「イノベーションは滅多に起きるものではない。頑張ってやると全く別の方向に向かってしまう。まずは何がイノベーションで、そうではないのかをはっきりさせることが重要だ」―――。
一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授の楠木建氏は2014年7月3日、日経BP社が東京・品川プリンスホテルで開催中のイベント「IT Japan 2014」の特別講演で「イノベーションとは何か、何ではないのか」をテーマに登壇(写真1)。イノベーションとそうでないものを明確に切り分ける視点と、イノベーションの実現に対してとるべき構えについて語った。
楠木氏は冒頭で、イノベーションを実現しようと頑張る企業ほどイノベーションから遠ざかる理由について、以下のように述べた。「何か新しいことをして現状を打破することがイノベーションだという単純な思い違いがある。何がイノベーションか、そうではないのかをはっきりさせると最初の誤解が解ける」。
続けて聴講者に対し、何がイノベーションかそうでないかを確かめるための三つのクイズを出した(写真2)。一つめはソニーの家庭用ゲーム機「プレイステーション3」と任天堂の「Wii」、二つめはソニーの世界初の有機ELテレビと4Kテレビ、三つめはソニーのウォークマンと米アップルのiPodではどちらがイノベーションかという内容だった(正解は後述)。
クイズを踏まえ、楠木氏はイノベーションとは単に変化や新しいことではないと説明。技術の進歩ではなく、社会や人々の生活を変える商業化された発見だと述べた。「例えばiPS細胞はまだ社会に対するアウトプットが無いため、現時点ではイノベーションではない」。