業務改革の推進,セキュリティ対策,全社横断型システムの構築,内部統制,情報化投資効果の評価・・・。ユーザー企業のIT部門の仕事は増すばかり。しかもいずれも初モノ。どこから手をつけていいのか迷うことも多いはずだ。こんなとき,外部の力,つまりコンサルティング会社を上手に使いたい。

 とはいえ「手掛かりがなく,どのコンサルティング会社に頼んでいいのか分からない」ともらすシステム部長も少なくない。そこで日経コンピュータは,ITコンサルティング会社選びに役立つ情報を提供するための特集を組んだ。結果はこの記事では書かない。9月19日号「本邦初!ITコンサル徹底調査 頼れるのはここだ!」を是非読んでいただきたい。

 宣伝はここまで。以降この記事では,普段の取材活動で感じるコンサルティング会社やコンサルタントに対する記者の私見を書かせていただく。

失敗は許されない仕事

 まず特集を組むぐらいなので当たり前なのだが,記者はコンサルタントという職業に興味がある。結果は控えさせていただくが,大学卒業後の就職活動でいくつかのコンサルティング会社の入社試験を受けた。憧れの職業だったからだ。ITプロフェッショナルの中にも,コンサルタント志望の方々は少なくないのではないだろうか。

 今では記者という職業柄,コンサルタントに時間を割いてもらうことが多い。これまで執筆してきた記事には,コンサルタントの多大な協力を得て完成したものが少なくない。これには感謝している。

 ただし,コンサルタントが手掛ける仕事に対して,厳しい見方をしてしまうこともしばしばだ。ユーザー企業のシステム担当者に取材すると,「コンサルティング会社を使ったものの,成果がいまひとつだった」との声も多く聞かれる。「料金を払って,コンサルタントに勉強させたようなものだ」との不満も少なくない。

 このようにコンサルタントに対して不満が多く挙がる理由は,それだけ期待が大きいことの表れだろう。実際にあるコンサルタントはこう語る。「我々が手掛けるコンサルティングというサービスには失敗が許されない。クライアントは,あるテーマで成功を収めるため,我々を高額な料金で雇う。そのため少しでも我々に落ち度があると,それを許せないと感じるのは仕方のないことだ」

 この話を聞いて,コンサルタントという職業の厳しさが,少しだけ分かった気がした。それと同時に,安易にコンサルタントという職業に憧れていたことが恥ずかしくもなった。改めて自分はコンサルタントにはなれそうもないと感じた。

「考える」ことの丸投げは厳禁

 特集のための取材を通じて,「トヨタ自動車はコンサルティング会社を一切使わない。やはり強い企業は自力で物事を解決するものなんだ」との話を何度か耳にした。

 これだけ聞くと,「強くなるには,コンサルティング会社はなるべく使わないほうが良いのではないか」とさえ思える。でも本当にそうなのだろうか。

 現役のコンサルタントはこう語る。「実はトヨタや日産自動車などの優良企業は,コンサルタントを上手に使いこなしている。活用するケースが多いかどうかは別として,強い企業は,何らかの方法で,コンサルタントが持っている情報や意見,知識を上手に取り込んでいる」

 やはりユーザー企業は,コンサルタントを上手に活用したほうがいい。ただし注意すべきことはある。「強い企業は,コンサルタントをアドバイザというかコーチ役として雇っているだけで,考える作業を絶対に丸投げしない。自社のメンバーが主導権を握り,プロジェクトを進めている」。多くのユーザー企業の情報化を支援しているコンサルタントはこう語る。

 丸投げ厳禁---。コンサルティング会社のサービスを活用する際に大事なことは,ITアウトソーシング・サービスを利用する場合の鉄則と同じだ。

 記者はコンサルティング会社やコンサルタントの肩を持つ気はない。でも,ユーザー企業はもっとコンサルティング会社やコンサルタントの得意技を知り,上手に使いこなすべきではないだろうか。

 スピードが求められる時代だ。「コンサルティング・サービスを使って,貴重な時間を買えるのであれば安いものだ」というユーザー企業のシステム部長は増えている。コンサルティング業界への期待は大きくなっている。

戸川 尚樹=日経コンピュータ