図1●各職種のITエンジニアが挙げた「将来の希望職種」
図1●各職種のITエンジニアが挙げた「将来の希望職種」
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図2●若手ITエンジニアのキャリアパスに対する意識(Aは25歳以下,Bは26~30歳)
図2●若手ITエンジニアのキャリアパスに対する意識(Aは25歳以下,Bは26~30歳)
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図3●年齢層ごとに見た職種別の平均年収
図3●年齢層ごとに見た職種別の平均年収
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図4●年齢層ごとに見た現実の職種構成(単位%)
図4●年齢層ごとに見た現実の職種構成(単位%)
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 「ITエンジニアがプロジェクト・マネジャーになりたいと思うのは,生き残るための選択肢という側面が強いのではないか」,「日本のIT業界には,職種を変えていかないと収入が上がっていかないという構造がある」,「IT以外の業種への転向も視野に入れて将来像を模索中」----。

 6月23日に本欄でご報告させていただいた,全国のITエンジニアを対象とするスキル/キャリア実態調査の中間結果(関連記事)に対して,読者の方々から職種転換や転職にかかわるご意見を多数いただいた。

 その後も調査を続け,ようやく最終結果がまとまったので,今回はこうしたキャリア設計の話題を中心に,興味深い結果をいつくか選んでご紹介したい。詳細は日経ITプロフェッショナル10月号の特集「2万人調査で浮き彫りになった,スキル 年収 キャリアの実態」にまとめたので,こちらも一読していただければ幸いである。

 なおこの調査は,本誌が参画するITスキル研究フォーラム(略称iSRF,日経BP社,ザ・ネット,日経BPマーケティングが運営)が今年5月から7月にかけて実施した。企業単位での調査参加者も含めて,最終的に2万1986人から有効回答を得た。

年齢層によって大きく異なる“希望職種”

 前回の中間報告では,現在就いている職種に関係なく,“将来の希望職種”として「プロジェクトマネジメント」(ITスキル標準におけるプロジェクト・マネジャーの呼称)や「コンサルタント」を挙げるITエンジニアが多いという結果をお伝えした(図1)。現在の職種ごとに,回答者が選択した“将来の希望職種”を比率の高いものから順に並べたところ,ほとんどの職種では,希望職種の第2位か第3位にプロマネやコンサルが入っていた。

 ここでいう希望職種は,回答者が思い描いている,短期的あるいは長期的なキャリア設計の目標と言い換えることもできる。だとすれば,一口に希望職種といっても,回答者の年齢によって考え方が大きく変わってくるのではないか。

 そこで今回の最終報告では,5歳刻みの年齢層ごとに,希望職種のランキングを作ってみた。その結果,単なるプロマネ志向やコンサル志向という言葉だけでは片付けられない,年齢によるキャリア意識の違いが浮かび上がってきた。

 図2は,各職種のITエンジニアの主な希望職種を,「25歳以下(有効回答2786人)」と「26~30歳の回答者(同5357人)」に分けて示したものだ。青色の角丸矩形で示しているのが現在の職種(回答者数が少ない職種は白色)で,そこから出ている矢印の先にあるのが主な希望職種である。矢印の太さは,希望者の比率により,3段階(50%以上,20%以上50%未満,10%以上20%未満)に変えている。

配属先に縛られない若手のキャリア意識

 まず25歳以下の結果(図2A)を見てみよう。現在とは異なる職種への希望,すなわち“職種転換”の意思を表す矢印に注目すると,やはり若手にもプロマネ志向がかなり浸透していることが見て取れる。特に「アプリケーションスペシャリスト」,「ソフトウェアデベロップメント」,「ITアーキテクト」の3職種では,回答者の20%以上がプロマネを希望している。

 しかし,ここで注目したいのは,「マーケティング」を指している矢印が6つもある,ということだ。「セールス」の回答者がマーケティングを希望するのは自然としても,仕事の内容が大きく異なる職種の回答者にもマーケティング希望者がかなりいることが分かる。

 例えば「ITスペシャリスト」は,同じ職種の希望者(ITスペシャリストを続けたいと考える回答者)が40%以上いる一方で,マーケティングの希望者も25%以上いる。同様に,システム運用を担う「オペレーション」や,保守をはじめとする各種顧客サービスを担う「カスタマサービス」の回答者にも,マーケティング希望者が1割以上含まれている。

 一方,中間報告ではプロマネに次いで人気が高かった「コンサルタント」に向かう矢印は,3つと少ない。それよりも目を引くのは,「コンサルタント」から,システム開発の実務を担うアプリケーションスペシャリストに向かう矢印がある,ということだ。25歳以下という年齢を考えると,コンサルタントといっても十分な経験やスキルの蓄積があるわけではなく,回答者の多くはIT企業に入社後早くコンサルティング部門に配属されたITエンジニアと見られる。「システム開発の最前線で働きたい」といった“現場志向”,あるいは「若手のうちから,豊かな経験が求められる職種に従事していて大丈夫だろうか」といった不安が読み取れる。

 このように25歳以下では,現在の職場の仕事にあまり制約されないで,自由に将来のキャリアを描いているITエンジニアがかなりいることがうかがえる。