル面印刷や両面印刷などの機能が,サポートされていない。印刷機能に関しても,「提供しているドライバは弊社にて動作確認できたものであり,Linuxでの動作保証するものではありません」というようなただし書きが付いていることがめずらしくない。
 また,「Linuxにはかかわらない」という姿勢を崩さず,Linux用ドライバを提供しないメーカーも依然としてまだ多い。そのため,事前の調査なしに最新の周辺機器を購入するのは危険だ。日経Linuxの3月号特集「徹底攻略! パソコン周辺機器」では,周辺機器をインクジェット・プリンタ,レーザー・プリンタ,スキャナ,記録型DVDなどの10ジャンルに分け,Linux対応製品の見つけ方やセットアップ方法を詳しく紹介している。これから周辺機器を購入しようと考えている方はぜひ参考にしてほしい。

(齊藤 貴之=日経Linux