総務省は2014年7月1日、2020年代の情報通信のあるべき姿を議論する「2020-ICT基盤政策特別部会 基本政策委員会」の第10回会合を開いた。今回は前回に引き続き、NTT東西が第3四半期半ばまでに始めると発表した光回線の卸売り「サービス卸」について、関係する事業者・団体に対してヒアリングを実施した(関連記事:NTT鵜浦社長が「サービス卸」の現状を説明、「100社から問い合わせ」「卸値は他社セット割料金を意識」)。
ヒアリングには4事業者・団体、(1)日本インターネットプロバイダー協会(JAIPA)、(2)ソフトバンクグループ(ソフトバンクテレコム、ソフトバンクBB、ソフトバンクモバイル)、(3)ケーブルテレビ事業者および光通信事業者など222社を代表してケイオプティコム、日本ケーブルテレビ連盟、大分ケーブルテレコムの3者、(4)KDDI、が登壇した(写真)。
4月に同委員会が実施したヒアリングと同様に、各事業者・団体の意見はそれぞれの立場ごとにまちまちだった。ただNTT東西のサービス卸が、約款による認可が義務づけられたこれまでの接続による光回線貸し出しと異なり、料金や提供条件などが相対取引で決められる卸スキームの提供となるため、透明性や公平性確保への懸念が相次いだ。
JAIPAは基本賛成もドコモがセット割参入でISP市場に打撃と指摘
まず最初に意見を述べたJAIPAは、NTT東西のサービス卸について、「かつてJAIPAとして卸提供を要望したこともあり大枠は賛成」という立場を表明した。サービス卸によってISPが固定とモバイルを含めてワンストップでサービス提供することが可能になり、料金の低廉化も期待できるというメリットを示した。
その上でNTT東西のサービス卸への要望として、柔軟な卸料金の設定、例えばMVNOで見られるような帯域幅料金を設定してほしいとした。前回の会合でNTT持ち株会社の鵜浦博夫社長は、サービス卸の提供条件として、フレッツ光の契約単位と同様の、1回線単位の提供を検討していることを明らかにしている。
NTTグループ内と外の取り引きにおける透明性と公平性の確保については、「総務省が約款を認可する形で、相対取引を禁止してほしい」(JAIPA)と要望した。相対取引によって多様な料金を実現するのではなく、あくまで卸の料金メニューとして多様な選択肢を用意してほしいというのがJAIPAの立場である。
なおJAIPAはNTTドコモがサービス卸を活用してセット割に参入した場合の懸念も表明した。ドコモが、ドコモのISP(mopera U)ユーザーにのみセット割引を行った場合、既存のISPから顧客が流出し、ISP市場におけるNTTグループのシェアが現在の29.2%から40%以上に高まるといった推計を紹介した。そのためJAIPAでは、ドコモ自身によるISPの運営の代わりに、他の既存ISPを活用すべきという提案も示した。