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 11月2日付の「『仕事のやりがい,自由な時間,報酬』は両立できるか?」で告知した「ITプロフェッショナル意識調査」には,開始から5日間に約1300人の方が回答してくださった。調査に協力してくださった皆様,さらに本欄に意見や批判を寄せていただいた皆様に,まずはお礼を申し上げたい。

 記者が特に驚いたのは,調査に寄せられた自由意見の多さだ。日経コンピュータでは過去に何回も同様の調査を実施しているが,これほど多くの方から意見をいただいたのは例がないように思う。

 それぞれの意見には,最前線で活躍されているITプロフェッショナルの方々が抱いている現状や将来に対する不安や悩みが赤裸々に表れている。IT業界の労働環境がいかに厳しくなっているか,その中でプロとしてのキャリアをどう考えていけばよいか,意見をお寄せいただいた一人ひとりが真剣に考えている様子が伝わってきた。年末に予定している日経コンピュータの特集で,これらの意見をできる限り紹介していきたいと考えている。

 ここではすでに回答していただいた皆様へのお礼の意味を込めて,いくつかの中間結果を紹介したい。ここで見えてきたのは,ITプロフェッショナルの意識にも,労働環境にも,二極化と呼ぶべき現象が発生していることだ。

「恵まれた環境」を提供できる会社と,
できない会社に分かれる?

 はっきりと二極化が表れているデータの一つが,この1年でのモチベーション(やる気)の変化である。「昨年の同時期に比べて,仕事へのモチベーションがどう変わったか」の問に対し,約4割(43.1%)が「低くなった」と答えた。その一方,「高まった」との回答が約3割(29.8%)いた(図1)。この傾向は,年齢や職種,役職が違っても大きな差はない。

 「代休や有給をどの程度取得できるか」も,同じ傾向が見られた。全体の取得率は平均で約5割だが,「ほとんど休める」が27.3%ある一方で,「1~2割取得できる」が17.3%,「ほとんど休めない」が15.8%に上った。自由な時間を確保できる人が多い一方で,時間を確保できない人が同程度いるわけだ。

 時間外労働に関しても二極化の傾向が表れている。1カ月当たりの平均時間外労働時間(残業時間)は49.1時間。その内訳を見ると,全体の約半数が「40時間未満」(20~39時間が29.0%,19時間未満が19.3%)である一方で,「80時間以上」が約3割(100時間以上9.4%,80~99時間が18.8%)に上った。

 「実際の時間外労働に対する報酬(残業代)」についても,二極化は激しい(図2)。労働時間に対して残業代が「満額支払われている」と回答したのは44.5%。その一方で,残りの38.1%は「サービス残業」を強いられていた。「全く支払われていない」という人は12.0%に達した。裁量労働制を採用していない限り,残業代の未払いは労働基準法違反だが,「評価に響くため,残業を会社に申請できない。終わらない仕事は,自宅に持ち帰ってやるしかない」(20代,SIベンダー)というのが現状のようだ。

 はたして,この二極化現象をどうとらえるべきか。社員にとって「恵まれた環境」を提供できている会社と,提供できていない会社の差がはっきり出てきたということだろうか。それとも別な要因によるものか。我々も考えていくつもりだが,皆様のお知恵を拝借したいところだ。

 もう1点,今回の調査で顕著だったのは,転職を考えている人の割合がぐっと増したことだ。3年前(2002年10月)は「転職を考えている」が35.5%だったのに対し,今回の中間結果ではほぼ半数に達した(図3)。現時点での回答者の平均年齢は32.2歳で,2002年の調査に比べ3歳ほど若いものの,それだけが原因ではなさそうだ。労働環境の厳しさを表しているといえるかもしれない。

 ちなみに回答者の平均年収は534万円。約半数の52.3%が,現在の年収に「不満,やや不満」と回答する一方,「満足,やや満足」と回答した人も24.1%いた。これも二極化と言えるかもしれない。今年の年収の見通しでは,昨年よりも「増える,少し増える」が43.9%で,「減る,少し減る」の21.5%を大きく上回った。5年後(2010年)の見通しをたずねると,67.4%が「増える,少し増える」と答え,「減る,少し減る」は10.8%だった。景気回復の兆しが見えてきたせいか,この点は“明るめ”の回答が多いように感じる。

目次 康男=日経コンピュータ