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記者の眼

「あちら側」のGoogle,「こちら側」のMicrosoft

---梅田望夫氏の「ウェブ進化論」

2006/02/15 ITpro
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 2006年に入ってついに,米Google社の時価総額が米Intel社を追い抜き,ハイテク業界では米Microsoft社に次ぐ2位に浮上した。この急成長企業の強みは一体,どこにあるのか。その秘密に迫ろうとする著はいくつもあるが,日本人の視点から最も鋭く本質に迫ったと思える一冊にめぐりあった。梅田望夫氏の「「ウェブ進化論」---本当の大変化はこれから始まる」である。

玉石混交から,「石」と「玉」を見分けるには

 研究者の道具だったインターネットが社会生活に浸透を始めてから,まだ10年しか経っていない。この短期間に,インターネットは情報の流通形態を大きく変えてしまった。グーテンベルクの発明に端を発し,500余年をかけて確立した印刷産業の構図が根底から揺らいでいる。情報の発信コストが格段に下がったことと,瞬時にして世界に情報を発信できるようになったことで,「個人」が「新聞社」「出版社」に代わって,読み手に直接,情報を伝えることが可能になった。

 それと同時に,インターネットの世界には有象無象の情報があふれかえったのも事実だ。「にわか文筆家」が大量に誕生したことから,インターネットの世界はカオスに陥り,「インターネットの情報はアテにならない」との風評が漂った時期もある。情報はあまたあれど,自分の欲しい本当の情報が埋もれてしまっている。それを発掘するフィルタリング機能が欠乏していたのだ。第一次のネット・バブルがしぼみかけた折,その状況を救ったのが「検索エンジン」である。著者の梅田氏の表現を借りれば,検索エンジンは,玉石混交の状況から「玉」と「石」をしゅん別する道具ということになる。世界中に散らばった膨大な量の「石」から,効率よく「玉」を見いだす技術が手に入ったことで,既存メディアにとってインターネットの脅威はさらに大きなものとなった。

 そのGoogle自身,検索エンジンの会社としては後発だった。Yahoo!など幾多の検索エンジン会社の後じんを拝しながらの事業参入だったにもかかわらず、なぜ先頭に立つことができたのか。それは、技術に対するこだわりだと梅田氏は言い切る。Googleは,サービス会社ではなく,ものづくりの会社だととらえる。単に,出来合いのハードウエアとソフトウエアを用意し,その上でネット・サービスを展開するわけではなく,Googleは自前主義を貫く。ハードウエアからソフトウエア,その上のアルゴリズムまで組み上げる。水平分散型の志向が強まる中で,垂直統合型のコンピュータ・システムを創り上げるアプローチを採る。しかも,創り上げたコンピュータ・システムをユーザーに露呈することはない。ネットの向こう側に置き,ユーザーにはサービスしか提供しない。これがかつてのコンピュータ産業との決定的な違いである。

インターネットは虚業ではない

 著者の梅田氏は,ハードウエアとソフトウエアをユーザーに納める現行のコンピュータ産業を「こちら側」と表現し,無形のサービスだけを提供する新しい形態のコンピュータ産業を「あちら側」と呼ぶ。そして,同氏は「Microsoftのビルゲイツ氏も,「こちら側」から「あちら側」へ渡ることができなかった」と言い切る。その理由は,パソコンの歴史にあるという。パソコン業界は,「複数の利用者で共有していた大型計算機の資源を個人が占有する」ことを目標に,産業が発展を遂げてきた。つまりその原動力は所有欲にある」。ところが,インターネットの世界では「所有」という考え方が希薄になる。これが「こちら側」と「あちら側」の決定的な違いである。

 モノづくり大国の日本から,Googleが誕生し得なかった理由も,この違いによる。その日本は,「あちら側」に渡ることをあきらめてしまったのか,このところ「モノづくり」の原点に立ち返る傾向が強い。世論は,ライブドアがインターネット産業の象徴として扱い,インターネット業界全体を虚業のように思い込む人も増えかねない状況だ。そういえば,インターネット向けソフトウエア大手のACCESS副社長の鎌田氏が,「インターネット関連企業はすべて怪しげに思われるのが残念でならない。私たちはモノづくりをしているのに」とごちていた。その通りだと思う。

 さてGoogleは次にどちらに進むのか。衛星・航空写真表示サービス「Google Earth」や動画配信サービス「Google Video」など,二の矢,三の矢を放つ。その推進力は,技術にほかならない。社員の大半が博士号を持つGoogle社は,買収という形で他社の技術も飲み込みながら,自社技術との融合を図る。つまり,インターネット上のあらゆるコンテンツの意味を解析し,それらを自動的に関連付け,体系的な秩序を持ち込もうとしているわけだ。言語解析や画像解析の技術は歴史が古い。その実用化がたやすいことではないというのが多くの研究者に共通の見解だ。ただ,今のGoogleには,古くからの常識を軒並み覆しそうな勢いがある。

 では「あちら側」への挑戦に,腰が引けてしまった日本から,Googleと対峙(たいじ)する新技術が生まれる可能性はないのか---著書の梅田氏は,2010年代に期待をかける。幸い,日本は世界に冠たるブロードバンド大国といえる。そこで育った若者は,ケータイ文化にどっぷりとつかっている。彼らはレコードジャケットを知らず,ダウンロードした音楽を楽しむ。「モノ」に対する執着心が相対的に少ないその世代からなら,「あちら側」の視点から発想できるだろう。私たち大人ができることは,こうした若い世代に既成観念を押し付けることなく,豊かな発想を素直に引き出してあげることなのかも知れない。

(浅見 直樹=IT Pro

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