インターネット接続機能を搭載したデジタルテレビをお持ちだろうか。

 インターネットにつながるテレビそのものは,既に1990年代後半に登場していたが,画面の精細度や通信速度,端末処理速度などの問題から普及するまでには至らなかった。

 しかし,その後急速に画面のハイビジョン対応や通信のブロードバンド化が進展し,状況が大きく変わった。テレビ番組を見ながら手元のパソコンで番組に出てきた情報を調べたり,番組内容についてのチャットを行うといった「ダブルウインドウ」の視聴形態が,現実的になってきたのだ。インターネット接続機能を搭載したデジタルテレビが普及する下地ができ上がったといえよう。

 こうした変化を受け,インターネット接続機能を搭載したデジタルテレビ向けに,独自の情報を提供するテレビ向けポータル(玄関)サイト・サービスが大きく進化し始めた。

音声解析システムによる高度な番組連動も

 テレビ向けポータルサイト・サービスの草分けは,松下電器産業が2003年に自社のデジタルテレビを対象にサービスを開始した「Tナビ」である。

 また,最近になってISP(インターネット・サービス・プロバイダー)大手のソニーコミュニケーションネットワーク(SCN)が,2005年11月20日に発売されたソニーの薄型テレビ「ブラビア Xシリーズ」を対象に,ポータルサイト・サービス「TVホーム」を開始した。デジタルテレビをパソコンや携帯電話機に次ぐ第三のインターネットの入り口ととらえ,さまざまなコンテンツやサービスを提供する計画だ。各種の情報提供サービスに加え,将来的にはVOD(ビデオ・オン・デマンド)サービスなども提供する計画である。

 一方,通信大手のNTTコミュニケーションズ(NTT Com)も,今夏に試験サービスを開始したテレビ向けポータルサイト「DoTV」の商用化のタイミングを見計らっている。NTT Comは,パソコンに加えて情報家電までを自社のブロードバンド(高速大容量)・ネットワークに取り込み,家庭内の通信需要を一手に担おうとの狙いである。情報家電の中でもデジタルテレビがネットワークとつながる最右翼と見て,独自のポータルサイトの構築を進めている。

 先行したTナビと今回のSCNやNTT Comのサービスが異なるのは,テレビ番組と連動するコンテンツに重点を置いていることである。SCNは自社で運営するiEPG(インターネット電子番組表)サービスをベースに,放送中の番組に関する情報や,出演するタレントの情報などをテレビ画面上で検索できるようにした。またNTT Comも,独自開発した音声解析システムを利用して番組間に流れるCMのテーマ・ソングなどの楽曲を調べられるようにしたり,番組で紹介された場所への旅行などをオンラインで申し込めるようにしている。一方で先行したTナビの関係者も,「番組連動型のサービスの利点については認識しており,対応を急ぎたい」と次の展開をにらむ。

放送・通信融合の機運が後押し

 これまでテレビを対象としたポータルサイト・サービスは,放送事業者から敬遠されてきた。サービスの利用が進めば,番組の視聴率を落としかねないと考えられたからだ。

 しかし最近では,放送事業者も「放送と通信の融合」という名の下にIT企業からの攻勢にさらされており,そうポータルサイト・サービスを敬遠してばかりはいられない状況になりつつある。言い換えれば,番組と関連したコンテンツを増やすことが自社のメリットにつながる可能性も出てきているということだ。視聴者も,魅力あるサービスであれば2画面対応のデジタルテレビで使いこなすことになるかもしれない。

 いずれにしても急速な環境変化のなか,テレビ向けポータルサイトサービスが進化しようとしている。そのサービスの提供事業者間の競争も,今後関連業界を巻き込みながら激しさを増すと考えられる。

滝沢 泰盛=日経ニューメディア