写真1●データ駆動型(ドリブン)イノベーション創出戦略協議会、第2回の様子
写真1●データ駆動型(ドリブン)イノベーション創出戦略協議会、第2回の様子
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写真2●データ活用関連企業などがパネルディスカッションを実施した
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 経済産業省は2014年7月10日、異なる企業や団体の間でのデータ共有や活用を目指す「データ駆動型(ドリブン)イノベーション創出戦略協議会」の第2回を開催した(写真1)。参加登録したのは222名。アドバイザーである東京大学生産技術研究所教授で国立情報学研究所(NII)所長の喜連川優氏による講演のほか、データ活用関連企業などがパネルディスカッションを実施。参加者からは個人情報の取り扱いを議論したい、具体的に企業は何をすればよいか知りたいといった要望が挙がった。

 この協議会は経済産業省が2014年6月9日に設立したもの。現在のところ、協議会への参加に特別な資格は必要ない。第1回の会合は6月20日に開催。方針の説明やアドバイザーによる講演を行った(関連記事:経産省が企業間のデータ共有・活用を促す協議会設立、説明会を開催)。

 喜連川氏は米国の状況について、オバマ大統領がビッグデータに投資し、プライバシーに対する懸念があっても取り組み続けるとの姿勢を見せてからさまざまな動きがあると解説。日本では動きが遅い面があるとして、「萎縮効果を生んでいる法律は変えなければいけない。しかし変えるにはエネルギーが要る。一人ひとりがエネルギーを出してほしい」とビッグデータ活用に積極的になるように参加者へ呼びかけた。

 続くパネルディスカッションは、東京大学大澤研究室の早矢仕晃章氏、データエクスチェンジ・コンソーシアムからデータセクションの澤博史代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者)、データサイエンティスト協会からブレインパッドの草野隆史代表取締役社長、ネットイヤーグループの石黒不二代代表取締役社長兼CEO、ホットリンクの内山幸樹代表取締役社長兼CEO、日経ビッグデータ副編集長の市嶋洋平氏が参加。未来の社会を作り出す人物像や組織の壁を越えてデータを活用する方法などをテーマに考えを述べた(写真2)。

 「ビジネス課題とデータをつないで、事業を強くしようとする人材が不足している。ROIを重視し、効率化の視点で見ている人が多く、新しいモノを生み出すに至っていない。(自社になければ)外部からデータを持ってこいという経営層は少ない」(草野氏)。「政府の役割は多い。個人情報保護に注意が払われすぎたために、マインドとして日米間の差が大きく広がった。日本では“グレー”だと踏み込めない。個人情報保護は重要だが、市場の成長を止めない方向で施策を打ってほしい」(石黒氏)。

 「ビッグデータの活用は、ニワトリと卵の問題だ。データ保有者はメリットがあればデータを提供するというが、データの利用者はもらって分析してからでないと使えるか分からない。これで止まってしまっている。外部にデータを出すにしてもシステムの改修で費用がかかったりする。利用側も分析には費用がかかる。ここを国として資金援助する仕組みはどうか」(内山氏)。「データがあるから何かしようではうまくいかない。例えば業務効率化や売り上げ向上など具体的な目的を起点に考えた方がよい」(澤氏)。

 パネルディスカッションの終了後に参加者から質問や意見が寄せられた。「経済産業省の考えは分かったが、具体的に何をすればよいのかを知りたい」「個人情報については、白黒を示しつつ議論をしていきたい」「省庁それぞれがデータ活用と言っている。省庁の壁を取り払う必要があるのでは」といった声が挙がった。