2005年も終わりに近づき,そろそろ家庭やオフィスで大掃除をした人は多いだろう。もしかすると,自分のパソコンを掃除した人もいるかもしれない。では,ネットワークに関してはどうだろうか。

 「ネットワークの掃除? ケーブルを抜いてほこりでも取るの?」と思うかもしれないが,そういう話ではない。現在のネットワークの構成について,きちんと図面にして管理しているか,いわば棚卸しといえる作業を,この機会に実行してみてはいかかでしょうか,というものだ。

実情と徐々にかけ離れるネットワーク図

 日経NETWORKでは,2006年1月号で「日経NETWORK流,わかるネットワーク図の書き方」という特集記事を掲載した。この記事のために取材していて驚いたのは「正しいネットワーク図を持っているユーザーはほとんどいない」ということだ。取材をしたベンダーやインテグレータの多くは「納品の際にユーザーに渡したネットワーク図は,ほとんどメンテナンスされていない」と口を揃える。

 改めて考えてみれば,ネットワーク図がメンテナンスされないことが多いのも確かにうなずける。ネットワーク図は日常的に必要になるものではないからだ。ネットワーク図が必要になるのは,導入・構築の際を除けば,もっぱらトラブルの発生時。ネットワークが問題なく動いているときは,ネットワーク図を見直すことはほとんどないだろう。

 トラブルが発生してはじめてネットワーク図を確認し,「知らないマシンがつながっていた」「勝手に設定が変更されていた」「いつの間にか故障していた」といった,実際のネットワーク構成とネットワーク図が食い違っていることがわかったりする。また,トラブルを解決することに手一杯で,その間にいろいろと変更した設定をネットワーク図に反映させることを忘れたり,そもそも変更した内容がわからなくなったりすることもあるだろう。

 だからといって,そのまま放っておいては問題が深刻化するだけである。現在のネットワークを反映させた正しいネットワーク図がないと,トラブル時に原因がわからなくなったり,拡張する際に予想外の不具合が発生したりする。ぜひ,きりのよい年末年始にネットワーク図のアップデートや,場合によってはネットワーク図の新規作成にトライすることをお勧めしたい。

作図経験者は意外と多い

 ネットワーク図を書いたことのある人は,意外と多いようだ。今回の記事に合わせて「ネットワーク図に関するアンケート」をIT Proで実施したところ,「ネットワーク図を書いたことはあるものの,バランスよく書くのが難しい」と感じているユーザーが多いという姿が浮かび上がった。

 アンケートを実施したのは,2005年11月16~25日までの10日間。この間に寄せられた806件の回答のうち,「ネットワーク構成図を書いたことがありますか?」という質問に「いいえ」と答えたのは156件のみ(19.4%)。それ以外の80%以上の人が「書いたことがある」と答えており,実はかなりの割合の人がネットワーク図を書いたことがあるようだ。

 ただし,書いてはみたものの,その出来には必ずしも満足していない。「書いていて困ったこと,悩んだことは何ですか」という質問には,書いたことのある人の51.8%と半分以上が「見た目のバランスが悪くなってしまう」と答えている。続いて,「情報を詰め込みすぎてわかりづらくなった」という人が39.2%,逆に「情報が足りないのではないか心配だ」という人が37.5%と,内容についてもバランスよく書けずに悩んでいる人が多い。

見栄えよりも正確さときめ細かさが大事

 これらの悩みはどうやって解決すればよいのだろうか。実は,これらは経験を積んでも解決しない。「51枚以上書いたことがある」と答えた人に絞りこんで結果を考察してみたが,「見た目のバランスが悪くなってしまう」と答えた人が48.1%,「情報を詰め込みすぎてわかりづらくなった」と答えた人が44.3%,「情報が足りないのではないか心配だ」と答えた人が37.7%となった。書きなれている経験者でもほぼ悩みを持っているという結果になったからだ。

 逆に読む場合のことを考えてみよう。「読んで気になる点はなんですか」という質問に対しては,「ごちゃごちゃして読みづらい」と答えたのが30.3%。3割は決して少なくないが,それよりも「物理的な接続状態がわからない」(52.4%),「機器の設定がわからない」(48.6%),「機器の種類がわからない」(37.5%),「回線の速度がわからない」(33.7%)といった,むしろ情報が足りないという意見の方が圧倒的だった。

 書くときには見栄えをついつい気にしてしまうものの,読むときには実は見やすさよりも肝心の情報が載っていないことが最大の問題となっているといえる。見栄えよりも情報の抜けがないことを心がけて,2006年はネットワークの状態を正しく反映させたネットワーク図を管理しよう。