欧州連合(EU)の欧州司法裁判所(ECJ)が下した「忘れられる権利(right to be forgotten)」を支持する裁決に従い、米Googleは複数の大手ニュースメディアの記事を検索結果から除外した。英Guardian英BBCが現地時間2014年7月2日、Googleから削除通知を受け取ったことを報告している。

 Guardianは、6つの記事のリンクがGoogleの検索結果から削除された。そのうち3つは、サッカーのDougie McDonald審判に関する2010年の記事で、同氏はPKの判定で虚偽の説明をしたことが問題となり、辞職した。

 BBCは1件の記事が削除されたとの通知を受け取った。2007年にRobert Peston記者が、米Merrill LynchのStan O'Neal最高経営責任者(CEO)の更迭に関して執筆したブログ記事だった。

 Googleは2014年5月13日に、スペインの男性が自身に関する過去の情報へのリンクを検索結果から削除するよう求めてGoogleを相手取って起こしていた裁判で、「一定の条件のもと、個人情報を含むWebページへのリンクを検索結果から削除する義務がある」とする判決を受けた。これに応え、Googleは、ユーザーが検索結果からの情報削除を依頼するためのツールを5月末までに設置。6月26日に削除作業を開始したと報じられた(関連記事:Google、「忘れられる権利」に対応した検索結果の情報削除を開始)。

 米New York Timesによると、Googleが削除依頼ツールを設けた初日1万2000件の申込みが有り、5月29日~6月30に約7万件の依頼が寄せられた。要求1件につき、平均3.8本の記事が対象になっているという。

 削除対象の記事は、EU向けにGoogleが提供している検索エンジンの検索結果から除外されるが、ネット上から削除されるわけではない。そのため、各メディアのサイトやGoogle以外の検索エンジンからは、依然、検索およびアクセスできる。また、EU以外の例えば米国版Google検索(google.com)などでは、これまで通り検索結果に表示される。

 さらに、記事のリンクが除外されるのは特定の氏名を検索条件に使用した場合に限られるので、他の検索キーワードを使えば、同じ記事が検索結果で提示される。

 Googleの通知には、削除の依頼者や削除の理由については記載されていない。BBCの対象記事は、通知を受け取ったあとも「Stan O'Neal」の名前で検索可能であるため、記事本文ではなく、コメント欄に名前が残っている誰かが削除を依頼した可能性もあるという。

 BBCやGuardianなどの多くのメディアは、「忘れられる権利」が表現の自由を侵害し、正当なジャーナリズムを制圧することに悪用されるのではないかと懸念を抱いている。また、不明なGoogleの削除プロセスにも疑問の声が上がっている。