写真●NTTデータの岩本敏男代表取締役社長(写真:井上裕康)
写真●NTTデータの岩本敏男代表取締役社長(写真:井上裕康)
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 「ITは、従来人間がしてきた判断や行動まで担い始めている」──。

 日経BP社が2014年7月2日から4日にかけて東京・品川プリンスホテルで開催中のイベント「IT Japan 2014」に、NTTデータの岩本敏男代表取締役社長が登壇し、今後のITトレンドについて熱弁をふるった(写真)。

 岩本社長は講演の中で、情報の流れを「データ」「インフォメーション」「インテリジェンス」の3階層に定義。データとは世の中で発生する膨大な事実のこと。これをサンプリングしたり、集計・加工したりすることでインフォメーションになる。さらに、価値観や経験則などを踏まえることでインテリジェンスになるという。こうした集計・加工や経験則といったフィルターを通すことで、情報は価値あるものになる。その中でも、意思決定の源泉となる「インテリジェンスこそが重要だ」と、岩本社長は強調する。

 岩本社長は具体例として、NTTデータのM&A(合併・買収)戦略に言及。成長率や市場シェアといったインフォメーションを収集することは、「それほど難しいことではない」(岩本社長)。それよりも企業文化に親和性があるか、収益性の向上に寄与するか、といったインテリジェンスに関わる情報こそが重要であり、これらは過去の経験などから判断してきたという。

 こうした情報の流れについて、岩本社長は「ビッグデータ時代には何が変わるのか」と提起した上で、まず「データをインフォメーション化する作業は、ITに置き換わる」と指摘する。「CPU」「ネットワーク」「ストレージ」の指数関数的な性能向上によって、ビッグデータをインフォメーションとして扱えるようになっている。ムーアの法則に対する限界説もあるが、岩本社長は量子コンピュータを引き合いに出し、性能向上は「今後も止まりそうにない」という見解を示した。

 コンピュータパワーの進化がもたらすものとして岩本社長は、「万物の可視化」を挙げる。一例として挙げたのがテレビ放送の視聴率。現在、関東地区では約1500万世帯のうちの600世帯をサンプル対象として、視聴率を割り出しているという。しかし、これはあくまで推計値だ。コンピュータが進化すれば、全世帯における“実際の”視聴率を把握することができるようになる。